採用目線を押さえる。経理経験者の見られるポイントとは
はじめに
経理経験者の転職市場は、ここ数年で大きく変化している。新型コロナウイルス感染症の影響により、若手の採用に消極的な企業が増加する一方で、即戦力採用に期待をよせる企業も多く、優秀な経理人材の獲得競争は激化している。大手企業でさえも、経理人材の採用に苦戦しているのが現状である。
加えて、IFRS導入やDX化に伴う業務など、経理に求められるスキルも多様化しており、採用難易度はさらに高まっている。このような状況下で、企業側は30代以降の経験豊富な人材に注目し始めている。組織ピラミッドの歪みを整えるためにも、ベテラン人材の採用に力を入れる企業が増えてきたのである。
しかし、企業側の採用マインドにも変化が見られる。自社の強みや魅力を理解したうえで、将来性のあるポテンシャル人材の採用に踏み切る企業が増えてきているのだ。つまり、若手経理マンにとっては、転職市場に追い風が吹き始めていると言えるだろう。
企業が求める経理経験者像
経理経験の積み重ねと業務理解度
経理は積み上げ式のキャリアと言われており、どのような組織でどのような業務を何年担当してきたかが重要視される。特に、月次決算の取りまとめや年次決算補助業務ができるかどうかが、経験者として求められる最低ラインとなる。また、経理部門全体の仕事と自身が担当する業務の流れを理解できているかも重要なポイントである。
資格取得の重要性
実務経験が重視される傾向にあるが、日商簿記2級以上の取得が望ましいとされている。資格取得は、経理業務に必要な知識を有していることを示す指標の一つとなるのである。
上場企業と非上場企業での経験の違い
上場企業での経理経験
上場企業では、金融商品取引法に基づいた経理業務が求められる。具体的には、四半期報告書や有価証券報告書などの開示書類の作成、連結決算業務、内部統制の整備・運用などが挙げられる。また、株主や投資家に対する説明責任を果たすために、IR(インベスター・リレーションズ)業務にも関わることがある。上場企業での経理経験者は、これらの業務を通じて、高度な会計知識と開示業務のスキルを身につけることができる。
非上場企業での経理経験
一方、非上場企業や中小企業では、会社法に基づいた経理業務が中心となる。具体的には、月次決算や年次決算の取りまとめ、税務申告書の作成、資金繰り管理などが挙げられる。非上場企業では、上場企業ほど厳格な開示義務はないものの、経営者や株主に対する説明責任は重要である。また、限られた人員で経理業務を行うことが多いため、幅広い業務知識と柔軟性が求められる。非上場企業での経理経験者は、実務能力と問題解決力を身につけることができるのである。
業界やビジネスモデルの親和性
在庫の有無による経理スキルの違い
企業が求める経理経験者のスキルは、業界やビジネスモデルによって大きく異なる。例えば、小売業や製造業のように在庫を抱える業界では、在庫管理や原価計算に関する知識が重要視される。一方、ITやウェブサービス業界のように在庫を持たない、あるいは在庫という概念自体が存在しない業界では、プロジェクト管理や製品ごとの原価計算といった、異なるスキルが求められる。
会計処理の違い
業界ごとに、会計処理の方法も大きく異なる。製造業では、生産ラインごとにコストを集計し、製品原価を計算する必要がある。一方、プロジェクト型のビジネスモデルでは、プロジェクトごとの原価管理が重要になる。また、減価償却の方法も、業界やビジネスモデルによって異なる場合がある。経理経験者は、自身の経験が転職先の業界やビジネスモデルとどの程度親和性があるかを見極める必要があるのだ。
20代の経理経験者のキャリアの方向性
ベンチャー企業への転職で幅広い業務経験を積む
20代の経理経験者が、将来的に全社的な経理業務に関わっていきたいと考えている場合、まずはベンチャー企業への転職が有効な選択肢となる。ベンチャー企業では、バックオフィス部門の組織化が進んでいないことが多いため、経理業務だけでなく、総務や人事関連の業務まで幅広く経験を積むことができる。また、IPO準備の経験を積むことで、上場企業での経理業務に必要なスキルを身につけることも可能である。
一般事業会社でのキャリアアップを目指す
これまでの経験や専門性をより極めていきたいと考える場合は、一般事業会社への転職が適している。メンバーやスタッフのマネジメントを担いながら、年次決算の取りまとめを任されるようなポジションを目指すことで、経理や財務のマネージャーや部長としてのキャリアを歩んでいくことができるのだ。
上場企業での経験を積み、IR業務や海外関連業務に携わる
将来的に、IR業務や海外関連業務、財務分析などに関わっていきたいと考えている場合は、まずは上場企業での経理経験を積むことが重要である。これまでの業務範囲と同じようなポジションで上場企業に移り、そこから徐々にIR業務や海外関連業務に携わっていくというキャリアパスが考えられる。上場企業での経験は、金融商品取引法に基づいた経理業務や開示業務に関する知識を深められる点で、非常に価値が高いのだ。
おわりに
経理経験者の転職において、企業が求める人材像や親和性を理解することが重要である。上場企業と非上場企業では求められる経験や知識が異なり、業界やビジネスモデルによっても必要なスキルが変わってくる。20代の経理経験者であれば、これまでの経験を活かしつつ、目指すキャリアの方向性に合わせて転職先を選ぶことが可能だ。
ベンチャー企業で幅広い業務を経験しIPO準備に携わるのも一つの選択肢である。一方で、専門性を極めたい場合は一般事業会社でポジションを上げていくのも良いだろう。海外関連やIR、財務分析に関心があれば、上場企業への転職を検討するのも有効である。自分の強みと目指すキャリアを見据えて、最適な転職先を見つけることが大切なのだ。
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