近年注目されるマイクロサービス開発とは

DX化が進む現代において、話題を集めている技術の一つが「マイクロサービス」です。今ではDXで先行する大手企業のほとんどがマイクロサービスを採用しています。今回は、話題のマイクロサービスについて概要や浸透の背景に迫ります。

マイクロサービスとは

マイクロサービスとはソフトウェア開発における技法の一つで、システムを複数の独立した機能で構成し、機能同士を連携させることでサービスを実現させる手法です。マイクロサービスを作る際には、初めに機能別で小さなシステムを作り、その後それらを組み合わせることで大きな機能として稼働させます。

マイクロサービスは今や多くのサービスで導入されています。マイクロサービスで構築されているサービスは、以下の通りです。

例：

• Amazon
• LINE
• メルカリ
• ZOZOTOWN
• Spotify

マイクロサービスとモノリシックの違い

マイクロサービスと対照的なサービスが「モノリシック」です。従来のソフトウェア開発では、全ての機能を一枚岩（モノリス）のようにまとめて設計を行うモノリシックが主流でした。

ECサイトを例にとると、ECサイトに欠かせないユーザー管理、商品データベース、決済機能、データ分析などの機能が全て含まれているのがモノリシックです。一方のマイクロサービスは、各機能がそれぞれが独立していて、それらを組み合わせることでシステムを構築しています。

近年、モノリシックからマイクロサービスへ移行している背景としては、時代の変化が大きく影響しています。消費の多様化が進み、トレンドの変化が激しく予測が困難な現代であるため、サービスもニーズに応じて適宜変更・更新が求められるようになりました。

そういった面で、柔軟性に優れているマイクロサービスは、今のビジネス環境に適した開発手法だとして注目されています。

マイクロサービスの開発に欠かせない技術

マイクロサービスを成立させる上で欠かせないのが、「コンテナ」「API」と呼ばれる2つの技術です。

コンテナ

コンテナとは、OS上のシステムが動作する専用区画を生み出す仮想化技術です。マイクロサービスでは、個々のシステムに対してコンテナが用意されます。機能変更・更新などの際は、コンテナ単位で入れ替えを行えるため、迅速に対応できるのです。

API

コンテナをベースとしたマイクロサービスでは、各サービス間での連携に「API（Application Programming Interface）」という技術が利用されます。API とはソフトウェアやアプリケーション、サービス同士を共有する仕組みであり、ほかのサービスの機能を呼び出す役割を果たします。

APIにはさまざまな種類がありますが、クラウド上のマイクロサービスでは「REST API」と呼ばれるタイプが最も広く使われています。REST APIは物理的に離れた位置にあるサービス同士を連携し、一つのサービスとして運用できるというメリットがあります。

マイクロサービスのメリット・デメリット

次に、マイクロサービスのメリット・デメリットに迫ります。

メリット

一つは、サービスを素早く開発・改修できる点です。ビジネスの速度は加速し、数年前では考えられないようなスピードで次々とサービスが展開されています。そのなかで、顧客のニーズにスピーディーに対応することが開発を生産的に進める上で必要不可欠となりました。

マイクロサービスは、各機能が独立していて、サービス同士の強い依存関係がありません。そのため、新しい機能の導入やほかのサービスとは違う開発言語での開発を容易にできるのです。

新機能を導入する際には一つのサービスに対して改修をすればよいので、アプリケーション全体への影響が少なくなります。異なる開発言語を利用したとしてもサービス全体としては全く問題なく稼働します。各サービスに適した技術を活用して、柔軟性に富んだ開発を行えるのです。

また、障害が起きたときのリスク管理にも有効です。万が一大きなシステムで障害が起こった場合、障害が起こっている場所の特定やメンテナンスには多大な労力が必要とされます。しかしマイクロサービスであれば、問題のある部分のみを切り離せば済むので、サービス全体への影響を防げるのです。

デメリット

マイクロサービスの最大のデメリットは「複雑化」です。各システムによって異なる技術や開発言語を取り入れられるため複雑化しやすい傾向にあります。また、サービスの規模が大きくなり、個々のサービス間の通信が複雑化すると、サービスの運用・監視にかかるコストは高くなる恐れがあります。

また、マイクロサービスを開発する際には全てのサービス内容を把握し、統括できる人物が必要です。高い技術力と豊富な知識を持つ人材がいなければ、マイクロサービスの導入を成功させることは難しいでしょう。

このようにマイクロサービスは多くのメリットがある一方で、懸念点も存在します。各企業はマイクロサービス導入の必要性を踏まえ、慎重に検討することが重要です。モノリシックからマイクロサービスへの移行背景も踏まえて、ぜひ検討いただけたら幸いです。