採用目線を押さえたエントリーシート作成の手引き

エントリーシートは、うまく書く技術より、読み手が確かめたいことに答えているかで通過が決まります。この記事では、設問の意図を読むところから提出前の見直しまでを、順番に沿って示します。
書き始める前に決める3点
設問を読んで、すぐ本文を書き始める。多くの人がこの順番で進めて、手が止まります。
エージェントとしてES添削の面談を重ねる中で、通らない人には共通点を感じています。設問に答える前に、書きたいことを書き始めていることです。
「学生時代に力を入れたことを教えてください」と聞かれて、頑張った話をそのまま並べる。設問が何を確かめようとしているかを読まないまま書くと、こうなります。
読み手の状況も想像しておきたいところです。応募が集まる会社では、1枚あたりにかけられる時間は限られます。
短時間で読まれても伝わるかどうかは、文章の巧さではなく、答えの置き方で決まります。
まずやりたいのは、設問の裏にある問いを言葉にすることです。書き始めるのは、そのあとで十分です。
設問の裏にある問い
代表的な設問を、企業が確かめたいことに翻訳すると次のようになります。
| 設問/企業が確かめたいこと | 答えに必ず入れる要素 |
|---|---|
| 学生時代に力を入れたこと 目標に向けて自分で工夫できる人か | 困っていた状況、自分が取った行動、変化した結果 |
| 自己PR 強みを自分で正しく認識しているか | 強みが身についた経緯、それを裏づける具体的な場面 |
| 志望動機 他社ではなくこの会社を選ぶ理由があるか | 会社を知ったきっかけ、選んだ決め手、入社後にやりたいこと |
| 挫折した経験 うまくいかない状況で何をする人か | 何が起きたか、そのとき考えたこと、いま変えている行動 |
同じ「ガクチカ」でも、会社によって字数や設問の言い回しは変わります。翻訳の作業は設問ごとに毎回やりましょう。
翻訳ができると、書く内容は自動的に絞られます。逆にここを飛ばすと、どの設問にも同じ話を使い回すことになります。
字数の指定は、情報量を配分する条件だと考えましょう。答えに入れる要素を先に決め、そのうえで背景・行動・結果をどこまで書くかを決めます。
短い設問ほど、削る作業の差が出るはずです。書ける量が少ないぶん、どれを残すかで差がつきます。
提出までの5ステップ
順番はこの通りです。各段階に、次へ進む目安を添えました。
- 設問を言い換える:企業が何を確かめたいかを自分の言葉で1行にする(完了の目安=1行で書けた)
- 素材を棚卸しする:使えそうな経験を、事実と考えの断片で書き出す(完了=候補が3つ以上)
- エピソードを1つ選ぶ:設問の意図に最も近いものを選ぶ(完了=選ばなかった理由も言える)
- 結論から並べ直す:結論、状況、行動、結果の順に組む(完了=1文目だけで内容が伝わる)
- 声に出して読み、削る:読みにくい箇所を切る(完了=指定字数の9割に収まった)
飛ばしやすいのが素材の棚卸しです。1つの経験に決め打ちすると、設問との相性が悪くても直せなくなります。
素材の棚卸しでは、うまくいかなかった経験も残しておきましょう。挫折の設問や、弱みを聞く設問でそのまま使えます。
最後の音読は、面倒でも省かないでください。読点が多い文や、1文に行動と理由を詰め込んだ箇所は、声に出すと引っかかります。
削る順番も決めておくと迷いません。まず接続詞、次に修飾語、最後に前提の説明という順に落とします。
落ちるESの4つの型
添削で繰り返し見るのは、次の4つです。
- 結論が最後にある:状況説明から始まり、何を伝えたいかが最終行まで出てこない
- 主語が「私たち」:チームの成果だけが書かれ、自分が何をしたか分からない
- 数字がない、または意味がない:「多くの人」「大幅に改善」で、規模も変化も分からない
- どの会社にも出せる:社名を隠しても成立する志望動機になっている
結論の位置と主語は、書き直せば直せます。読み手が知りたいのは組織の成果ではなく、その中であなたが何をしたかです。
数字は、大きさを競うために書くものではありません。参加者が12人から20人になった、作業が週5時間から3時間に減った。規模が小さくても、変化が分かれば役目を果たします。
どの会社にも出せる文になるのは、締め切り前に量産したときです。同じ文を使い回すこと自体は悪くありませんが、会社ごとに変える箇所を決めておきます。
変えるのは、選んだ決め手と入社後にやりたいことの2箇所です。ここが共通のままだと、読み手には一瞬で分かります。
書き方の差が出る2箇所
同じ経験でも、置き方しだいで伝わり方は別物です。頻出の2箇所で比べます。
まず、強みを書く場合です。
- 伝わりにくい例:「私の強みは責任感です。ゼミの活動に最後まで真剣に取り組みました」
- 伝わりやすい例:「発表資料の作成が毎回2人に偏っていたため、章ごとの担当表を作って持ち回りにしました。準備の遅れは3回連続でなくなりました」
差がつくのは、何に困り、自分が何をしたかが書かれているかどうかです。
次に、志望動機です。
- 伝わりにくい例:「貴社の成長性と、人を大切にする社風に魅力を感じました」
- 伝わりやすい例:「説明会で聞いた、既存の顧客の困りごとから新しいサービスを作る進め方に惹かれました。まずは要望を拾う仕事に関わりたいと考えています」
前者は他社にもそのまま出せます。後者は、調べた事実と自分のやりたいことがつながっています。
後者の材料が集まる場所は、採用ページ、説明会、公開されている決算資料や中期経営計画です。
AIに書かせた文章の扱い
下書きを生成AIに作らせる人は増えました。使うこと自体を止める必要はありません。
ただし、出てきた文章をそのまま提出しないでください。もっともらしく整った文になる一方、あなたの経験の細部が抜け落ちるためです。
面談でも、AIで整えた志望動機を持ってくる学生が増えました。読むとすぐ分かります。文の運びがきれいで、具体的な場面だけがないからです。
使うなら、素材を出した後の整形だけに限ります。困っていた状況と自分が取った行動は、自分の記憶からしか出てきません。
面接で深掘りされたときにも差が出ます。自分で書いていない文章は、その場で説明を足せません。
字数と提出前の確認
指定字数は9割を目安に埋めます。極端に短いと、準備不足として読まれます。
1文に1つの内容だけを入れるのも守りたいところです。1文が長くなったら、接続助詞のところで切りましょう。
内容とは別に、形式の確認も必要です。設問のすべての要素に答えたか、字数と入力形式の指定を満たしているか、提出物の添付漏れがないか。この3点は提出の直前に必ず見てください。
固有名詞の誤りも致命的です。会社名の表記、サービス名、役職名は、採用ページの書き方に合わせて確かめます。
提出前には、自分以外の人に読んでもらいます。書いた本人には、説明が足りない箇所が見えません。
読んでもらう相手には、感想ではなく「分からなかった箇所」を聞いてください。褒めてもらっても直せるものは増えません。
提出の締め切りにも余白を作っておきたいところです。締め切り当日に書き上げると、音読も他人の目も通せません。
志望度の高い会社ほど、2日前には初稿を用意してください。寝かせてから読み返すと、自分でも粗さに気づけます。
見直しの3つの問い
提出前に、次の3つで確かめます。
- 1文目だけを読んで、何の話か伝わるか
- 自分が取った行動が、他人の行動と区別して書かれているか
- 社名を隠して読んだとき、他社にも出せる文になっていないか
1つでも引っかかったら、対応するステップに戻ってください。1が崩れる人は並べ直しへ、3が崩れる人は企業研究へ戻るのが近道です。
面談で、同じ時期にESを書き始めた2人を見てきました。一方は書いたものをそのまま添削に出し、もう一方はこの3つを自分で回してから持ってきました。
後者のほうが、出せる会社の数が増えていきます。直しの往復が減るぶん、次の1枚に時間を回せるためです。
通ったESは、必ず手元に残しておきましょう。面接では、書いた内容がそのまま質問の起点になります。
落ちたESも同じです。何を書いて落ちたかが分かれば、次の1枚で直す箇所が決まります。
エントリーシート作成の始め方
文章の巧さと、設問の意図を読めているかどうか。エントリーシートで見られるのは後者です。
「この設問で、会社は何を確かめようとしていますか」と聞かれて、すぐ言葉が出てくるでしょうか。詰まるなら、まだ設問を読み解けていない合図です。
志望企業のES設問を1つ選び、確かめたいことを1行に言い換えてみてください。書き始めるのはその後で構いません。
書いたESが自分では判断できないと感じたら、ASSIGNのエージェントに相談してください。志望業界の選考を知る担当者が、通る形かどうかを一緒に確かめていきます。
ASSIGN
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