ジョブ型雇用の台頭により変化し続ける新卒採用

学歴で初任給が決まる形は、一部の会社で崩れ始めています。職務で処遇を決める採用が最も進んでいるのは、電機や情報通信の大手です。
崩れ始めた一律の初任給
担う職務によって、同期の間でも処遇に差をつける会社が出てきました。この話題でよく出るのは、「自分もその対象になるのか」「ならなければ不利なのか」という不安です。
対象になるのは、限られた職種の限られた人です。全員が目指す道ではありません。
ただし、仕組みが変わったこと自体は知っておく価値があります。応募の入口が職種別になれば、志望動機の書き方も変わるためです。
職務で決める採用との違い
従来の日本企業に多いのは、会社の一員として採用し、配属も異動も会社が決める形です。これに対して、職務を先に決めて採用する形が広がってきました。
| 採用の形 | 新卒にとって何が変わるか |
|---|---|
| 会社に所属する形 従来型 | 総合職として入り、配属は入社後に決まる。初任給は学歴ごとに一律。幅広く経験でき、合わなければ異動で調整できる |
| 職務を決める形 職種別・ジョブ型 | 応募の時点で職種やポジションを選ぶ。担う職務に応じて処遇が変わる。やりたい仕事に就ける代わりに、入口で専門性を問われる |
どちらを選ぶかは、自分の準備がどこまで進んでいるかで決めましょう。
やりたいことが決まっていない段階で職務を決める形に入ると、選択肢を早く狭めることになります。逆に、専門を決めて学んできた人には後者が向いています。
ジョブ型採用の進み具合
富士通は2026年度の新卒採用から一括採用を廃止し、通年での募集に切り替えました。学歴による一律の初任給もやめ、担う職務と職責に応じて処遇を決める形にしています。
日立製作所も2026年度の新卒採用で、内定後に配属を決める従来のコースを廃止しました。応募時に選んだ職種やポジションが、内々定と同時に確約される形です。
インターンシップの位置づけも変わりました。富士通は2025年度からインターンを有償のみに一本化し、期間も1か月から6か月に広げています。
日立も受け入れの規模を変えました。ジョブ型インターンの人数は、2020年度の130人から2024年度には約1,130人まで増えています。
一方で、こうした形に切り替えた会社はまだ一部です。マイナビの2027年卒 企業新卒採用活動調査では、初任給を引き上げた企業が89.1%に達し、平均支給額は237,903円でした。多くの会社は一律の初任給を保ったまま、水準だけを上げています。
つまり、いまは職務で処遇を決める会社と、一律のまま引き上げる会社に分かれているのが現状です。
この分かれ方は、業界によっても違います。情報通信や電機で先に進み、他の業界では総合職での一括採用が続いている状況です。
志望する会社がどちらなのかは、募集要項で確かめられます。ただし、職種を選んで応募する形でも、処遇まで職務で決まるとは限りません。見るのは、配属が確約されるか、担う職務の中身が書かれているか、初任給が学歴で決まっていないかの3点です。
日立の場合も、選ぶ枠によって確約される範囲が違います。職種まで決める枠と、就くポジションまで決める枠があるためです。
同じ会社の中でも、募集の枠によって分かれることがあります。技術系だけ職種別で、事務系は総合職という組み合わせがその例です。
対象になる学生の条件
職務を決める形で高い処遇を提示される人には、共通点があります。
| 共通点 | 中身 |
|---|---|
| 研究の内容が会社の事業領域と重なっている | AI、データ分析、通信、半導体などが典型 |
| 実物で力を示せる | 公開しているコード、制作物、コンテストの結果など |
| 長期のインターンで実務の評価を受けている | 1か月から数か月の有償インターンが判断材料になる |
| 文系でも特定領域で実績がある | 会計の資格、長期インターンでの実績、高い語学力など |
共通しているのは、入社前の時点で「何ができるか」を第三者が確かめられることです。現時点の力で判断されます。
だから、この道を狙うなら準備は3年生の夏より前から必要になります。始めるのは、長期のインターンに参加できる状態を作るところからです。
理系で研究テーマが合致している人は、研究の内容がそのまま材料になります。学会での発表や、研究で使った手法を人に説明できる状態にしておいてください。
文系の場合は、学業以外で積む形が中心です。長期インターンでの実績や資格が、実物の代わりになります。
いずれの場合も、応募までに自分の力を示す材料を用意しておきましょう。準備の期間を確保できるかどうかが、選べるかの分かれ目です。
高い処遇の裏側
報道では高い年収の部分が目立ちますが、実態はもう少し幅があります。富士通の場合、大半の新卒入社者は年収550万円から700万円程度で、高度な専門性を持つ人が約1,000万円程度になることもあるという説明です。
金額の高さには、期待される成果も伴います。職務で処遇が決まるということは、その職務での結果を問われるということです。
配属の融通も利きにくくなります。選んだ職種が合わなかったとき、会社都合の異動で救われる可能性は下がります。
こうした点を踏まえたうえで選ぶなら、良い制度です。金額に加えて、求められる成果と異動の扱いまで確かめてから応募します。
比べるときは、初任給ではなく5年後の姿で見てください。一律の初任給でも、育てる仕組みが整っている会社のほうが先で伸びる場合があります。
高い処遇を提示する会社は、教える余裕まで用意しているとは限りません。入社1年目に誰がどう教えるのかは、必ず聞いておきたい点です。
就活生が取るべき準備
進め方はこの順番です。
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 志望企業の募集方式を確かめる | 職種別か総合職か、志望する10社ぶんを募集要項で確認する |
| 自分の持ち駒を棚卸しする | 研究、制作物、インターンの実績を、第三者が確かめられる形で3つ書き出す |
| 足りない場合の道を決める | 長期インターンで積むか、総合職で入って後から専門を作るかを選ぶ |
持ち駒の棚卸しで何も出てこなくても、悲観する必要はありません。総合職で入って最初の数年で専門を作る道は、いまも主流です。
足りない場合の道は、早めに決めてください。長期インターンで積むと決めたなら、選考の準備と並行して動くことになります。
決められないときは、両方に応募する形でも構いません。総合職の選考を主軸に置きつつ、条件が合う職種別の枠にも出す進め方です。
ただし、職種別の枠は、選考の時期が早い場合があります。両方を狙うなら、早いほうの日程に合わせて準備を始めてください。
ジョブ型採用が向く人
学びたい分野が決まっていて、その分野で実物を作ってきた人には向いています。入口から希望の仕事に就けるためです。
一方、やりたいことがまだ定まっていない人には、総合職で幅広く見る道のほうが合います。専門は後からでも作れます。
職種別採用に応募するなら、総合職との違いを理解したうえで、その方式を選ぶ理由を自分で説明できるようにしておきましょう。面接での説得力が上がります。
制度そのものも、固定されたものではありません。いま総合職しかない会社が、数年後に職種別の枠を作ることもあります。だから、いまの方式だけで会社を候補から外す必要はありません。
ジョブ型時代の就活準備の始め方
ジョブ型の就活準備は、志望企業がどの方式で募集しているかを確かめる作業から始めます。
まずは今日、志望企業3社の募集要項を開き、職種を選んで応募する形かどうかに目を通してみてください。方式が違えば、準備することも変わります。
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