営業パイプライン管理とは
営業マンの中には、「次の商談で何をすれば良いか明確でない」「営業の効率化のために何をすればよいかわからない」といった課題感を持たれる方も多いのではないでしょうか。
そういった課題の背景の1つとして顧客管理が不十分な点があると考えられます。
今回は、代表的な営業の管理手法である営業パイプライン管理についてご紹介します。
営業パイプライン管理とは、営業活動における一連の業務フローを縦軸と横軸で管理するもので、キーエンスやセールスフォースなどトップクラスの営業力を持つ企業が採用している手法です。
営業パイプラインを知ることで、営業戦略を1人で立て、実行できる力を身につけましょう。
営業パイプライン管理を使うメリット
それでは、営業パイプライン管理についてより詳しく理解していきましょう。
営業パイプライン管理の目的は、顧客に対する営業プロセスの段階を可視化することで、下記のようなメリットを享受することができます。
メンバー層へのメリット
・自分の得意、不得意が客観的に把握できる
・商談でのアクションが明確になること
自分の得意、不得意が客観的に把握できる
マネジメント層のメリットでも触れましたが、他メンバーと比較して決裁者の合意の確率が低い、リードタイムが長いなど課題が客観的に把握できる点は一メンバーとしても日々営業活動のブラッシュアップを行う上で有用なデータとなります。
商談でのアクションが明確になること
営業パイプラインでは各プロセスで求める行動が定義されているため、商談のフェーズを確認するだけで迷わずに次に行うべきアクションにとりかかることができます。
もしあなたがマネジメントを行っているのであれば、以下のメリットが期待できます。
マネジメント層へのメリット
・営業のボトルネックが発見しやすくなり、部下に対するフィードバックがより具体的に行えるようになる。(例:決裁者へのリーチが上手くいっていないから、リーチの得意なメンバーからノウハウを聞いてみよう)
・売上予測が立てやすくなる
・資金の適正配分ができる
営業活動のボトルネックが発見しやすい
営業のフェーズおよび、顧客のセグメントを分解して管理するため、「どういった顧客の」「どの営業フェーズで」失注してしまっているかが明確になります。
これにより、「初訪問から次訪問への歩留まりがよくないから、初訪問での打合せ内容を見直そう」と営業活動の改善策もより具体的に検討することができます。
また、個々の営業マンについての得意不得意の把握につながるため、人員配置の最適化を検討する際にも有効な情報となるでしょう。
売上予測が立てやすい
営業パイプラインで継続的に営業活動の管理を続けることで、各セグメント、各営業フェーズでの歩留まり率のデータが蓄積されていきます。
その結果、現在どのフェーズに何件の案件があるかという情報を基に「いつ」「どのくらいの案件数が」「いくらの売上になるか」という予測がリアルタイムに立てられるようになります。
資金の適正配分ができる
どのチャネルが成約に繋がりやすいか、一方でどのターゲットは成約率が低いかといった点が数値として表れるため、どこに優先的にお金をかけていくべきかも明らかになります。
しかし、上記のメリットを得るためには、社員それぞれが別々の基準で営業プロセスを定義してはなりません。
営業組織のトップが軸を設定し、それを各営業マンが共通認識として用いるのがよいでしょう。
この「縦軸と横軸をどのように設定するか」がパイプライン管理において大変重要となります。
横軸について
営業パイプラインにおける横軸は営業のプロセスを分解したものです。
営業マンごとに認識のズレが起きないよう、合意や契約といった客観的事実をフェーズの切り替わりとするようにしましょう。
基本的に商談の段階で分けることが多いです。
(例:アポイント、初訪問、次訪問、見積提出、基本合意、契約締結)
訪問の回数等で分けた場合、営業マンによってズレが生じ、適切な管理ができないリスクがあります。
縦軸について
営業パイプラインにおける縦軸は顧客のセグメントを表します。
営業フェーズで分解する横軸と比べると、顧客の単価や契約の確度の高さなど分け方が多種多様です。
細かく分けすぎるとセグメントごとの管理が煩雑になる危険性があるため、多くても3つ程度の分解に留めておきましょう。
営業力の高い企業の例から学ぶ
それでは、実際に営業力の高い会社がどのように営業を管理しているかみていきましょう。
キーエンスの例
まずは、キーエンス。
製造業の平均的な営業利益率が4%程度の中、50%以上を叩きだしている背景にはファブレスメーカーである点はもちろんですが、確立された営業手法があります。
上記のように、キーエンスでもプロセスを分解して営業を管理しています。
さらに特徴的なのが、フェーズごとにアウトプットを設定している点です。
これにより、各営業マンのパフォーマンスのレベルについても分析可能になるため、育成効率が上がるのはもちろんのこと、横軸設定の鉄則である「人によってフェーズ移行の定義がズレないこと」に繋がっています。
このように営業プロセスとアウトプットを結びつけることで営業プロセスの標準化が叶えられており、高収益を生み出す営業活動ができているのでしょう。
セールスフォース(インサイドセールス)の例
次の例はセールスフォースです。
セールスフォースでは各面談のフェーズを下図のように定義しています。
キーエンスと異なり、メモや面談記録、提案書といったアウトプットによる定義ではなく、商談の中で「どのテーマまで合意がとれているか?」という分解をしています。
ただし、課題を4つへ分解する、効果の証明として3つの変化を示すなど、営業マンによって定義のズレが起きないように各フェーズのゴールを明確化しているという点はキーエンスの例と共通です。
また、フェーズ2であれば15%、4ならば50%、7なら95%など各フェーズにおける受注確度が設けられているため、容易に売上予測を立てることが可能となっています。
これまで、営業力の高い2社について紹介してきましたが、共通点として各フェーズのゴールの定義が明確であること(アウトプットか、数値かで定義)が挙げられます。
営業力の高い会社は優秀な営業マンが集まっているというだけではなく、営業活動に対する徹底的な標準化、平準化によって組織的に営業の水準を高めていることがうかがえます。