OB・OG訪問の手引き~有意義な時間にする実践編~

OB・OG訪問は、探す・依頼する・準備する・当日・お礼の5工程で進みます。成果を分けるのは当日の受け答えではなく、その前の準備です。
①相手を探す
相手を探す経路は4つあります。
| 経路 | 特徴 |
|---|---|
| 大学のキャリアセンター | 卒業生の進路のデータベースから紹介を受ける |
| 大学の先輩やゼミ・部活のつながり | 話が早く、踏み込んだ質問がしやすい |
| 学生と卒業生をつなぐ紹介サービス | つながりのない業界にも届く |
| 説明会やインターンで会った社員 | 直接依頼できる。選考の記録に残る場合がある |
経路の選び方は、志望の絞り具合で決めます。業界を広く見る段階なら、紹介サービスで人数を確保するのが早いです。
志望が固まっている会社は、キャリアセンター経由を優先しましょう。同じ大学の卒業生は、選考の実情まで踏み込んで話してくれる場合が多くあります。
社員への直接依頼だけは、扱いが違います。会社側から見れば選考の場に近いため、聞き方も態度も見られていると考えましょう。志望度が高い会社で、他の経路が使えないときの手段です。
複数の経路を同時に使って構いません。ただし、同じ会社へ2人以上に依頼するときは、紹介者と部署が重ならないかを先に確かめます。社内で依頼が重なると、相手の負担になります。
依頼の状況は1か所で管理しましょう。誰にいつ送り、どこからの返信を待っているのかが分からなくなると、催促と重複の両方を招きかねません。
②依頼のメールを送る
相手が見つかったら送るメールは、本文の構成が決まっています。
| 要素 | 書く内容 |
|---|---|
| 件名 | 用件と大学名・氏名(例=OB・OG訪問のお願い/○○大学 山田太郎) |
| 冒頭 | 突然の連絡である旨と、自分の所属・学年・氏名 |
| 経路 | 誰の紹介か、どの経路で連絡先を知ったか |
| 用件 | 志望している業界と会社、話を伺いたい理由 |
| 日程 | 候補日を3つ以上、相手が選べる形で提示する |
| 締め | 相手の都合を優先する一文と、署名(大学・学部・氏名・連絡先) |
長く書く必要はありません。読む側は業務の合間に判断するので、用件と日程が一目で分かる形が通ります。
日程は必ず自分から出してください。「ご都合のよい日をお教えください」だけでは、予定を組む手間が全部相手に残ります。
承諾の返信が来たら24時間以内に返し、そのとき当日聞きたいことの概要も添えましょう。相手が答えを用意できるので、当日の中身が濃くなります。
| 承諾後の返信に入れる要素 | 書く内容 |
|---|---|
| 冒頭 | 承諾への礼と、確定した日時の復唱 |
| 質問 | 当日伺いたいことを1問1行で5行 |
| 締め | 当日の連絡先と、変更が出たときの連絡方法 |
③事前準備の進め方
準備は3点だけです。
- 相手の経歴を調べる(いまの部署と、これまでの職種の移り方)
- 会社の資料を読む(事業の内容、直近の決算資料、中期経営計画の要点)
- 質問を5つに絞って前日までに送る(当日その場で増やしてもよい)
経歴を調べておくのは、質問を外さないためです。営業の人に開発の判断基準を聞いても、答えは推測になります。
資料読みを飛ばすのが、最も損な手抜きです。調べれば分かることを聞いた時点で、その先の深い話は返ってきません。質問は5つで足ります。30分から1時間で聞ける数は、深掘りを含めると5つが上限に近いです。
送るときの形は箇条書きにします。文章で長く書くと、相手が読む段階で時間を使ってしまうためです。1問1行、5行で送り、当日の順番もその並びに合わせます。
深い答えが返ってくる聞き方
同じ論点でも、聞き方で返ってくる中身が変わります。
「1日のスケジュールを教えてください」は、会社説明の資料にも載っている内容です。「1日のうち、自分で判断して動かせる時間はどれくらいですか」まで絞ると、その人の実感がないと答えられません。
もう1組あります。「仕事のやりがいは何ですか」と直接聞くと、きれいな答えが返ってきやすいところです。「直近1年で、手応えがあった仕事としんどかった仕事はどれですか」と両方を並べれば、仕事の実際の幅が見えます。
質問を作るときの型は1つです。聞きたい抽象的なこと(成長、裁量、風土)を、その人の行動や時間の使い方に置き換える。置き換えられない質問は、まだ自分の中で論点が固まっていない証拠です。
深い例の共通点は、答えるために具体的な記憶を呼び出す形になっていることです。記憶を呼び出す質問は、その人しか答えられません。
用意する5つのうち、少なくとも2つはこの形にしましょう。残りの3つは、資料で分からなかった事実の確認に充てます。
④当日の進め方
当日は、時間の使い方を先に決めておくのが要点です。
開始前は、オンラインなら5分前に入室して表示名を「大学名 氏名」にし、対面なら10分前に到着します。
冒頭で名乗りと感謝を伝え、聞きたいことを先に1文で共有しておきましょう。
中盤は用意した5つを順に聞き、答えのうち気になった点だけ深掘りします。終盤の残り5分は、判断に必要な確認を1つだけ入れる時間です。
案内に服装の指定があればそれが最優先で、指定がなければリクルートスーツを基本にします。相手から脱いでよいと言われるまで、上着は着たままにしておきましょう。
メモは紙を使います。入力する音は相手の話を止めるので、オンラインでも紙のほうが無難です。
深掘りは、答えを言い換えて確認する形が一番安全です。「つまり配属は希望より事業の状況で決まる、ということですか」と返せば、話が具体に進みます。
費用は相手が持つ場合が多くありますが、現金を用意しておきましょう。決済の手段が限られる店もあり、支払う姿勢だけは見せる形になります。
時間が延びたときは、こちらから切り上げます。予定の時間に近づいたら、「お時間は大丈夫でしょうか」と一度確認する。相手の業務を押し出す形になると、次の依頼が届かなくなります。
⑤お礼と記録を残す
終わったら当日中に、3行で足りるお礼のメールを送ります。
- 時間をもらった感謝
- 印象に残った話を1つ、具体的に引用する
- 話を受けて自分が何を考えたか
引用を具体的に書けるかどうかが、形だけのお礼との差になります。聞いた事実と自分の行動をつなげて書きます。「配属は事業の状況で決まると伺い、部署ごとの違いを調べ直しました」のように書く。
「勉強になりました」だけでは、誰に送っても同じ文になります。同じ日に、記録も残しておきましょう。
記録は当日中に終えます。1週間経つと、話の細部と自分が感じたことが混ざって思い出せません。当日なら、判断の1行を足すだけで済みます。
次の接点は、こちらから作らないほうが自然です。相手から選考の案内や紹介の申し出があれば受け、なければ礼を尽くして終える。進捗の報告を何度も送るのは、相手の負担になります。
訪問でつまずく3つの場面
1つ目は記録の取り方です。相手の答えを全部書き写しても、次の会社と比べるときには使えません。最後に「異動の周期は自分の条件に合わない」と1行足してあれば、そのまま比較の基準になります。
差が出るのは記録した量ではありません。訪問の直後に、合う・合わないのどちらかを書けているかどうかです。
2つ目は、依頼の段階で止まることです。返信が来ないまま次を探さず、1人の返事を2週間待つ人がいます。
返事がないのは断りの意味ではなく、業務で埋まっているだけの場合が多くあります。1週間で返信がなければ、別の相手に並行して依頼しましょう。
3つ目は、当日の深掘りを遠慮することです。用意した5つを消化することが目的になると、答えの中の気になった点を流してしまいます。聞き返す一言を、1回は必ず入れます。
OB・OG訪問の準備の始め方
OB・OG訪問の成果を分けるのは、会う前の準備です。探す・依頼する・準備する・当日・お礼のうち、差が出るのは準備の質です。
「その質問は、その人にしか答えられないものですか」と聞かれたら、どうでしょうか。誰でも答えられる問いなら、調べれば済む話を聞くことになります。
手元にある質問を1つ取り、その人の行動や時間の使い方を尋ねる形に直してみてください。それだけで、返ってくる答えの深さは変わるはずです。
そもそも訪問をやるかどうかで迷っているなら、判断の材料はOB・OG訪問の概要編にあります。
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