キャリアにおいて「ブランドカード」は通じるのか

有名企業に入ることには、はっきりした価値があります。ただ、転職の場面で会社の看板が有効なのは、書類の段階までです。
有名企業の看板が持つ価値
新卒で知名度の高い会社に入るのは、悪い選択ではありません。理由は3つあり、まず入る機会そのものが限られます。中途採用をほとんど行わない会社もあり、新卒の時期を逃すと入口が狭くなります。
次に、教える仕組みが整っている点です。多くの大手では、配属先の先輩が指導役として付き、集合研修や資格の支援もそろっています。1年目から学ぶ時間を確保しやすい環境です。
そして、転職で会社を移るときの向きです。規模の大きい会社から小さい会社へ移るほうが、逆より通りやすいという傾向があります。大きい会社から始めれば、後から選び直しやすくなります。
この3つは、どれも実際の利点です。有名企業を志望すること自体は、全く問題ありません。入口の広さという意味では、むしろ合理的な選択です。
問題になるのは、そこで何を積めるのかを見ないまま知名度で決め、看板の力をいつまでも使えると思い込む場合です。
通じる場面と通じない場面
会社の看板がどこまで有効かを、場面ごとに分けます。
| 場面 | 看板の有効度 |
|---|---|
| 書類の段階 転職の応募時 | 有効。高い倍率を通って入ったという事実は、一定の評価につながる |
| 面接の中身 転職の選考 | 通用しない。「あなたは何ができますか」に答えられなければ、社名では通らない |
| 入社後の仕事 移った先 | 通用しない。前の会社の名前ではなく、その場で出す成果で見られる |
書類で有効なのは事実です。ただし有効なのは入口までで、面接から先は本人の力で判断されます。書類は通るのに面接で止まる場合、共通しているのは、担当した仕事を自分の言葉で説明できないことです。
会社の規模が大きいほど、1人の担当範囲は狭くなります。その狭い範囲で何をしたかを語れないと、外から見て何ができる人か分かりません。
20代で身につける実力
だから、20代のうちに他社でも通じる力を1つ作っておく必要があります。他社でも通じる力とは、職種として名前が付くもののことです。法人営業、経理、マーケティング、人事、開発は、どれも会社が変わっても意味が伝わります。
逆に伝わりにくいのが、その会社の中だけで完結する仕事です。社内の調整、独自の仕組みの運用、特定の取引先だけを担当する業務がこれにあたります。価値がないわけではありませんが、外からは見えません。
20代でこれを作るべき理由は2つあり、1つは教えてもらいやすい時期だからです。年上の相手には教えにくくなるため、若手のうちは周囲が手をかけてくれます。
もう1つは、型が固まる前だからです。自分のやり方ができあがってしまうと、新しい進め方を受け入れにくくなります。
この2つの条件がそろうのは、社会人になってからの数年だけです。看板のある会社に入れたなら、その環境で何を積むかまで決めておきます。
積むものを探すのは、入社してからでも遅くありません。ただし、配属された部署で何が身につくのかを意識しているかどうかで、3年後の説明力が変わります。
意識するといっても、やることは担当した仕事を月に1回書き留める程度で十分です。その記録が、後から振り返る材料になります。30代に入ると、専門に加えて人を動かす力も見られ始めます。その土台になるのが、20代で作った1つの専門です。
看板だけの人の詰まり方
具体的な詰まり方は次の通りです。
| 詰まる例 | 通る例 |
|---|---|
| 「大手の総合商社で、複数の部署をまたぐ調整を担当してきました」 | 「食品の原料を扱う部署で、供給が止まったときの代替先の確保を担当しました。3年で12社の新規取引先を開拓しています」 |
前者からは何ができる人かが分かりませんが、後者なら扱った領域と行動と結果まで見えます。もう1組、志望動機でも同じことが起きます。
| 詰まる例 | 通る例 |
|---|---|
| 「大手で基礎を身につけたいと考えています」 | 「法人営業の型を最初の3年で身につけたいので、若手から顧客を任せる会社を探しています」 |
前者は基礎の中身が語られていません。後者には身につけたい力と期間が入っていて、面接官も配属を想像できます。基礎という言葉を、身につけたい力の名前に置き換えるだけで、何をしたい人かが伝わります。
大手を選ぶときの見方
有名企業を志望するなら、次の順で確かめてください。
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| その会社で就ける職種を確かめる | 総合職なら配属の実績、職種別なら募集の区分。志望職種に就ける可能性を見る |
| 入社3年目の担当を調べる | 社員紹介で、3年目が何をしているかを読む |
| 異動の仕組みを確認する | 希望を出せる制度があるか、頻度はどれくらいか |
| 担当範囲の広さを見る | 1人が持つ範囲が狭すぎないかを、社員紹介と説明会で確かめる |
最も見落とされるのは、担当範囲の広さです。規模が大きいほど分業が進み、1人の担当は狭くなります。
狭いこと自体は悪くなく、そのぶん深く磨けるのが利点です。ただし、狭いまま3年が過ぎると、外から見て何ができる人か分かりにくくなります。
対策は、担当の前後を知ろうとすることです。自分の仕事が全体のどこに位置するのかを聞いておけば、狭い担当でも文脈ごと説明できます。
もう1つ見ておきたいのが、異動の仕組みです。年に1回の申告制度がある会社なら、狭い担当が続いたときに自分から動けます。制度があっても使われていないことがあるため、実際に異動した人がいるかまで聞いてください。
大手以外を選ぶ場合
規模の小さい会社を選ぶなら、逆向きの準備が必要です。
社名で説明が済む場面は最初からなく、何をしてきたかで語る必要が1社目から出てきます。
そのぶん、3年後の説明は作りやすくなります。担当した範囲が広ければ、扱った領域と行動と結果をそのまま並べられるためです。
どちらを選んでも、目指すところは変わりません。3年後に「自分は何ができるか」を、社名を使わずに説明できる状態にすることです。
大手には教える仕組みがあり、小さい会社には広い担当があります。どちらを使って専門を作るかの違いです。
自分がどちらの環境で伸びるかは、これまでの経験から見当がつきます。手順を教わって伸びたのか、任されて伸びたのかを思い出してください。
3年後を見た選択の確かめ方
いまの選択が妥当かどうかは、次の3つで判定できます。
- 志望企業に入って3年働いた後、自分が何をできる人になっているかを言えるか
- その説明から社名を消しても、内容が成立するか
- その力が、他の会社でも使われているものかを説明できるか
3つのうち、答えにくいのは社名を消す問いです。社名を消すと何も残らない説明になっていたら、その会社を選ぶ理由も薄くなります。
この3つは、就活の途中で答えが変わって構いません。説明会や面接で知った事実によって、積みたいものが変わるのは自然です。
変わったときは、変えた理由も残しておいてください。面接で軸の変化を聞かれたときに、そのまま答えられます。
3つ通れば、有名企業を選んでも、そうでない会社を選んでも判断は成り立ちます。その会社で積めるものを見て選んだことになるためです。
会社選びの始め方
会社を選ぶときは、知名度と合わせて、その会社で何を積めるかを確かめます。
志望企業の社員紹介を開き、入社3年目の人が何を担当しているかを読んでみてください。社名を消しても意味が通る仕事かどうかを見ます。法人営業や経理のように職種として名前が付く仕事なら、会社が変わっても意味が伝わります。
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