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【PwCコンサルティング パートナー 市川氏インタビュー】クライアントと共に汗を流す PwCに根付くコンサルの気骨(前編)

(左)PwCコンサルティング合同会社 データアナリティクス パートナー 市川 秀樹様 
(右)株式会社アサイン 取締役 奥井 亮

PwCコンサルティング参画までの歩み

奥井:
それでは、よろしくお願いします。今回の記事はSIerの方が実際に御社でどのようなプロジェクトに関わるのか、どのようなキャリアになるのかが伝わるものにできればと思いますが、まずは市川様の経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。

市川:
私は40歳まで事業会社でキャリアを積んだのちにITの世界に入り、データ分析を一つの柱にキャリアを歩んできています。
データ分析に最初に関わったのは20代とかなり早く、ある企業に勤めていた際、交通事故を減らすための分析をしたのがきっかけでした。交通事故を勉強していくうちに、1件の重大事故に対して事故ではないヒヤリハットの出来事が300件ある、ハインリッヒの法則というものを知りまして、これまで会社が注目していた重大事故ではなく、軽微な出来事に注目しました。事故に関係ある日付や天候などのデータだけではなく、会社での売り上げ成績 やドライバーの個人情報など、一見事故とは関係がなさそうに思えることも含めて、半年かけてデータにまとめて分析しました。その結果、売り上げ成績の波がある人と、勤怠管理ができていない人が事故を起こしやすいという法則に気が付き、その仮説を実証するために勤怠ルールを変えたところ、3カ月間事故が0になったんです。まさに根本原因を分析する重要性を痛感しまして、それがキャリアの原点になっています。

40歳からはIT企業でさまざまな経験をしてきたのですが、まだ未上場だった企業で、レポートシステムとマーケティングオートメーションシステムを組み合わせて販売し、売上を10倍以上まで伸ばしたことが評価され、48歳のタイミングでコンサルティング会社に転職しました。
その会社ではビジネスインテリジェンスチームの立ち上げに関与し、その後別のコンサルティング会社も経験した後、縁がありPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)に参画することになりました。

データ分析の神髄

奥井:
データ分析自体はあくまでも手段かとは思うのですが、データ分析する際に市川さんが意識されていることは何でしょうか。

市川:
いきなりデータを見ず、まずはお客様の立場に立ち、本当の課題が何なのかを特定することです。例えばメーカーのお客様は製品が売れないときに、製品に原因があると考えることが多いのですが、購買行動においては製品の性能以外にも、購買タイミングや製品価格、製品の色など、さまざまなファクターがあります。お客様とともに根気強くそれらのファクターを洗い出し、データとして並べて機械学習にかけると瞬時に傾向が出るんです。その傾向の中で操作できるものと操作できないものに分けて、操作できるものに注目することがポイントです。

奥井:
市川さんはこれまで0から新しいものを築き上げてきた経験が多いと思うのですが、その際に重要視されていることは何かございますか。

市川:
まずはブルーオーシャンを目指すことですが、そう簡単には見つからないので、イノベーションを意識しています。「インベンション=発明」ではなく、「イノベーション=組み合わせ」であることがポイントで、全く新しい何かを生み出すことは難しくても、既存のものを組み合わせて新しいものを作ることはできるんですね。

具体例としては写真スタジオ。昔、コンパクトカメラなどが流行り、カメラの敷居が低くなった時に、町の写真館は斜陽産業になっていきました。ただカメラを持つ人の中には、自分の腕に物足りなさを感じるからこそプロに頼みたい人もいて、そこにレンタル衣装を組み合わせてイノベーションを生み出したのが写真スタジオです。

全くないサービスを作ろうとすると限界はありますが、組み合わせであれば0から生み出すことはできるというのが私の考え方ですね。

コンサルティング業界の変遷

奥井:
今テクノロジーやデジタルのニーズが高まっていますが、市川さんから見たコンサルティング業界の歴史を伺いたく、クライアントニーズの変化や意識するべきポイントの変化などはありますでしょうか。

市川:
現在コンサルティングファームが行っている業務の一部をSIerが担っている時代がありました。ただフルスクラッチでの開発からパッケージソフトの活用に変化をし、お客様のビジネスソフトウェアに対する要求が高くなると、求める精度に対してコストが肥大化し、案件のリスクが大きくなっていきます。炎上するリスクも高くなるためSIerが徐々に踏み込まなくなっていき、コンサルティングファームが台頭してきたと理解しています。

ただお客様が求めるものは「ビジネス課題の解決」から変わっていません。だからこそお客様が何に困っていて、どうすれば解決できるのか、お客様以上に考えることが重要です。その中でエビデンスとなるファクトを見つけていくのがデータ分析の世界。データ分析を使わないコンサルティングファームは自社のフレームワークで押し通していますが、データ分析を行うことでファクトが生まれ、失敗が少なくなります。過去の成功体験ではなく事実に注目するデータ分析が私は好きですね。

奥井:
昔と比べて取り扱うプロジェクトの内容に変化はありますか。

市川:
アナリティクスの領域では画像解析やテキスト解析などが当たり前になってきています。以前はそれらの分析はまだまだ先進的なことで、POC(=概念実証)の領域だったのですが、今はSNSや人流データの分析などが当たり前になっていて、一歩進んだ内容になっているのが変化したことですね。

テキストマイニングなども精度としてかなり高くなっていて、データの母数も増えているため、実際に効果的に用いることができるようになっています。

話は少し逸れますが、アナリティクスの領域でよく勘違いされることとして、AIが100%人間の代わりになるかというとそうではないです。未熟な方が熟練者に近い仕事ができる、5年かかる技術習得が2年に短縮できる、というのが実際のレベルです。しかし、それが限界だと割り切って考えると、とても便利な技術なんです。テクノロジーに関しては限界があるからダメということではなく、限界を見極めてどう使うかが重要だと思いますね。

PwCコンサルティングの特異性

奥井:
市川さんはこれまで複数のコンサルティングファームに所属されてきましたが、各ファームの違いはどのようにお感じになられますか。

市川:
王道の手法を大切にし、教育も一生懸命行うところもあれば、グローバルネットワークを活用して積極的な営業姿勢がうかがえるコンサルティングファームもありました。PwCコンサルティングに入社して感じたのは、会社への貢献性など目に見えない部分も評価しているというところでしょうか。

また、Data&Analyticsの領域におけるPwCコンサルティングの特徴は、1つのチームでアナリティクスからデータマネジメント、システム導入まで一括して行っているところです。

奥井:
ありがとうございます。これまで長い間コンサルティングファームに所属されてきた市川さんの視点は新しい気づきが多く大変参考になりました。次の記事では、未経験からのコンサルティングファームでのキャリアについて深堀りできればと思います。

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