SaaS企業へ転職したい人必見│職種や代表的な企業、成功のコツを紹介
SaaS(Software as a Service)業界は、近年のDX推進や働き方の多様化を背景に、急速な成長を続けています。市場価値の高いキャリアを形成したいと考える20代〜30代のビジネスパーソンにとって、SaaS企業への転職は非常に魅力的な選択肢です。
本記事では、SaaS業界への転職を検討している方に向けて、業界特有の「The Model」と呼ばれる営業手法、未経験から転職するための具体的な戦略、そしてキャリアパスについて詳しく解説します。
なぜ今、SaaS業界への転職が注目されるのか

SaaS企業への転職が注目されている主な理由は、圧倒的な市場の成長性と、それに伴ってキャリア機会が広がっていることにあります。
国内SaaS市場の拡大と将来性
SaaS市場は現在、単なる拡大期を終え、質的な「変革」のフェーズへと突入しています。 2024年末、Microsoftのサティア・ナデラCEOによる発言を機に「SaaS is Dead(SaaSは終わった)」という議論が巻き起こりましたが、これはSaaSモデルの終焉を意味するものではありません。
むしろ、AIとの統合や業界特化型へのシフトという、新たな価値創造の形態への「進化」を示唆しています。
Grand View Researchの調査によると、世界のSaaS市場は2024年の約3,991億ドルから、2030年には約8,192億ドルへと年平均成長率(CAGR)12.0%での成長が予測されています。市場全体のパイは依然として拡大傾向にありますが、その中身は大きく変化しています。
国内市場においては、以下の2つのトレンドが顕著です。
「AI × SaaS」の実装と選別
かつてのような「テレワークに対応したサービス」だけでは差別化が難しくなり、生成AIを活用していかに顧客の本質的な業務課題を解決できるかが問われています。これにより市場は二極化し、真に不可欠なプロダクトのみが生き残る選別が進んでいます。
Vertical SaaS(業界特化型)の台頭
全業界向けのツール(Horizontal SaaS)だけでなく、医療・建設・物流など特定の業界課題に特化した「Vertical SaaS」が急成長しています。これらの領域では、単なるソフト提供にとどまらず、金融機能の統合(Fintech)などプラットフォーム化が進んでいます。
これからのキャリア戦略においては、単に「伸びているSaaS業界」に身を置くだけでなく、「AI時代に適応し、進化し続けるSaaS企業はどこか」を見極める視点が、自身の市場価値を高めるための鍵となります。
新規事業・採用の活発化
市場の成長に伴い、各社は新規事業の立ち上げや組織拡大に積極的です。
外資系企業の日本進出だけでなく、国内スタートアップの台頭、さらには大手企業のSaaS事業参入など、求人の選択肢は非常に豊富です。業界自体の歴史がまだ浅いため、業界経験者だけでなく、ポテンシャルを持った未経験者を積極的に採用する企業が多いのも特徴です。
SaaS業界の「The Model」とは
SaaS企業への転職を考える上で避けて通れないのが、「The Model」という営業プロセスです。
これは、Salesforce社が提唱した分業型の営業モデルであり、多くのSaaS企業がこの体制を採用しています。
従来の営業は、1人の担当者が「集客」から「受注」「アフターフォロー」まで全てを行うのが一般的でした。しかしSaaS業界では、プロセスごとに専門の部署を設け、データを連携しながら効率的に成果を最大化します。
1. マーケティング(Marketing)
見込み顧客・リードを獲得する役割です。Web広告、コンテンツSEO、ウェビナーなどのイベント開催などを通じて、自社サービスに興味を持つ層を集客します。
2. インサイドセールス(IS)
マーケティングが獲得したリードに対し、電話やメール、オンライン会議ツールを用いてアプローチします。顧客の課題をヒアリングし、購買意欲が高まった段階でフィールドセールスに商談をトスアップします。単なるアポ取りではなく、リードナーチャリングが重要なミッションです。
3. フィールドセールス(FS)
インサイドセールスから引き継いだ確度の高い顧客に対し、商談を行います。具体的な課題解決策を提案し、成約するのが役割です。
4. カスタマーサクセス(CS)
SaaSビジネスの要となる部門です。契約後の顧客に対してオンボーディング(導入支援)を行い、サービスの活用を促進します。
SaaSはサブスクリプションモデルであるため、解約(チャーン)を防ぎ、継続利用してもらうことが利益直結します。顧客の成功を支援し、アップセル(上位プランへの切り替え)やクロスセル(別商材の並行購入)も提案していきます。
サブスクリプションモデルのため、使い続けてもらうことがかなり大切になります。そのため、カスタマーサクセス(CS)のKPIは継続率を追うのが特徴です。
業界未経験からSaaSへ転職するには?
「業界未経験でも転職できるのか?」という疑問を持つ方も多いですが、結論から言えば十分に可能です。特に以下のような経験・スキルがあれば、有利に選考を進められます。
法人営業(BtoB)経験は最大の武器になる
SaaS業界の営業(フィールドセールスやインサイドセールス)は、toB向けに営業をしていくため、法人向け商材を営業してきた法人営業経験は武器になります。
法人営業経験がなぜ必要なのかという理由は下記の2点に集約されます。
- 企業の決裁フローを理解している
- 顧客の潜在的な課題をヒアリングできる
これらの要素はSaaS営業でもそのまま活かせるため、即戦力候補として見なされます。
特に、金融・人材・広告など、無形商材の法人営業経験者は親和性が高いです。
業界知識(ドメイン知識)を活かす
SaaSは、特定の業界の課題を解決するツールが多く存在します。
例えば:
- HR Tech(人事労務):人材業界や人事の実務経験が活きる
- Fin Tech(金融・会計):銀行・証券や経理の実務経験が活きる
- Vertical SaaS(特化型):建設、物流、医療など、その業界の現場を知っていることが強みになる
エンジニアリングの知識がなくても、「顧客の業務フローや悩み」を深く理解していることは、開発者にはない強力なアドバンテージとなります。
下記求人例に掲載した、株式会社SmartHRの求人がまさにその例で、HRTechのSaaSプロダクトを扱う企業では、HRの商材に関わってきた経験がある人が歓迎されます。自身のスキルを棚卸して、転職後も活かせるスキルをアピールすることが重要です。
求人例
ここでは、SaaS業界で実際に募集されている求人の一例をご紹介します。
【企業名】株式会社ラクス
【ポジション名】フィールドセールス
【想定年収】530万円-624万円
【業務内容】
■提案営業
インサイドセールスやパートナーセールスから獲得したアポイントに対し、Web商談や訪問による提案を行います。顧客の抱える課題を深くヒアリングし、自社開発のクラウドシステム(楽楽請求)を活用した解決策を提案し、商談を進め、受注までをフォローします。
■顧客の声のフィードバック
顧客から得た要望や課題を、製品開発や企画部門にフィードバックし、プロダクトの改善に貢献します。
■パートナー推進
パートナー企業に対して製品知識の共有や販売力向上支援などを通して、強固な信頼関係を築き、双方の目標達成に向けた施策を共に立案し、実行することで、ビジネスを大きく推進します。
【必須要件】
・4年制大学卒業以上
・法人営業経験2年以上
【企業名】株式会社SmartHR
【ポジション名】インサイドセールス
【想定年収】467万円-700万円
【業務内容】
SmartHRのインサイドセールスは、マーケティングが獲得してきた顧客リードに対して、課題のヒアリングや、改善した方が良いポイントの啓蒙などを行い、商談を創出するポジションです。
SMB企業(従業員数51~500名)を主な対象とし、規模や業態、立場も様々なお客さまとのコミュニケーションの中で、企業が抱える課題を見つけるだけでなく、他企業の成功事例、法改正といった人事労務のトレンドなどを発信する役割も担います。
【必須要件】
・SmartHR のミッション、バリューへの共感
・新規の法人営業経験3年以上(無形商材)もしくは以下のいずれかのご経験をお持ちの方
- インサイドセールスのご経験1年以上
- 営業組織でのマネジメント経験1年以上
【歓迎要件】
・HRやSaaS商材の提案経験
・社内プロジェクトの推進経験
・Salesforceの利用経験
国内の代表的なSaaS企業
国内には数多くのSaaS企業が存在しますが、ここでは市場を牽引する代表的な3社を紹介します。各社とも独自のプロダクトで企業のDXを推進しています。
Sansan株式会社

「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げる、国内SaaSのパイオニア的存在です。
- 主なプロダクト:営業DXサービス「Sansan」
単なる名刺管理ツールにとどまらず、企業データベースと連携して組織的な営業活動を支援するプラットフォームへと進化しています。名刺情報をデータ化し、社内の人脈を可視化することで、営業チャンスの最大化に貢献します。 - その他のプロダクト: インボイス管理サービス「Bill One」など
株式会社ラクス

「IT技術で中小企業を強くする」をテーマに、業務効率化に直結するクラウドサービスを多数展開しています。高い収益性と安定した成長率が特徴です。
- 主なプロダクト:経費精算システム「楽楽精算」
交通費や経費精算の申請・承認フローをデジタル化し、経理業務の手間を大幅に削減します。TVCMでも知名度が高く、導入社数は国内トップクラスを誇ります。 - その他のプロダクト: メール共有システム「メールディーラー」、電子請求書発行システム「楽楽明細」など
フリー株式会社

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに、バックオフィス業務を統合的に支援するプラットフォームを提供しています。
- 主なプロダクト:クラウド会計ソフト「freee会計」
帳簿付けから決算書作成までを自動化するシステムです。銀行口座やクレジットカードとの連携により、手入力の手間を省き、リアルタイムな経営状況の可視化を実現します。 - その他のプロダクト: 人事労務ソフト「freee人事労務」、会社設立支援「freee会社設立」など
SaaS業界でのキャリアパス
SaaS業界でのキャリアパスを社内キャリアパスと社外キャリアパスに分けて解説します。
社内キャリアパス
それぞれのキャリアパスで「縦のキャリアパス」と「横のキャリアパス」の2種類が明確に存在します。
縦のキャリア:レイヤーを上げる(昇進)
同じ職種(例:セールス)の中で、責任範囲を広げていく王道ルートです。
メンバー:まずは個人の数字(KPI)達成にコミットするプレイヤー。
リーダー / プレイングマネージャー:自身の数字を持ちつつ、3〜5名のチームメンバーの育成・進捗管理を行う。
マネージャー / 部長:ピープルマネジメントに専念し、チーム全体の目標達成(予実管理)や採用責任を持つ。
事業責任者:事業部全体の売上責任を負い、経営層と対話しながら営業戦略を策定する。
横のキャリア:職種を変える
SaaSは全部署が連携しているため、他部署の知見が強力な武器になります。特にセールス出身者は顧客解像度が高いため、多方面で重宝されます。
セールス → マーケティング:「顧客が何に響くか」を知っているため、リード獲得(Lead Generation)の質を高める施策が打てる。
IS・FS → カスタマーサクセス(CS):「売って終わり」ではなく、顧客の成功に伴走したい志向の人向け。深耕営業やアップセルが得意な人に適正。
セールス → セールスイネーブルメント:「売れる仕組み」を作る専門職。自身の営業ナレッジを形式化し、組織全体の営業力底上げを行う教育・企画担当。
セールス → PMM(プロダクトマーケティングマネージャー):開発とビジネスの橋渡し役。「顧客の声」を開発にフィードバックし、プロダクトの改善や新機能の市場投入戦略を担う。
【事例】Sansan株式会社の社内キャリアパス
(参照:Sansan中途採用サイト「CHRO Message」より)
こちらの事例は、Sansan株式会社のキャリア形成に関することが書かれたHPです。CHROのメッセージによると、Sansan株式会社には下記の特徴があります。
「決められたキャリアパス」は存在しない
会社が用意したレールに乗るのではなく、社員一人ひとりが「意思と意図」を持って、自分で方向性を定めていくことが求められます。「自分は何を実現したいのか」という強い想い(Will)がキャリアの起点となります。
「Jump!」制度
想いを実現するための仕組みとして、年に2回、部署異動を希望できる社内公募制度「Jump!」があります。
実際の異動事例:
トップセールスだったビジネス職の社員が、プロダクトマネージャー(PdM)に立候補してキャリアチェンジを実現。
求められるスタンス
「上司に言われたから」ではなく、自分の意志で道を切り拓く人が評価されます。営業で培った顧客視点を開発に活かすなど、**「職種を越境して価値を出す」**ことが推奨される文化です。
社外キャリアパス
最も一般的に、即戦力として歓迎されるのが、別のSaaS企業への転職です。
① SaaS to SaaSで転職
SaaS企業は成長フェーズによって求められる人材が異なります。これを意図的にずらすことで、キャリアアップを実現します。
大手 → スタートアップ:
大手(SalesforceやSansan、ラクスなど)で培った「ナレッジ」や「マネジメント経験」を武器に、これから組織を作るフェーズの企業へ「マネージャー」や「事業責任者」「CxO候補」として転職するパターン。
スタートアップ → 大手・メガベンチャー:
カオスな環境で「0→1」をやりきった馬力を評価され、整った環境での「年収アップ」や「ワークライフバランス」を求めて転職するパターン。
Horizontal SaaS(業務特化) ⇄ Vertical SaaS(業界特化):
- (例)「経費精算システム」の営業から、「建設業界向け管理アプリ」へ
- 汎用的なツールから、特定の業界に深く入り込むプロダクトへ移ることで、「業界専門性」という新たな武器を手に入れることができます。
②人材業界(RA/CA)へ転職
SaaSも人材も、無形商材を取り扱うビジネスのため、SaaSで培った「ヒアリング能力」や「営業の提案力」が活かしやすく、業務親和性が高いです。
その中でもSaaS業界から人材業界に転職する人は、
- 「もっと目の前の人のために働きたい」
- 「人のキャリアに関わっていきたい」
などと人に関わっていきたいと感じている方が人材業界、特に人材紹介業界に携わっています。
SaaS業界への転職には選考対策が重要

SaaS業界への転職を成功させる鍵は、徹底的に選考対策をするかどうかで分かれます。
内定獲得のためには、単に実績を並べるのではなく、下記3つのポイントを意識すると良いでしょう。
- 環境が変わっても成果を出せる「再現性」をプロセスと共に伝えること
- 新卒就活の軸、転職理由と志望動機をつなぐキャリアの「一貫性」を持たせること
- 顧客層や営業スタイルなど、前職との共通点を見つけて経験の「親和性」をアピールすること
「企業が求める人物像」に自分の経験スキル、強みがマッチしていることを伝え、即戦力としてのポテンシャルをアピールすることが、SaaS転職を成功させるのに重要です。
対策に不安がある方は、エージェントに相談することもおすすめです。一人で進めるには時間と労力がかかりますが、エージェントを利用することで負担を軽減することができます。下記よりご相談を受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
ASSIGN
アサインはビズリーチの最高ランク受賞等、確かな実績を持つエージェントと、若手ハイエンド向け転職サイト『ASSIGN』であなたのキャリアを支援しています。 コンサルティング業界専門のキャリア支援から始まり、現在ではハイエンド層の営業職・企画職・管理職など幅広い支援を行っています。 ご経験と価値観をお伺いし、目指す姿から逆算したキャリア戦略をご提案し、ご納得いただいた上で案件をご紹介するのが、弊社のキャリア支援の特徴です。