SIer業界研究~AIの可能性と今後の業界動向~

生成AIによって、SIerの仕事の進め方そのものが変わり始めました。その変化を入り口に、業界の構造と各社の違い、キャリアの実像まで順に見ていきます。
SIerのビジネスモデル
SIerは、企業のシステムを設計し、作り、動かし続ける会社です。銀行の勘定系、保険の契約管理、製造業の生産管理。社会を支える仕組みの大半は、SIerが手がけています。
稼ぎ方の基本は、人が動いた時間に値段が付く構造です。エンジニア1人が1か月働くといくら、という単価を積み上げて請求します。人月と呼ばれるこの考え方が、業界の常識でした。
収益は3つに分かれます。新しくシステムを作る受託開発、既存の仕組みを刷新する構築案件、そして動き続けるシステムを守る保守運用です。保守運用は地味ですが、長期にわたって安定した収益をもたらします。
構造として押さえておきたいのが、多重下請けです。元請けが案件を取り、二次請け、三次請けへと工程が流れていく。どの階層に位置する会社かで、担当する工程も利益率も変わります。
上流に位置する会社ほど、顧客と直接向き合い、何を作るかを決める段階から関わることができます。就活で「元請け」「プライム」という言葉を見かけたら、この構造のどこに立つ会社かを示す目印だと考えてください。
同じ「SIerに入る」でも、どの階層かで日々の仕事はまるで違うものになります。企業研究では、社名の知名度より立ち位置を先に確かめたいところです。
「文系でもITの仕事に就ける会社」という理解だけでは足りません。誰の課題を、どの階層で解くかによって、キャリアの中身がまったく変わる業界です。
では、その業界にいま何が起きているのでしょうか。
生成AIが変える開発の前提
コードを書く作業は、生成AIが最も得意とする領域の1つです。この事実が、人月で稼いできた業界の前提を揺らしています。
先頭を走るのがNTTデータです。2025年度に500件規模の案件で生成AIを使い、生産性を20%高めたと公表しました。同社は開発の全工程へAIを広げる方針を掲げています。
TISも生産性を大きく引き上げる目標を置き、一部の工程では納期と工数を半減させた事例を公表しました。
AIそのものを売る動きも始まっています。NTTデータは2025年4月にOpenAIと戦略提携を結び、専門の組織を新設しました。
ここで生まれるのが「SIerの仕事はAIに奪われるのか」という問いです。押さえておきたい見方は3つあります。
| 見方 | 中身 |
|---|---|
| 下流から効率化が進む | コーディングやテストなど、正解を定めやすい工程ほどAIの支援が有効な領域です。ただし品質の最終責任は人が負うため、検証の役割は残ります |
| 上流の価値は上がる | 顧客の課題を聞き出し、何を作るべきかを決める工程では、むしろ人の重みが増しました |
| 人手不足は解消しない | 経済産業省の試算では、2030年時点で最大79万人のIT人材が不足するとされています |
仕事が消えるのではなく、担う工程が上へ移る。この変化を自分の言葉で語れるかどうかが、選考での差になります。
主要プレイヤーの比較
| 社名/売上高 | 特徴 |
|---|---|
| NTTデータグループ 5兆46億円 | 国内最大手。OpenAIと提携しAI開発を主導 |
| NRI 8,147億円 | 金融に強い独立系。コンサル機能を併せ持つ |
| CTC 7,937億円 | 伊藤忠系。収益性の高さが際立つ |
| SCSK 7,803億円 | 住友商事系。グループ再編で規模を拡大 |
| TIS 5,965億円 | 独立系。インテックとの合併で体制を強化 |
| 日鉄ソリューションズ 3,813億円 | 日本製鉄系。製造業の知見が強み |
(2026年3月期の連結売上高、NTTデータグループのみ持株会社ベース)
SIerは親会社との関係で見ると分かりやすくなります。NTTデータや日鉄ソリューションズのように大企業グループの一員である会社、SCSKやCTCのように商社を親会社に持つ会社、NRIやTISのように特定の親会社を持たない独立系です。
この違いは主戦場に表れます。グループ企業の案件が土台にある会社もあれば、すべての顧客を自力で開拓する会社もある。入社後に触れる仕事の幅に直結する要素です。
ここまでが会社ごとの立ち位置で、次は入社後に就く職種を見ていきます。
主な職種と仕事内容
SIerの仕事は、大きく4つに分かれます。
システムエンジニア
顧客の要望を聞き、システムの仕様を決め、開発を進める中心的な職種です。担当する工程は幅広く、要件定義から設計、テスト、稼働後の運用までを見渡します。
新卒はまず下流の工程から入り、数年かけて上流を任されるのが一般的です。伊藤忠テクノソリューションズのように、研修後3年をかけて一人前へ育てる仕組みを持つ会社もあります。
コンサルタント
システムを作る前段階、つまり「そもそも何を解決すべきか」を顧客と一緒に考える職種です。NRIのようにコンサル機能を持つ会社では、この領域が事業の柱になっています。
営業
顧客を開拓し、案件を獲得する役割です。扱う金額が数億円規模になることも珍しくなく、技術の理解と交渉力の両方が問われます。
インフラエンジニア
サーバーやネットワーク、クラウド環境を設計し、システムが止まらない状態を保ちます。クラウド移行が進むなかで、担う領域が広がっている職種です。
どの職種でも扱うのは社会の基盤で、自分が関わったシステムは数十年動き続けます。その責任の重さが、この仕事の手応えになっています。
派手さはありません。それでも、止まれば社会が困る仕組みを預かる緊張感を、誇りに変えられる人には向いた仕事です。
キャリアパスと働き方
処遇は業界の中でも高い水準にあります。2026年度の初任給は各社30万円台が中心で、NRIは33万6,500円と公表しています(各社採用サイト)。
平均年収も高く、NRIが1,322万円、NTTデータグループが923万円と公表されています(各社有価証券報告書)。ただし持株会社と事業会社では対象となる社員が違うため、単純な優劣として読まないでください。
働き方の柔軟性も進みました。リモートワークを前提にした制度を整える会社が増え、場所を選ばない働き方が定着しつつあります。
社外への出口としては、事業会社の情報システム部門、コンサルティングファーム、Web系企業が挙がります。大規模プロジェクトを動かした経験と、特定業界の業務知識が評価されやすい資産です。
ただし評価されるのは「何年いたか」ではなく「どの工程で、どんな判断をしたか」です。下流の作業だけを続けると市場価値が伸びにくい点は、正直に知っておくべきでしょう。
向いている人と選考の視点
選考で伸び悩む人には共通点があります。志望動機が「ITで社会を支えたい」で止まっていることです。
この動機は、通信会社にもWeb系企業にも当てはまります。面接で「それなら他のIT企業でもいいですよね」と返されると、そこで答えに詰まります。
差がつくのは、AIの時代にSIerが担う役割を語れるかどうかです。「コードを書く工程がAIに移るからこそ、顧客の課題を定義する仕事に価値が集まる」と言えれば、業界研究の深さが伝わります。
職種ごとの向き不向きは次の通りです。
| 職種 | 向いている人 |
|---|---|
| システムエンジニア | 技術を学び続けられる人。相手の言葉を仕様に翻訳することが得意な人 |
| コンサルタント | 正解のない問いに向き合える人。事業の全体像から考えられる人 |
| 営業 | 技術者と顧客の間に立ち、双方の言葉を通訳できる人 |
| インフラエンジニア | 見えないところで支える仕事に誇りを持てる人 |
どの職種でも、成果が出るまでに時間がかかります。数年がかりのプロジェクトを走り切る粘り強さが、長く活躍できる人との分かれ目になります。
SIer研究の始め方
SIerを調べるときに見ておきたいのは、その会社が生成AIをどう使い、何を売ろうとしているかです。ここまで見えると、志望動機の輪郭がはっきりします。
気になる1社を選び、公式サイトのニュースリリースでAI関連の発表を開く。「どの工程に、どんな技術を入れたか」を3行でメモする。今日の作業はここまでで足ります。
それだけで、志望動機の解像度は上がるはずです。
SIerとWeb系のどちらが自分に合うか迷ったら、ASSIGNのエージェントに相談する手もあります。
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