三菱電機も導入 アルムナイ採用とは。新たなキャリアの可能性
はじめに
近年、日本企業においてもアルムナイ採用が注目を集めている。アルムナイとは、卒業生や同窓生を意味する言葉であり、アルムナイ採用とは一度退職した社員を再雇用する採用手法のことを指す。
従来の日本企業では、終身雇用や年功序列といった雇用慣行が主流であったが、近年では人材の流動化が加速し、優秀な人材の確保が難しくなってきている。そのような中で、自社の社風や価値観を理解している元社員を貴重な人的資産として捉え、再活用することが注目されるようになったのである。
例えば、大手IT企業のGoogle社では、”Boomerang Googlers”と呼ばれる元社員の再雇用プログラムを実施している。一度Googleを離れた社員が、他社での経験を積んだ後に再びGoogleに戻ってくることで、新しい知見やスキルを社内にもたらすことができるのだ。
本記事では、アルムナイ採用の特徴や背景、メリットとデメリット、適した企業と具体的な手法について詳しく解説する。転職を考える読者の方々に、アルムナイ採用という選択肢についての理解を深めていただければ幸いである。
アルムナイ採用とは
アルムナイ採用の定義と特徴
アルムナイ採用とは、一度企業を退職した社員を再び雇用する採用手法のことを指す。アルムナイとは、卒業生・同窓生を意味する言葉であり、育児や介護などのやむを得ない事情で離職した社員を再雇用するジョブリターン制度とは異なり、他社でのキャリア形成を選択し、自発的に退職した社員を中心に再雇用するのが特徴である。
アルムナイ採用の歴史と背景
アルムナイ採用は、もともと欧米では一般的な採用手法として確立されてきた。日本でも近年注目されるようになってきた背景には、人材の流動化が加速し、自社で活躍できる優秀な人材の確保が難しくなってきたことがある。
以前の日本では、終身雇用や年功序列など、一社に長く勤めるのが当たり前な環境であったが、これらの採用システムは古い物として捉えられるように変化し、転職のハードル自体が低くなってきている。企業としては、社員のキャリアビジョンを実現するための転職も受け入れざるを得ない状況になってきているのだ。
アルムナイ採用が注目される理由
人材の流動化と優秀な人材確保の難しさ
前述の通り、人材の流動化が加速したことによって、自社で活躍できる優秀な人材の確保が難しくなってきているという事情がある。転職そのもののハードルが低くなってきており、企業としては社員のキャリアビジョンを実現するための転職も受け入れざるを得ない状況になってきているのだ。
少子高齢化と有効求人倍率の上昇
また、少子高齢化の影響もあり、有効求人倍率が上昇傾向にあることも、アルムナイ採用が注目される理由の一つである。
優秀な人材を採用する難易度自体が上がっている中で、効率的に優秀な人材を確保するために注目されたのがアルムナイ採用なのだ。アルムナイ採用であれば、自社の社風や価値観、業務内容なども把握しているため、一度は退職した人材を貴重な人的資産と捉え、再活用していくことが企業の成長にもつながる。
企業の成長につながるアルムナイ採用
アルムナイ採用を導入することで、企業は即戦力となる人材を確保しつつ、社内に新しい知識や価値観を取り入れることができる。また、採用・教育コストを抑えられるというメリットもある。加えて、一度退職した人材を再雇用する制度を導入しているという形で社外にアピールできるため、企業イメージの向上につながり、自社のブランディングに対して非常に効果的な手法となっている。
アルムナイ採用のメリットとデメリット
企業側のメリットとデメリット
メリット
- ミスマッチを防止しながら即戦力を採用できる
- 社内に新しい知識や価値観を取り入れられる
- 採用・教育コストを抑えられる
- ブランディングやエンゲージメント向上が期待できる
デメリット
- 再雇用に対して後ろめたい気持ちを持っている可能性がある
- 既存社員が不満を抱く可能性がある
- 既存社員の退職を促してしまう可能性がある
- アルムナイ採用が必ずしも募集職種にフィットするとは限らない
個人側のメリットとデメリット
メリット
キャリアは一方通行ではなく、実際に退職した後に前職の良さや気づきを得ることで、個人のキャリアの選択肢が広がる。アルムナイ採用によって、自身のキャリアを見つめ直す機会を得られるだろう。
デメリット
アルムナイ採用で元の会社に出戻り就職した場合、役員や経営層といった重要な役職に就くことが現実的に難しくなる可能性がある。一度会社を離れた人材として捉えられるため、自社のことをより理解している新卒入社の長期勤続者が役員に抜擢されるケースが多いためだ。社内で重要な役割を目指すことが難しくなるというデメリットがあるだろう。
アルムナイ採用に適した企業と具体的な手法
アルムナイ採用に適した企業
大手企業が中心
アルムナイ採用を導入するにあたっては、従業員数が多く、経営の体力がある大手企業が中心となる。中小企業では、人材の流動性が低く、退職者も少ないため、アルムナイ採用の対象となる人材プールが限られてしまう。一方、大手企業では、多様な人材が在籍しており、キャリアの選択肢も広いため、一度退職した優秀な人材を再雇用する機会が多い。
グローバル展開している企業
海外拠点を持ち、グローバルに事業展開している企業も、アルムナイ採用に適している。海外では、キャリアの流動性が高く、転職が一般的であるため、アルムナイ採用への理解も深い。また、海外経験を積んだ人材を再雇用することで、グローバルな視点を取り入れ、事業の拡大につなげることができる。
人材育成に力を入れている企業
人材育成に力を入れ、社員のキャリア開発を支援している企業も、アルムナイ採用に適している。こうした企業では、社員の自己実現を尊重し、他社での経験を積むことを前向きに捉える風土がある。アルムナイ採用を通じて、社員のキャリアビジョンを実現し、企業の成長につなげることができる。
アルムナイ採用の具体的な手法
自社の退職者ネットワークの構築
アルムナイ採用を成功させるには、退職者とのネットワークを構築し、継続的なコミュニケーションを取ることが重要である。
具体的には、以下のような取り組みが考えられる。
- 退職者向けのニュースレターの発行
- 定期的な同窓会の開催
- SNSを活用した情報発信
- 退職者専用のWebサイトの開設
こうした取り組みを通じて、退職者との関係性を維持し、再雇用の機会を創出することができる。
専門サービスの活用
リクルートが展開している「カムバック採用代行サービス」のように、企業と退職者をマッチングする専門サービスを活用するのも有効な手法である。こうしたサービスでは、企業の採用ニーズと退職者のキャリアビジョンをすり合わせ、最適な人材を紹介してくれる。専門家の知見を借りることで、効率的にアルムナイ採用を進めることができる。
おわりに
アルムナイ採用は、企業にとって優秀な人材を効率的に確保できる有効な手段である一方、再雇用された社員が重要な役職に就くことは難しいといったデメリットもある。
企業側としては、ミスマッチを防ぎつつ即戦力を採用でき、新しい知識や価値観を取り入れられるメリットがある反面、既存社員の不満や退職リスクにも留意が必要である。
個人にとっては、キャリアの選択肢が広がるメリットがある一方で、役員などの重要ポストに就くことが難しくなるデメリットもある。
アルムナイ採用に適しているのは、従業員数が多く経営体力のある大手企業が中心であり、具体的な手法としては、自社の退職者ネットワークの構築や、企業と退職者をマッチングするサービスの活用などが挙げられる。
アルムナイ採用は、人材の流動化が進む中で、企業と個人双方にとって新たなキャリアの可能性を切り拓く採用手法であると言えるだろう。転職を考える際には、アルムナイ採用という選択肢も視野に入れてみてはいかがだろうか。
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