志望動機に説得力を持たせる業界・企業研究の方法

企業研究は詳しくなるための作業ではなく、志望動機を自分の言葉で書くための材料集めです。調べる順番を間違えると、量を集めても志望動機につながりません。
調べた量と評価の関係
企業研究が浅い人には共通点があります。公式サイトにある事業内容を、そのまま志望動機に写していることです。
借り物の言葉は、同じ文章をその日だけで何通も読んでいる面接官には一瞬で見抜かれます。
説明会に出た回数や、読んだ記事の本数は関係ありません。問われるのは、調べたことを自分の判断につなげられているかどうかです。
企業研究の目的は3つに整理できます。
| 求める人物像を知る | 入社後のずれを防ぐ |
|---|---|
| 「主体性」という言葉ひとつでも、会社によって意味も水準も変わる | 外から見える華やかさと、現場の地道さの差を先に埋めておく |
- なぜこの会社かを言えるようにする:同業他社との違いを整理し、選ぶ理由を持つ
最も問われるのは「なぜこの会社か」です。面接官が知りたいのは「同業のどこでもよいのでは」に対する答えだからです。
この問いに詰まる人は、たいてい競合との比較を飛ばしています。会社の実態を知らないまま、良さそうな面だけで志望動機を組んでいるためです。
先に実態を確かめておけば、答えは自然に出てきます。良い面と地道な面の両方を知ったうえで選んだ、という説明になるからです。
深さで分ける3段階
調べ方には段階があり、順番を守ると後の工程が楽になります。
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| 全体像をつかむ | 業界の稼ぎ方と、いま起きている課題を押さえる(完了の目安=誰が誰に何を売って稼いでいるか説明できた) |
| 競合と比べる | 同業2社か3社を並べ、力を入れている領域の違いを整理する(完了=1社だけの特徴を言えた) |
| 一次情報を取る | OB・OG訪問や座談会で、公開情報にない話を聞く(完了=サイトに書いていない話を1つ持ち帰った) |
全体像をつかむ段階でつまずく人は多くなく、飛ばされがちなのは競合と比べる段階です。1社だけを見ていると、その会社の特徴は見えてこないためです。
一次情報を取る段階まで進んでいる人は、さらに少なくなります。ここまで来て初めて、他の就活生と違う材料が手に入ります。
段階を飛ばして一次情報から始めるのは遠回りです。全体像を知らずに社員へ会うと、公開資料で分かることばかり聞いてしまいます。
限られた訪問の機会を、調べれば済む質問で使うのはもったいないところです。全体像と競合比較を終えてから会うほうが、得られる話の質が変わります。
一次情報を得る場所
全体像と競合比較の材料は、公開されている資料から集められます。
業界地図や経済ニュースで、稼ぎ方の基本を押さえておきましょう。あわせて、その業界が抱えている課題も確かめます。原材料価格の高騰、国内市場の縮小、デジタル化による事業の変化などです。
課題が分かると、求める人材像の背景も見えてきます。会社が何に困っているかと、どんな人を採りたいかはつながっているためです。
企業理念と行動指針にも目を通しておきましょう。「誠実さ」を掲げる会社と「挑戦」を掲げる会社では、評価されるエピソードの切り口が変わってきます。
数字は有価証券報告書と決算説明資料で確かめられます。いまどの事業で利益を出しているか、これからどこに投資するかが書かれているためです。
数字に強くなくても読めます。売上と利益の構成、投資先、会社が課題として挙げている点。この3つに絞って見ておきましょう。
特に見ておきたいのが中期経営計画です。いまの利益がどの事業から出ていて、これから何を伸ばそうとしているかが書かれています。
ここまで読んでおけば、調べれば分かることを聞かずに済むぶん、逆質問の中身も変わるはずです。
「御社の強みは何ですか」と聞く学生と、「中期経営計画で挙がっているこの事業について、現場ではどんな課題が出ていますか」と聞く学生では、返ってくる話も、相手が受ける印象も別物になります。
差がつかない業界での比べ方
銀行、証券、保険、商社のように、扱う商品で差がつきにくい業界があります。この場合は比べる軸を変えておきましょう。
| 観点 | 中身 |
|---|---|
| 人 | どんな経歴の社員が多く、誰が評価されているか |
| 社風 | 意思決定の速さ、若手に任せる範囲 |
| 姿勢 | 課題に対して会社としてどう動いているか |
これらは公開資料からは読み取りにくく、だからこそ一次情報に価値があります。
商品で差がつかないからこそ、比べる軸を持たずに臨むと選べません。「どこも同じに見える」という状態は、たいていこの準備が抜けています。
軸を決めてから複数社を回ると、同じ質問への答え方の違いが見えてくるはずです。その違いこそが、志望順位を決めるときの材料になります。
面接官の反応が変わるのは、「他社ではなく御社を選ぶ理由」に訪問で聞いた話が入っているときです。ここが薄いと、どの会社にも言える志望動機になります。
聞く相手は1人では足りません。同じ質問を3人に投げると、その会社の傾向が見えてきます。
社風を聞くときは、抽象的な言葉で終わらせないでください。「風通しが良い」と言われたら、直近で若手の提案が通った例まで聞きます。
具体の話が出てこない場合、その言葉は採用向けの説明にとどまっているのかもしれません。
同じことが「若手に裁量がある」にも当てはまるところです。何をどこまで自分で決められるのかまで聞いて、初めて意味のある材料になります。
質問は事前に3つ用意しておきましょう。その場で考えると、当たり障りのない内容に寄ってしまいます。
調べたことを志望動機にする手順
材料が集まっても、そのまま並べると調査報告になってしまいます。志望動機に変える手順を挙げました。
まず、自分の経験の中から、その会社の課題や方針と重なる部分を探します。無理に大きな話にしなくて構いません。
次に、重なった部分を1文で書きます。「貴社が力を入れている領域に、自分のこの経験が使える」という形です。
最後にその理由を経験の側から説明すると、ここで初めて調べた材料が自分の言葉に変わります。
| 借り物の例 | 材料が生きた例 |
|---|---|
| 「貴社の成長性と、人を大切にする社風に魅力を感じました」 | 「中期経営計画で新規事業を柱にすると読み、説明会で担当の方に進捗を伺いました。立ち上げ期の泥臭さを聞いて、ゼミで新しい調査手法を一から作った経験が使えると考えています」 |
前者は社名を隠しても成立するのに対し、後者は調べたことと自分の経験がつながっています。
面接官が企業研究の深さを測っているのは、調べた量ではありません。調べたことと自分の経験がつながっているかどうかです。
この形まで持ってこられると話し方が変わるのは、材料の量ではなくつなげ方で差がつくためです。
つなげ方が分からないときは、逆から考えてみてください。自分が話せる経験を先に並べ、その中でどれが会社の課題と重なるかを探す順番です。
会社に合わせて経験を作る必要はありません。持っている経験のどれを前に出すかを選ぶ作業だと考えてください。
この作業をしておくと、面接でも困りません。志望動機を掘られたとき、経験の側から説明を足せるようになります。
業界・企業研究の始め方
企業研究は、志望動機を自分の言葉で書くための準備です。知識を増やすことが目的ではありません。
志望企業を1社選んで中期経営計画を開き、これから何に投資するかを1行にまとめてみてください。
まとめた1行を友人に説明してみると、理解の粗さがそこで見えます。うまく言えない箇所が、まだ読み込めていない部分です。
その1行が書けたら、同業他社でも同じことをしてみてください。2社目で、1社目の特徴が輪郭を持ち始めます。
調べた材料がうまく志望動機につながらないと感じたら、ASSIGNのエージェントに相談することもできます。
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