福利厚生を重要視しすぎることの落とし穴

福利厚生は、比べにくいのに目立つ条件です。この記事では、求人票の福利厚生を2種類に分けて読む方法と、金額に直して比べる手順、そして見落とすと後で響いてくる点を整理します。
求人票の福利厚生の限界
会社説明会でよく聞くのが、福利厚生の充実という言葉です。ただ、この言葉だけでは他社と比べられません。強い比べ方は、2社の月あたりの手取りの差を金額で言える状態です。制度の一覧を並べるのをやめ、自分に入る額に直して比べる形になります。
一方、「どちらも福利厚生が手厚い」で止まる比べ方は多いところです。制度の一覧を並べただけでは、差が出ないためです。
聞いてみると、片方は住宅の補助が厚く、もう片方は休暇の制度がそろっている。中身がまったく違うのに、どちらも同じ言葉で説明されていたわけです。
比べるには、制度の言葉を「何が、いくら分、誰に対して提供されるのか」まで分解する必要があります。ここまで落とせば差が見えるはずです。
もう1つ、就活生が見落としやすい点があります。福利厚生には、法律で会社に義務づけられている部分と、会社が独自に決めている部分があることです。
前者はどの会社にもあります。だから、そこを手厚さの根拠として説明されていたら、比較の材料にはなりません。
2種類に分けて読む
求人票を開いたら、まずこの2つに仕分けておきます。
| 種類 | 読み方 |
|---|---|
| 法律で決まっている分 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など | 正社員として入るなら、どの会社にもある。あることが手厚さの証拠にはならない。逆に、記載がない会社は事情を確認する |
| 会社が独自に決める分 住宅の補助・社員食堂・資格取得の支援・独自の休暇など | ここが比較の対象。金額に直せるものと、直せないものに分けて見る |
社会保険が完備されているという表現は、法律で決まっている分の話です。これを売りとして強調する会社があれば、他に語れる制度が少ない可能性があります。
一方で、独自の制度の数は多ければよいというものでもありません。使われていない制度が並んでいることもあります。だから見たいのは、自分が実際に使う制度が含まれているかどうかです。
たとえば実家から通う人にとって、住宅の補助はほぼ意味を持ちません。逆に1人暮らしなら、月々の負担が大きく変わります。社員食堂も同じで、毎日使う人と外で食べる人とでは価値が違います。
まず自分の生活を書き出してから、制度を照らし合わせておきましょう。順番を逆にすると、他人にとって価値のある制度に引きずられます。
変わりやすさを織り込む
押さえておきたいのは、独自の制度は変わるという点です。会社の業績が悪くなれば、費用の削減はまず独自の制度から手がつきます。手厚かった補助が数年で縮小することは珍しくありません。
実際、住宅の補助を見直す動きは大手でも出ています。一律の手当を減らし、社員が自分で選べる形に組み替える会社が増えました。つまり、いまの制度が10年後もあるとは限りません。入社の決め手を独自の制度に置くと、変わったときに理由が消えます。
一方で、給与そのものは制度ほど簡単には下がりません。比べるなら、まず給与を見て、独自の制度は補助的に見るのが安全です。
この順番を逆にすると、判断を誤ります。月1万円の住宅補助より、月2万円の給与差のほうが大きいのに、目立つのは前者だからです。
給与が上がりにくい会社では、独自の制度が手厚く見えることもあります。人を集めるために、費用のかかりにくい部分を厚くしている場合があるためです。
制度の有無だけを見て、その裏側を見落とさないようにします。10年勤めたときの差は、給与の側に大きく出ます。
福利厚生を見る順番
比べる手順はこの通りです。
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 月々の固定で入る金額を並べる | 基本給と、毎月必ず出る手当(完了の目安=2社の金額が並んだ) |
| 賞与の実績を確認する | 何か月分が何回出ているか。募集要項か説明会で聞く(完了=年間の見込みが出た) |
| 金額に直せる制度を足す | 住宅の補助、通勤費の上限、食事の補助など(完了=月あたりの金額が出た) |
| 金額に直せない制度を並べる | 休暇の取りやすさ、勤務時間の柔軟さ、資格取得の支援(完了=自分が使うものが分かった) |
金額に直せる制度を足す段階で、気づくことがあります。制度を金額に直すと、想像より小さい差になることが多いのです。金額に直せない制度は、実際に使えているかを確かめる必要があります。制度があることと、使われていることは別だからです。
賞与も、募集要項の記載だけでは判断できません。「年2回」とあっても、何か月分かは書かれていないことがあります。説明会で聞けば、直近の実績を教えてもらえる会社がほとんどです。答えられない会社なら、その理由も含めて判断材料になります。
4つを並べ終えたら、2社の差を1枚にまとめてください。頭の中で比べている限り、印象の強い制度に引っ張られます。
金額に直したときの差
比べ方の例は次の通りです。
| 比べられていない例 | 比べられている例 |
|---|---|
| 「A社は福利厚生が手厚いので、A社にしようと思います」 | 「A社は住宅補助が月2万円ありますが、基本給がB社より月1万5千円低いので、額面で見た差は月5千円ほどです。休暇の取りやすさで選びます」 |
後者は、金額に直したうえで、直せない部分で決めています。この形にすると迷いが減るはずです。
なお、住宅補助のような手当も、多くは基本給と同じく税金や社会保険料の対象になります。手元に残る額で比べたいなら、額面の差からさらに2割前後が引かれると見ておいてください。もう1組、制度の使われ方でも比べます。
| 確かめていない例 | 確かめている例 |
|---|---|
| 「育児休業の取得率が高いと書かれていたので安心しました」 | 「取得率が高い一方で、復帰後にどの部署に戻る人が多いかを聞きました。同じ部署に戻る例が多いと分かりました」 |
制度の存在だけでは、働き方は分かりません。使った人がその後どうなったかまで聞くと、実態が見えます。
面接で聞くときの言い方
福利厚生を聞くこと自体は問題ありません。聞き方に配慮すれば、志望度を疑われることもありません。避けたいのは制度の有無だけを並べて聞くことで、条件だけで会社を選んでいる印象になります。
代わりに、働き方と結びつけて聞きましょう。「配属予定の部署では、休暇をどのくらいの頻度で取っているか」と聞く形です。一方、この聞き方ができる人は多くありません。制度の有無ではなく、自分の働き方を確かめようとしていることが伝わります。
逆質問の場で聞く場合は、仕事の質問を先に置いてください。順番だけで印象が変わりますし、聞く相手も選べます。人事に制度の説明を求め、現場の社員には使われ方を聞くと、同じ制度でも返ってくる答えの粒度が違うはずです。
内定が出た後なら、より踏み込んで聞けます。入社を決める前の面談があれば、そこで金額や運用の実態を確かめてください。条件面の質問は、内定後のほうが答えてもらいやすいものです。選考中に聞きにくかったことは、その段階に取っておく手もあります。
聞いた内容は、その場でメモに残してください。複数社の話を並べる段になると、記憶だけでは混ざります。
判断の確かめ方
比べられたかどうかは、次の3点で確かめられます。
- 2社の月あたりの手取りの差を、金額で言えるか
- 自分が実際に使う制度を3つ挙げられるか
- その制度が縮小されたとき、それでもその会社を選ぶかを言えるか
制度が縮小されたときの問いが、最も大事です。ここで答えに詰まるなら、決め手が制度に寄りすぎています。3つ通れば、比べたうえで選んだ結果になるので、待遇を理由に選んでも判断の軸は残ります。
福利厚生を見ること自体は、生活に直結する条件なので、むしろ見ないほうが不自然です。
福利厚生の見方の身につけ方
福利厚生を比べるときに要るのは、制度の数ではなく、金額に直した数字です。
志望企業2社の募集要項を開き、月々の固定で入る金額を並べる。今日の作業はそこまでで、それだけでも印象と実際の差が見えてきます。
条件が拮抗して決められないなら、ASSIGNのエージェントにぶつけてみると早く進みます。
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