エンタープライズ営業の特徴とキャリアパス
はじめに
エンタープライズ営業とは、大企業や公的機関など大規模な組織をターゲットにした営業手法であり、特にIT企業やSaaS企業で重要な役割を担っている。
本記事では、エンタープライズ営業の特徴やキャリアパスについて詳しく解説していく。エンタープライズ営業を目指す方や、現在エンタープライズ営業に従事している方にとって、参考になる情報が得られるはずである。
エンタープライズ営業の特徴
複数部門を横断する商材を扱う
エンタープライズ営業で扱う商材は、営業顧客管理システムや人事労務の統合システム、会計システムなど、複数部門を横断して利用するユーザーが多いという特徴がある。これらのシステムは、企業の業務効率化や生産性向上に直結するため、導入による効果が大きいと言えるだろう。
安定した売上が見込める
一度導入したシステムやツールを変更すると、社員数が多い企業では多くの手間やコストがかかってしまう。そのため、エンタープライズ営業で扱う商材は、一度導入されると解約率が低く、安定した売上を見込めるという特徴がある。長期的な顧客関係を築くことで、継続的な収益を確保できるのである。
複数部署やグループ企業への展開が可能
大手企業は多くの細分化された部門を持っており、継続的なお付き合いから他部門の紹介を受けたり、グループ会社への導入が決まる可能性がある。エンタープライズ営業では、初期の導入先を起点に、企業内の他部署やグループ会社へと販売の輪を広げていくことができるのである。
リード獲得の難しさ
エンタープライズ営業では、リードとして自然流入してくる数が少ないという特徴がある。大企業と呼ばれる企業は全体の0.3%程度で、少ないリードを競合他社で奪い合うことになる。また、大企業側は常に多くの営業担当者からアプローチを受けているため、新規の営業をシャットアウトする対策を取っていることもあり、通常の営業よりも難易度が高いと言えるだろう。
長いリードタイム
エンタープライズ営業では、最初のアプローチから契約に至るまで長い時間がかかるのが特徴である。大企業では一つの商品・サービスを導入する際、関わる全ての部署に確認を取る必要があり、予算規模も大きいため役員や経理部の承認も必要となる。また、今年度の予算が動かせない場合など、1年近く契約を待つケースもあるのである。
多くの関係者との調整が必要
エンタープライズ営業では、契約に至るまでに相手側の複数の担当者と関わることになる。幾度もの商談をくぐり抜け、全ての関係者に納得してもらって初めて契約となるため、通常の営業よりも負担が大きいと感じるだろう。早い段階で組織の全体像をつかみ、アプローチしている部署と連携のある部署、それぞれのキーパーソン、部署を管轄する役員など、戦略的なアプローチが求められる。
以上の特徴から、エンタープライズ営業には高度な営業スキルが求められる。複雑な組織構造を理解し、多くの関係者を巻き込みながら、長期的な視点で営業活動を進めていく必要があるのである。また、商材に関する深い知識と、顧客の業務課題を解決するためのコンサルティング能力も欠かせない。エンタープライズ営業は、単なる営業というよりも、ビジネスパートナーとしての役割を果たすことが求められる、やりがいのある仕事だと言えるだろう。
エンタープライズ営業へのキャリアの進め方
現在のクライアントが大手企業の場合
現在の会社で大手企業を担当している場合、その経験を2年以上積むことをおすすめする。エンタープライズ営業は会社の売上の多くを占める重要なポジションであるため、多くの求人では2年以上の経験を求めている。現職で大手企業を担当できている場合は、しっかりとその経験を積んだ後に、エンタープライズ営業のポジションに応募するのが良いだろう。
現在のクライアントが中小企業の場合
SaaS企業等で、中小企業(SMB)領域からエンタープライズ領域へ上がっていくケースが考えられる。例えば、中小企業から大手企業まで幅広くクライアントを持っている企業で、まずはSMB領域で結果を出し、社内で手を挙げてエンタープライズ領域の営業に移動するのが良い。
SMB領域からエンタープライズ領域に社内異動できる理由は、顧客の規模感は変わるものの、自社プロダクトの理解が深まっている状態であるため、クライアントが大きくなっても対応ができると期待されるからである。
エンタープライズ営業に必要なスキル
エンタープライズ営業に必要なスキルは以下の通りである。
- 自社プロダクトの深い理解
- 大企業の組織構造や意思決定プロセスの理解
- 複数の関係者を巻き込んでプロジェクトを進める調整力
- 長期的な視点でクライアントとの関係を構築する能力
- 戦略的思考力と提案力
これらのスキルを身につけるには、現在の会社で大手企業を担当している場合は、その経験を積むことが重要である。中小企業を担当している場合は、社内でエンタープライズ領域に異動する機会を探すとともに、自社プロダクトの理解を深め、大企業の組織構造や意思決定プロセスについて学ぶ必要がある。
また、エンタープライズ営業は長期的な視点でクライアントとの関係を構築することが求められるため、コミュニケーション能力やリレーションシップ構築力も重要なスキルである。これらのスキルは、日々の営業活動の中で意識的に磨いていくことが大切である。
エンタープライズ営業のその後のキャリアパス
マネジメントへのキャリアパス
エンタープライズ営業は、多くの関係者をまとめていく必要があるため、マネジメント能力を高めていくことができる。そのため、社内での組織マネジメントのキャリアを目指す方が多くいる。
具体的には、以下のようなキャリアパスが考えられる。
営業組織のマネージャー
エンタープライズ営業の経験を積んだ後、営業組織のマネージャーとしてキャリアアップするケースである。営業チームのマネジメントを担当し、メンバーの育成や営業戦略の立案などを行う。
事業部長や事業責任者
営業組織のマネージャーを経験した後、事業部長や事業責任者として、事業全体のマネジメントを担当するケースもある。営業だけでなく、マーケティングや開発など、事業全体の戦略立案や実行を主導する。
経営企画や管理部門
営業とは異なる分野だが、エンタープライズ営業で培った他者を巻き込む力を活かして、経営企画や管理部門に異動するケースもある。全社的な戦略立案や組織運営に関わることで、より広い視野でのキャリア形成が可能である。
外資系IT企業へのキャリアチェンジ
もう一つのキャリアパスとして、日系IT企業から外資系IT企業へ転職するケースが挙げられる。特に、よりハイレベルな営業スキルを身につけ、高い報酬を得たいという志向性の方に多く見られる。
外資系IT企業では、グローバルな環境で営業活動を行うことができ、より高度な営業スキルが求められる。また、報酬体系も日系企業とは異なり、高いパフォーマンスを上げればそれに見合った報酬を得ることができる。
外資系IT企業のエンタープライズ営業として経験を積んだ後は、さらに別の外資系IT企業に転職するなど、キャリアの選択肢が広がる。グローバルな環境で活躍し、高い報酬を得ながらキャリアを積んでいくことができるだろう。
ただし、外資系企業特有の文化や働き方になじめるかどうかは個人差がある。自分の志向性やキャリアビジョンに合うかどうかを慎重に見極める必要があるだろう。
おわりに
エンタープライズ営業は、大企業や公的機関など大規模な組織をターゲットにした営業であり、SaaS企業やサブスクビジネスでは特に重要な役割を担っている。複数部門を横断する商材を扱い、解約率が低く安定した売上が見込める一方で、リードタイムが長く、契約までの関係者が多いという特徴がある。
エンタープライズ営業へのキャリアの進め方としては、現在のクライアントが大手企業の場合は現職で経験を積んだ後に転職するのが良く、中小企業の場合は社内でSMB領域からエンタープライズ領域へ上がっていくのが一般的である。その後のキャリアパスとしては、マネジメントへの道や、日系企業から外資系企業への転職などが考えられる。
エンタープライズ営業は難易度が高い分、やりがいも大きい仕事である。大企業との長期的な関係構築や、大規模な案件の獲得を目指す方にとって、魅力的なキャリアパスと言えるだろう。本記事が、エンタープライズ営業を目指す方や、現在エンタープライズ営業に従事している方の参考になれば幸いである。
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