キャリアにおいて「ブランドカード」は通じるのか

今もなお「新卒純血主義」の企業は多い

新卒カードを使って有名企業に入社することは、悪い選択肢ではありません。むしろ、リスクが低い選択肢の一つと言えます。日本の大手企業では、新卒一括採用の文化が依然として根強く、新卒のみを重視する「新卒純血主義」を掲げる企業も少なくありません。中途採用をほとんど実施していない企業も多いため、新卒のタイミングを逃すと入社のチャンスが限られることがあります。

1社目から2社目に転職する際、大手企業からベンチャー企業のような小規模企業への転職は比較的容易ですが、逆にベンチャー企業から大手企業へ転職する「小⇒大」のキャリアチェンジは難しいというのが実情です。

さらに、特に日系大手企業では、新入社員に対する研修が非常に手厚いです。多くの場合、同じ部署の先輩社員が指導員としてサポートしてくれます。指導員の呼び方は「ブラザー」「シスター」「メンター」など様々ですが、どの場合でも新入社員は困ったときにすぐに助けを求められる環境が整っています。

また、集合研修や資格試験のサポートも充実しており、1年目の間は働きながらも多くの時間を学びに費やせることが多いです。このように、手厚いサポートを受けることで、いわゆる「ビジネス戦闘力」をまんべんなく底上げすることができるのです。

20代は自分が「何者」か語れるようにするべき

では、こうした恵まれた環境にある有名企業出身者は、転職も容易に成功するのでしょうか。

結論としては「ノー」です。20代のうちに、自分が「○○」ができると他人に語れるような専門スキルを身につけることが重要です。

ここでの専門スキルとは、特定の職種におけるスキルであり、他の会社でも通用する汎用性のあるものを指します。例えば、法人営業、個人営業、経理、マーケティング、エンジニアリング、人事、法務などが挙げられます。

20代で専門スキルを身につけるべき理由は二つあります。まず、若いうちは吸収力が高いという点です。特に20代前半は仕事の型がまだ固まっておらず、新しいことを無条件に吸収できる時期です。30代以降でも学習能力が高い人はいますが、既に自分の中に確立された考え方や常識が存在するため、20代前半の吸収力とは比較にならないほどの差があります。

次に、20代の利点として、周囲から教えてもらいやすいことが挙げられます。一般的に、年上の人に教えるのは気が引けるものです。そのため、若手の方が周囲の先輩から自然に教えてもらえる機会が多く、部署やチーム全体で若手を育てる文化がある企業も少なくありません。このように、周囲の人から積極的にサポートしてもらえる時期は、長いキャリアの中でも非常に貴重です。

転職では「ブランドカード」ではなく「スキルカード」で勝負

転職活動においては、経歴を確認されるため、在籍している企業が有名企業であれば、一定の能力があると判断されることが多いでしょう。少なくとも、新卒採用の際に高い倍率を勝ち抜いて入社したことは評価されるはずです。

しかし、転職活動での成功は「ブランドカード」だけでは達成できません。転職活動では職務経歴書や面接を通じて「あなたは何ができますか？」という問いに明確に答える必要があります。単に有名企業に在籍しているだけでは、面接を突破するのは難しいでしょう。

20代の強みを最大限に生かして、自分が「何者」であるかを語れるように「スキルカード」をしっかりと手に入れることが大切です。これにより、自分が戦力として貢献できることをアピールすることが転職活動で非常に重要です。

また、30代になると専門スキルに加えてマネジメントスキルも求められるようになります。マネジメント経験は、専門スキルを持つ人に優先的に与えられるものであり、30代で専門スキルの土台がないと、キャリアの進展が難しくなるでしょう。

このように、転職を前提に1社目を選ぶ人が増えている中、自分のキャリアをどのように積み上げていくのか、どのカードを獲得すべきか、そしてそれをどう活用するかというキャリア戦略が非常に重要になっています。