【ベイカレント・コンサルティング 田中氏インタビュー】「私心なき心」で向き合うコンサルタントとしてのキャリア(前編)
奥井:
はじめに田中様ご自身についてお伺いしたいと思います。簡単にご経歴を伺えますか。
田中様:
大学卒業後にITコンサルティングファームに就職し、戦略、グランドデザインから開発まで幅広く従事しました。プロジェクト以外では、自社の中期経営計画策定やPMIなども経験しました。入社してから7年ほど経ったころベイカレントに転職し現在に至ります。
奥井:
前職では様々な経験をされていらっしゃいますが、特に印象的だったことや現職に活きていることなどはありますか。
田中様:
いくつかありますが、特に技術の原理原則を大切にするという考え方は今でも活きていると思います。
前職ではプロジェクトリーダーは技術の原理原則を理解していなければならない、そうでなければプロジェクトの品質管理はできないという風土がありました。要はコンサルティングを行うにしてもシステム開発の進め方や活用すべき技術/コーディングといったシステムの要諦を理解しておく必要があるという考え方です。
そのため、私自身も3ヶ月ほどの新人研修を受けた後、最初のプロジェクトでは主にはプログラミングの経験を積んでいました。とは言いながらも実は、最初のプロジェクトに入って半年ほどたったころ、上司が突然プロジェクトから外れてしまい、その穴を埋めるため、早々にプログラミングから離れた仕事が主にはなりましたが、その後も度々プログラミングをする機会はありましたし、プログラミングの経験のおかげでITの勘所がつかめたのだと思います。
奥井:
入社9ヶ月ほどで上司の方の穴を埋めなければならないという状況はとてもプレッシャーがかかりそうですが恐怖心などはありませんでしたか。
田中様:
もちろん、恐怖心はありました。居なくなった上司は10年目、職位で言うとマネージャーでしたので、入社1年にも満たない自分が穴を埋められるのかと正直不安でした。
しかし、その不安に立ち向かい、プロジェクトを推進できたのは私の原体験にあったと思います。
少し昔の話になってしまいますが、私は学生時代までサッカーに打ち込んでいました。そこでの原体験が私の中でとても色濃く残っており、「自分よりもレベルの高い環境に身を置き、そこで努力できるかどうかで、成長の角度が変わる」という考えがあったことが、それを乗り越えられた理由だと思っています。
この考えに気が付き始めたのは中学1年生のころですが、その後に県選抜や関東選抜、プロサッカーチームのレギュラーに選ばれるなどを経験する中でその考え方が強まっていきました。そして、それを仕事に対しても類推適用しました。
奥井:
「類推適用」というのは簡単なようで、実際やろうと思うと難しいことだと思いますが、何かコツのようなものはありますか。
田中様:
一言でいうと「生き方レベル」にまで引き上げることです。つまり、自分の原体験を言葉として教訓にし、それを大切にして生きようと決めて毎日を過ごすことです。
私が先程の原体験をコンサルタントにアドバイスとして伝えるときには、「逃げ1秒、成長3年。」と言っています。逃げるのは簡単で、逃げれば目の前の重圧からすぐに解放されます。また、逃げずにやっても成長はすぐには実感できません。本当の成長は3年後くらい経ってから返ってきます。だからこそ、今は苦しくても頑張って欲しいと伝えています。
ひたむきに取り組んでみて、3年後に振り返って自分の成長を感じる。コンサルタントと一緒に時間を過ごす中でこのサイクルを回し、気がついてもらうことが私の役割の一つだと思っています。
奥井:
ありがとうございます。少し話は変わりますが、自社の中期経営計画やPMIなど経歴として珍しいと感じました。自身のキャリアを築いていく上で大切にしていたことはありますか。
田中様:
もちろんプロジェクトの希望や実績のアピールなどはしましたが、自分のキャリアだけを追うのではなく、人のためになる、困っている人を助けるという、いわゆる「私心なき心」をより大切にしてきました。
例えば、自分が希望するプロジェクトへのアサインが決まっている状況でも、同期が苦しんでいるプロジェクトがあればそちらを優先するようにしていました。
キャリアを築くという観点から考えると非合理のように思えますが、実際の会社経営においては、合理的には決められない判断や、人の心を動かさないといけない場面が多くあります。だからこそ、このような価値観を会社が評価してくれた面もあったのかもしれません。
私も今の立場になって、こういった価値観が非常に重要だと改めて感じています。究極の場面で自分のことよりも相手を優先できたり、簡単なことよりも難しいことを選んだりできる人を採用したいですし、評価したいと思っています。
奥井:
前職で順調にキャリアを築いてきたにも関わらず、ベイカレントに転職されたのはどのような理由だったのでしょうか。
田中様:
システムを前提とするのではなく、システム以外も含めて問題解決の手段を決めていける仕事をしていきたいと考えたことが大きな理由です。前職で様々な仕事を任される中で、グランドデザインはIT領域における問題解決としては最上流である一方で、ビジネス上の問題解決においては最上流ではないと認識していました。また、会社の方針がシステムに重きをおいて成長していくとなっていくにつれ、私はやはりコンサルタントであり、システム開発をするよりも、CXO層とともにビジネスを描くなど、もっと人に向かって仕事をする方が楽しいし、得意だと思っていたことも要因の一つでした。
その中でベイカレントを選んだ理由は、自由と責任を一番与えてくれそうだったからです。前職では戦略・業務・ITと領域を分けずに一気通貫で支援をしていましたので、チームなどの枠があるコンサルティングファームは自分には合わないと思いましたし、個人の想いを尊重してくれそうだということが面接を通じて伝わってきました。
奥井:
ありがとうございます。現在は執行役員としてコンサル業界全体を見据えながら、会社全体の舵取りに携わっていらっしゃるかと思います。ここからはコンサル業界の今後について、特にITの側面からお話を伺いたいと思います。