宇宙ビジネス×デザイン。未知な世界を切り拓く第一人者が語ったデザインへの想い
ヤマハ発動機のデザイナーから念願であった宇宙産業のデザイナーとして株式会社DigitalBlastへ転職を果たした山下さん。
前例のない「宇宙ビジネス×デザイン」への道を切り拓こうと考えた理由は何だったのか、前職の活動から宇宙ビジネスへ参入するきっかけ、現職でのご活躍を担当エージェントの岩橋がうかがいました。
ヤマハ発動機からキャリアをスタート。乗り物を通じた経験を次世代にも
–転職活動サポート当初からお伺いしている内容と重複してしまいますが、前職であるヤマハ発動機へ就職した理由についてお伺いしてもよろしいでしょうか?就職を決められた背景について聞かせてください。
はい、就職した理由は「昔から乗り物が好きであった」「前職で展開している商品のデザインが好きであった」という2点に絞り込めます。
高校生の頃はデザイナーというよりも、乗り物を開発するエンジニアを目指したいと考えていたのですが、自分で物づくりをしている際にデザインの魅力に惹き込まれていました。
なぜ前職なのかというご質問については、自動車のみ、バイクのみという製造領域に限定せず、陸・海・空すべてのレジャービークルを製造し、一貫した「デザインフィロソフィー」を体現していたからだと思います。
あとは、私自身がずっとバイクが好きで、バイクで旅した経験が自らの人生に深みを持たせてくれたと感じています。そういった、乗り物を通じた経験を次の世代にも経験して欲しいと想い、最終的には前職への入社を決めました。
–入社されてどのような業務内容を担当されていたのでしょうか。
主に担当していたのは外観デザインの開発です。
バイク製品について、企画やカスタマーリサーチから、外観デザインやユーザビリティ設計まで一貫して携わっていました。
キャリアに対する課題感
–前職ではヨーロッパなど海外にも多数のR&D(Research & Development)拠点があり、山下様はプロジェクトの担当も抱えていたとお伺いしました。まさに工業用デザインの最前線でご活躍されており、裁量権も大きいなかで、前職にはどのような課題感を持たれていたのでしょうか。
一番に感じていたことは、すごく狭い範囲での業務を遂行しておりましたので、プロダクトデザイナーとしてのキャリアを考えると、より裁量の大きな上流の仕事を増やしたいという思いがありました。
もちろん、前職でのモチベーションは高い状態でしたし、社内での評価もありがたいことに申し分のないものでした。
ただ、やはり1つのパートではなく、より俯瞰して開発に携わりたいと思う気持ちが強かったですね。
–最終的に、転職を決意された背景についてもお伺いします。
「宇宙産業」「宇宙ビジネス」に興味関心があったことが大きな要因です。
また、新しいチャレンジをしたいと思っていた時期でもあり、デザイナーとして培ったスキルを活かして「新業態への挑戦」という決断に至りました。
もちろん自己実現として、心から乗り物に関わる仕事が好きでしたが、それと同じかそれ以上に大きな憧れを持つ宇宙というフィールドへの想いが強かったです。
–改めてお伺いすると非常に懐かしいですね。
そうですね。もう1年以上前にご相談をさせていただいたところですので。
宇宙ビジネスかコンサルファームか。汎用性が高いキャリアとの葛藤
–私が最初にお話しをさせていただいたときは、キャリアの方向性に対して自信がなく、どちらかと言えば迷いがあったかと思います。当時はどのような点に不安を感じていたのでしょうか。
やはり一言で言えば、私自身が「宇宙ビジネス×デザイン」領域に価値を見出していても、世の中にはどの程度需要があるのか分からないという点が大きいと思います。
また、ユーザーニーズが顕在化していない宇宙ビジネスをゴールに設定しているからこそ、2つのキャリアプランで迷いが生まれていました。
1つ目は、いきなり宇宙産業へ転職するのではなく、不確定要素が大きいからこそビジネスコンサルタントなど業界との親和性が高いキャリアへの転職です。
2つ目は、保有するスキルやアイデアを持って、第一希望の宇宙産業へ転職するという選択肢です。
このように、さまざまな方向性が検討できるからこそ、最適な道を決めかねておりました。
未開拓領域へ進む決意を後押ししたエージェントからの言葉
–山下様は先に挙げたベンチャーファームなどのほかに、総合ファームのUI/UXデザイナーチームなども受けていらっしゃいました。単純に比較すると、宇宙ビジネスと後者では会社の規模や業務内容も全く異なるキャリパスが想像できます、棲み分けはされていたのでしょうか。
そうですね、これに関しては明確に分けていました。
繰り返しになりますが自分が挑戦したい「宇宙ビジネス×デザイン」領域はユーザーニーズが顕在化しておらず、顕在化するまでどの程度時間がかかるか分かりません。
真っ先に宇宙産業へ挑戦するよりも、R&Dのプロダクトデザイナーという経験を活かして、さらに幅広くお客様の課題解決に向き合える総合ファームに行くのが今後飛躍するための一歩ではないかと思いました。
宇宙産業は、デジタルやITを避けて通れない領域だと思うので、あえて親和性の高い領域へ転職し、箔を付けることが宇宙産業に対してのプレゼンスを発揮しやすいとの見方もできます。
転職活動当初は「希望する宇宙ビジネスへ転職する」もしくは「あえて親和性の高い領域へ転職する」この2点で揺らいでおりました。
–確かにご意向が拮抗していたと感じていて、最後の最後まで迷われていたかと思います。当時オファー回答期限前日のお電話で「好きなことを真っ直ぐ」という山下様の価値観を考えたときに「一度、宇宙ビジネスを諦めるのですか」とご質問をしたと思います。転職先における最終的な決定軸は何でしたか。
まさしく岩橋さんからのお電話でした。
今でもよく覚えているのですけど「一度、宇宙ビジネスを諦めるのですか」の一言が背中を押してくれたと思います。
初めは、汎用性の高い別のキャリアを歩もうと気持ちが揺らいでいました。また、それは宇宙ビジネスへの遠回りになるのではないかという懸念材料でもあり、不安が募っていたんです。
そんなとき、岩橋さんが自分が遠回りをすることに対して「内心ではその道へ進むことを、肯定していないのではないでしょうか」と問いかけてくれました。
岩橋さんの言葉に「痛いところを突かれた」気がしていて、最終的には「直球勝負でチャレンジ」する決心がついたという感じです。
オファー回答期日前日は、まさに安定を選ぶか、チャレンジをするかの分岐点だったと思います。
–最終的には安定を選ばずにチャレンジを決意されたのですね。
おかげさまで、チャレンジを選ぶことができました。
–私はエンジニア領域の支援が専門で、デザイナー職に関しては強みのある領域ではありませんでした。しかし、山下様から「最終的に背中を押してくれた」と言っていただいたことに、非常に感謝しております。
岩橋さんの支援は情に厚く、それが転職活動中非常に有難かったです。
アサイン様以外にも総合ファームを得意とする別のエージェントを利用していた時期があったのですが、非常にロジカルで如何にもお仕事ができるコンサルタントのような方でした。
企業の情報もたくさん提供いただきフォローアップもしてくれてロジカルにサポートしてくださったんです。
一方、岩橋さんの場合は、もちろん情報提供という側面でも手厚くサポートいただいたのですが、それ以上に最終的なゴールである「宇宙ビジネス」への助言やパーソナルな部分までもフォローいただいた印象を受けます。
それが最終的に宇宙ビジネスへの転職を決意するきっかけとなったので、ありがたかったなと感じます。
–ありがとうございます。転職活動を通して改めて「自分自身の価値」に気づくことはありましたか。
そうですね、たくさんありました。
最後の一押しで「どうする」という話をしたときに、ちょっと記憶と違っていたら申し訳ないのですが、岩橋さんから「山下様は負けず嫌いですよね」みたいなお話しをされた記憶があります。
「負けず嫌いな性格であれば、逆境でもきっと乗り越えられますよ」と言ってもらえて「言われてみればそうかも!」と気づくことができましたね。
未開拓な業界への挑戦。宇宙×デザインのチャレンジ
–次に現職DigitalBlastでのご活躍についておうかがいできればと思います。現在は、どのような業務をされていますか。
大きく分けると「宇宙ビジネス事業者に対してのデザイン」「宇宙関連の機器開発」という2点です。
前者については非常にやりたかったことですし、ニーズがあるか不明だったものの、存外お客様がついてくださって、心からよかったなと思います。
また後者については、「植物プラットフォーム」実験装置の設計全般を担当させていただいております。
ちょうど先週ぐらいにプロトタイプが完成したのですが、設計図面を書いたり、製造業者に行って金属加工の処理を一緒にやったり、あとは配線を1個ずつはんだ付けしたりなどさまざまな業務を担当しています。
–現職の業務内容はヤマハ発動機でのご経験と親和性はあったと思いますが率直に言っていかがでしたか。
そうですね、遠からずも近からずという状況ですかね。
話は脱線してしまいますけど、もとから機械いじりやものづくりが好きでしたので、おそらく金属加工など経験したことがない業務でも応用がきくという素養はあるかと思います。
また、工業デザインというものは、設計と外観両方を考える仕事ですので、具体的な強度計算は専門家のようには出来なくとも、「人工重力下で植物栽培をする宇宙ステーション搭載機器」という要件から、機器の構成や材質選定などおおまかな部分は一人で構想から製図まで実行できました。
話が長くなってしまいましたが、私自身の素養と前職での経験を活かして、業務に取り組んでいる状況です。
–植物実験プラットフォーム以外にも宇宙関連のデザインもされていますが具体的にどのような内容なのでしょうか。
現段階では、宇宙関連ベンチャーのWebデザインであったりとか、人工衛星を運用されているスタートアップ企業のビジネスアイデアをグラフィックで示したりなどです。
あとは、企業ブランディングの一環でPRイベントとして盛り上げたいとなったときのロゴ周りの企画やブランドストーリーを監修することもあります。
もちろん大変なことはたくさんあるのですが、それ以上にモチベーションが高く、やりがいを感じています。
これまでユーザーニーズが顕在化しておらず、誰も踏み出していない宇宙業界に対するデザインはあらゆることが初めての事例になりますし、やりがいは大きいですね。
私自身CCO(最高クリエイティブ責任者)という役職をいただいていて、社長直下で完全に別枠で動いており、いわゆるツリー体制から外れたところで業務をさせていただいていますが、裁量の大きさもモチベーションになりますね。
今後の展望。宇宙デザインの先駆者として
–山下様の今後のビジョンについてもお話をお伺いできればと思います。
そうですね、もちろん今やろうとしている宇宙デザイン事業のこと、そして「植物プラットフォーム」などの宇宙実験装置の開発、この2つはしっかり続けていきたいと思います。
デザインの力でイノベーションを加速させ、宇宙産業全体をさらに盛り上げたいですね。
学問としてのデザインにおいても、宇宙というトピックは全く新しい領域になると思うので、きちんと知見を蓄積したり研究することで貢献していきたいと思います。
–転職活動をサポートさせていただいているときと将来像が同じ部分もあり、アップデートされている部分もあるかと思うのですが、改めて10年、20年後の宇宙ビジネスが確立した後はどのような未来を想像しますか。
おそらく、また今とは異なるやりたいことがあったり、次の目標が見つかったりする可能性はありますが、やっぱり自分がデザインした宇宙船に乗って宇宙に行くという目標を実現したいなとは思います。
すでに自分でデザインした乗り物に乗って旅をするという目標は実現できたので、次はそれを宇宙でやりたいなと考えています。
ちょっと夢物語みたいな感じですけどね。絶対実現したいです。
–今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました。益々ご活躍されているご様子をおうかがいでき大変嬉しかったです。今後もよろしくお願いいたします。
ASSIGN
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