楽天の経営戦略や業績の課題。競合との違いや事業の特徴を解説
「楽天市場」をはじめ、数々の事業を展開している楽天グループ。
楽天グループの影響力は非常に大きく、楽天のサービスは私たちの生活に身近な存在となりました。
ただ、近年は新事業による経営課題を抱えており、今後の展開に注目が集まっています。
そこで本記事では、日本の経済界で一大勢力となった楽天グループの概要・経営課題・事業の特徴を解説します。
楽天グループの特徴
楽天グループは「楽天市場」をはじめとして、数多くの事業を展開しています。
代表的な事業は以下の通りです。
- 楽天トラベル
- 楽天銀行
- 楽天証券
- 楽天カード
- 楽天モバイル など
上記以外にもスポーツ事業・メディア事業に参画しています。
楽天グループ全体の月間アクティブユーザーは4,000万人であり、世界でも約17億のユーザーが利用しています。
楽天グループの企業情報は以下の通りです。
企業名 | 楽天グループ株式会社 (英文社名:Rakuten Group, Inc.) |
所在 | 東京都世田谷区玉川一丁目14番1号 楽天クリムゾンハウス |
設立 | 1997年2月7日 |
資本金 | 4,449億4,500万円(2023年6月30日現在) |
営業利益 | 3,638億9,200万円(2022年度通期) |
売上高 | 1兆9,278億7,800万円(2022年度通期) |
従業員 | 32,079名(連結)(2022円12月31日現在) |
代表者 | 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史 |
楽天の事業内容
楽天グループは、合計で70を超えるサービスを展開しています。
カテゴリ分けされた事業内容は、以下の通りです。
出典:楽天公式サイト
楽天グループでは、展開する事業を下記3つのカテゴリに分類しています。
- インターネットサービス事業
- フィンテック(金融)サービス事業
- モバイルサービス事業
上記3つのサービスを有機的につなげることで、楽天会員を中心としたメンバーシップを構築しています。
ここでは、楽天グループの軸となる3つのサービスについて詳しく解説します。
インターネットサービス事業
楽天グループのインターネットサービス事業で基幹となっているのが、多くのユーザーから認知されている「楽天市場」です。
リリース以降、一貫して堅調な成長を続けているのが特色です。
EC業界の国内シェアは、Amazon:52%、楽天市場:28%、Yahoo!ショッピング:11.3%であり、国内2位につけています。
また、「楽天市場」を中心に据えた上で別事業と密接な連携を図り、シェア率や売上高の増加を目指すビジネスモデルを構築しています。
「楽天市場」と連携している別事業は以下の通りです。
- 楽天ラクマ
- 楽天ファッション
- 楽天ブックス
- 楽天トラベル
EC事業の特徴を理解する上で重要なポイントを2つ解説します。
1.マーケットプレイス型を採用している |
・出店枠を提供し、出店にかかる手数料や売り上げからのマージンで収益を上げるモデル ・競合のAmazonは、自社で仕入れた商品を販売する直販型を採用している ・Amazonと違い「ECコンサルタント」や「楽天大学」などの店舗側へのサービスが充実しているのが特徴 |
2.楽天IDによる他プロダクトとの相互効果 |
・楽天が提供するサービスの全てが楽天IDで利用でき、EC事業外でも楽天スーパーポイントが貯まる ・楽天市場が会員数増加に寄与することで、ほかのサービスへの波及につながる |
EC事業としてはAmazonと共通しながらも、異なるビジネスモデルを採用しているため、戦略も異なっています。
しかし、近年Amazonに後れを取っている戦略が、配送システムです。
楽天では配送システムの整備不足を指摘されており、時折ネガティブなニュースが出ることもありました。
しかし、日本郵便の配送ネットワークにシームレスに物流センターが組み込まれたことで、配送ルートの効率化が可能となりました。
配送の効率化により「配送リードタイムの短縮」と「配送コストの削減」を実現でき、これまで弱点だった配送システムにも光明が見えてきています。
モバイルサービス事業
楽天グループのモバイル事業は、ここ数年で最も大きなプロジェクトとして進行しています。
ただ事業としては赤字が続いており、その理由は以下の通りです。
1.多額の設備投資 |
・急激な会員数増加に対応するため、基地局の建設費やネットワーク構築にかかる経費が多額になった |
2.高額なローミング代 |
・自前の基地局が少ないため、ローミングで利用する会員が多い ・ローミング代だけで売り上げの約25%が失われているため、急ピッチで基地局の建設を進めている |
ローミング代を減少させるために、さまざまな施策を実行することで、着実に効果が出てきています。
また、モバイル事業でも楽天IDによる相互効果を狙い、顧客の楽天市場から楽天モバイルへの流入を図っています。
フィンテック事業
フィンテック事業は、「楽天スーパーポイント」を軸にした楽天経済圏ユーザー向けの事業です。
主なサービスは以下の通りです。
- 楽天カード
- 楽天証券
- 楽天銀行
- 楽天ペイ
- 楽天生命 など
フィンテック事業は、セグメント全体で売上収益7.6%増の1,680億円、営業利益も20.4%増の266億円と順調に推移しています。
事業の特徴である「楽天エコシステム(経済圏)」
楽天グループでは、70以上のサービスを「楽天会員」として有機的に結びつけることで、独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を形成しています。
一見すると関連性のない事業同士でも、「楽天ID」と「楽天スーパーポイント」を共通項にすることで、強固な結びつきと顧客の流入を実現しています。
さらに、サービス同士を連携させることで、顧客にさまざまなキャンペーンを開催しているのも特色です。
キャンペーンの例は以下の通りです。
- 「楽天銀行」と「楽天証券」の口座を連動させると、普通預金金利が0.02%から0.10%に大幅アップする
- 「楽天カード」の引き落とし口座を「楽天銀行」にすると、「楽天市場」での楽天カード利用分がさらにポイント最大+1倍となる
- 「楽天銀行」の口座保有者が「楽天モバイル」に申し込むと、入会時に楽天スーパーポイントが2,000ポイントもらえる など
上記のようなキャンペーンを矢継ぎ早に打ち出すことで、会員数を増やし楽天エコシステムの拡大につなげています。
楽天の業績
近年の楽天グループの業績に多大な影響を与えているのが、モバイル事業です。
設備投資と高額なローミング代により、現在の赤字体質が作り出されています。
2022年12月期の決算では、楽天グループは過去最大となる3,728億円の純損失を計上しました。
この純損失の原因も、モバイル事業の巨額な設備投資が主な原因です。
ただ、モバイル事業に関しては、下記のような改善の兆しが発表されています。
- コスト削減の施策により継続的な損失改善を実現
- 契約回線数及びARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの売上数を指す用語)が増加し、楽天モバイルの大幅な収益増に貢献
- 楽天モバイルの新プランである最強プランの開始により、解約率が劇的に改善
上記の最強プランは、データ通信・通話・価格の3つの面でユーザーにメリットが大きく、楽天スーパーポイントも貯まりやすくなっています。
今後、モバイル事業がどのような推移をたどるかがキーポイントとなると予想されています。
一方で、楽天市場や楽天カードなどは黒字で、セグメント利益を上げている事業です。
モバイル事業を改善させながら、黒字事業もさらに伸ばしていけるかどうかにも注目が集まっています。
楽天の成長戦略
楽天グループは、2030年までに国内EC流通総額10兆円を目指しています。
EC流通総額10兆円を達成するために、「楽天モバイル」の契約者増加を足がかりにして、「楽天市場」をさらに成長させる戦略を展開しています。
一つの事業だけでなく、ほかの事業とも関連させて同時に伸ばす戦略は、楽天グループの核となる「楽天エコシステム」によるものです。
楽天エコシステムにおける効果的な施策の一つが、楽天スーパーポイントによる顧客の囲い込みです。
楽天スーパーポイントが、楽天グループ内のさまざまなサービスで利用できることで、顧客がサービスを複数利用・回遊・継続しやすくなる仕組みが整備されています。
この強固な楽天エコシステムを基盤として、さらなる売上拡大に向け邁進しています。
楽天の採用ニーズ
楽天グループの中途採用では、以下の4職種が募集されています。
- BUSINESS:営業・コンサルタント・戦略経営企画・カスタマーサポート・運用管理 など
- ENGINEER:アプリケーションエンジニア・プライバシーガバナンス・テクニカルスペシャリスト など
- CREATIVE:デザイナー・フロントエンドエンジニア・UX など
- CORPORATE:人事・総務・コーポレートコミュニケーション など
どの職種にも共通して求められているのが、「楽天エコシステムの拡大に貢献できる人」です。
各事業の相乗効果を狙った施策を企画・実行し、楽天経済圏の拡大に寄与できる人材が活躍できます。
また、証券・モバイルなどの会員数増加を目的とした営業ができる人材も重宝される傾向です。
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