今、国内外で注目を浴びる「リスキリング」とは。
今、話題に上がることが多い「リスキリング」ですが、「リスキリング」とは、英語の「Re-skilling」をもとに定義されたワードであり、スキルを学び直すことと表現されています。
今回は、リスキリングが注目を浴びる背景やリスキリングに注力している企業、そして今後のキャリアに与えうる影響について解説していきます。
リスキリングとは
2021年に経済産業省が発表した資料によると、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。
近年では、デジタル化と同時に生まれる新たな職業や、仕事の進め方が大幅に変わると思われる職業に就くためのスキル習得を指すことが多い傾向にあります。
リスキリングと混同しやすいワードに「リカレント」があるが、意思決定者に若干の違いがあります。
具体的にリスキリングは「企業の従業員に」新たなスキルを習得させる傾向にあり、リカレントは大学に入り直すなど「自らの意思」で別のスキルを身につけるという特徴があります。
しかし、「新たなスキルを身につけていく過程」という意味が共通しているため、言葉本来の意味に違いはありません。
リスキリングが注目を浴びる背景
次にリスキリングが注目を浴びる背景について、以下の3つをご紹介していきます。
- DXの推進の浸透
- 新型コロナウイルス感染症の流行による働き方の変化
- リスキリングに関する宣言の発表
DX推進がの浸透
現代は「第4次産業革命」に突入しており、人間に代わってロボットが業務を担うシーンも増加しつつあります。
コンピュータやAIなどのデジタル技術をフル活用することで、業務効率のアップや従業員の負担軽減など、事業運営に好循環を生み出すでしょう。
しかし、DX推進にはデジタルに関する専門知識や技術を身につけた人材の供給が不可欠であり、各社対応に追われているのが現状です。
そこでリスキリングによって専門人材を補う動きが注目を集めているというわけです。
新型コロナウイルス感染症による働き方の変化
新型コロナウイルス感染症の流行によって、働き方が大きく変わりました。社内で働いていた人がテレワークに変わり、顧客とのやり取りが対面からオンラインへと移行したことは記憶に新しいでしょう。
つまり、レガシーシステムでは現在の業務に対応しきれなくなっています。それに伴い、新たなスキルを身につけなければならないというわけです。
リスキリングに関する宣言の発表
例えば、2020年に開催された世界経済(ダボス)会議では、「2030年までに地球人口のうち10億人にリスキリングを実施する」と発表されました。
さらに経団連でも、2020年11月に発表された「新成長戦略」のなかで、リスキリングの必要性について触れられています。
リスキリングに注力する企業
AT&T
リスキリングの先駆者として有名なのは、AT&Tというアメリカにある通信業界大手の企業です。
そのきっかけとなったのは、2000年代に起こった通信業界の革命です。この通信業界の革命に対応できる人材を増やすことを目的としてリスキリングに注力するようになりました。
2008年に、自社の従業員が持っているスキルを調査したところ、25万人の従業員の約半数は、社内において陳腐化するスキルしか保有していないと判断されました。
このままでは、通信業界の移り変わりに対応できないと考えた結果、2013年に自社の従業員10万人を対象に、「ワークフォース2020」というリスキリングのイニシアティブをスタートさせたのです。
10億ドルを投じて行われたビッグプロジェクトになったが、リスキリングに参加していない従業員と比べて、参加した従業員の昇進率は上がりました。
さらに、退職率を抑えることにも成功したため、大きな恩恵と効果が得られた取り組みといえるでしょう。
Amazon
ほかにも、Amazonが2025年までに、米アマゾンの従業員10万人を対象にリスキリングを実施すると発表し、1人あたりの投資額としても75万円と高額なことが話題になりました。
国内企業
また日本でも、企業によるリスキリングに対する取り組みが、徐々に実施されるようになりました。
例えば、日立製作所は、全社員に対してリスキリングが実施され、DXの基礎に関する教育が行われています。
富士通に関しても、時田社長新体制のもと、「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱し、人材のリスキリングは重要課題と明確に宣言中です。
日本におけるリスキリングの課題
米国に比べ、まだまだ導入率も低い日本企業にとっての課題は、大きく2つあります。
- 職務内容とスキルの可視化の難しさ
- デジタルスキル実装の課題
これらについて、1つずつ紹介していきます。
職務内容とスキルの可視化の難しさ
残念ながら多くの日本企業では、システム関連やものづくりの現場などの一部を除いたほとんどの職種で、「職務とスキルの対応」を定義化しきれていません。
また、スキルマップやスキルデータベースは作成したが形骸化しています。日本企業にとっては、スキルの可視化が高い壁になっています。
打開策としては、スキルの可視化こそAIを活用し、社内外の人材要件定義・求人情報・研修情報などから特定職種に求められるスキルを把握する必要があります。
特定スキルをアップデートするなど、常時更新し続ける仕組みを作るなどの模索が求められるでしょう。
デジタルスキル実装の課題
必要なスキルの可視化ができたら、次のステップとして実際にそのデジタルスキルを、「仕事で使えるレベル」に高められるコンテンツをそろえる必要があります。
企業の内外には、さまざまなスキルを獲得するためのコンテンツが用意されています。しかし、豊富なコンテンツのなかから、どれが本当に有用なものなのかを見極めるには膨大な労力がかかるでしょう。
また日本企業は、社内研修の内製化へのこだわりを捨てるべきです。DXなど大きな戦略転換に伴うリスキリングでは、専門家やベンダーの力を借りたほうが得策といえます。
さらに、自社向けの独自コンテンツを作成する際には、社外に存在するさまざまなリソースをそのまま用いて獲得することも検討すべきです。
「座学やeラーニングだけでは、実践的なスキルが身につかないのでは」という声も上がっています。
このようにまだ課題もあるリスキリングですが、今後の働き方や職務内容に影響を与えることは間違いないでしょう。
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