マーケター志望が押さえておくべきキャリア観点

マーケティングは、入社後の数年で進む方向が分かれる職種です。分岐がいつ、どこにあるかを知っておくと、最初の配属の見方が変わります。
最初の3年で決まるもの
マーケターのキャリアを左右するのは、最初に持った担当領域です。集客の運用から入った人は数字に強くなり、商品開発から入った人は市場を見る目が育ちます。
どちらから入ってもかまいませんが、後から別の領域へ移るには、意識して機会を取りに行く必要が出てきます。
だから就活で見るべきは、会社の知名度より、最初の3年で何を担当できるかです。
配属の実態は採用ページの社員紹介で確かめられます。入社1年目から3年目の社員が何をしていたかを読んでおきます。
手法の広がりも押さえておきたい点です。電通「2025年 日本の広告費」によると、総広告費8兆623億円のうちインターネット広告費が4兆459億円で、構成比50.2%と初めて過半を占めました。
同じ調査では、テレビ・新聞・雑誌・ラジオの4媒体の広告費が2兆1,691億円でした。この10年で、お金の流れる先が入れ替わっています。
扱う手段が増えたぶん、1人が全部を経験するのは難しくなりました。
専門を深める道とまとめる道
5年目前後で多くの人が立つ最初の分岐は、1つの領域を深める道と、複数の領域をまとめる道です。
年次は目安です。会社の規模や担当する領域によって、実際の時期は前後します。
深める道を選んだ先にあるのは、その領域の第一人者という位置です。転職での評価は上がる一方、扱える範囲の外に出にくくなる面もあります。
まとめる道は、部下や外部の会社を動かして成果を出す形です。自分の手は動かさなくなる代わりに、予算と人の判断を持てるようになります。
進みやすい道は、会社の規模によっても変わるものです。担当が細かく分かれた大手では深める方向に、人数の少ない会社ではまとめる方向に寄ります。
どちらが上という順位はありません。ただし30代に入ると、片方に軸足を置いた人のほうが評価されやすくなります。
深める道を選んだ人が、40代でその領域の責任者としてまとめる側に回る例もあります。
判断の材料は20代のうちに集めるものです。担当を1つ経験するたびに、自分がどちらへ手応えを感じたかを記録しておきます。
事業会社と支援会社の違い
もう1つの分岐が、働く場所です。
| 選ぶ場所 | 5年後・10年後に活きること |
|---|---|
| 事業会社 | 1つの商品を長く育てる。売上に責任を持った経験が、経営に近い部署へ移る土台になる。扱える商材は自社の範囲に限られる |
| 支援会社 | 複数の業界を短い期間で担当する。手法の引き出しが増える一方、最終の決定権は顧客の側に残る |
| 調査・分析会社 | 市場と生活者を調べる。数字で語る力が育ち、商品開発や事業企画へ移る道が開ける |
移動の向きには傾向があります。支援会社から事業会社へ移る道のほうが、その逆より通りやすいとされます。
支援会社では複数の業界を短い期間で見られ、事業会社の側から見ると、その経験が採用の判断材料になるためです。
ただし支援会社に長くいると、顧客の看板で動く働き方が当たり前になりがちです。自分で決めたいと感じ始めた時期が、移る合図になります。
企画職の求人は動きが活発です。転職サービスのdodaによると、企画・管理系の求人倍率は2025年度に2.82倍から3.67倍で推移し、全体の2.28倍から2.96倍を上回りました。
この区分には経理や人事も入るため、マーケティング職だけの需給を示す数字ではありません。移りやすさの目安として見ておいてください。
20代で身につける順番
力をつける順番は、次の3段階に分けられます。
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| 数字を読む | 売上と費用を分解し、何がどれだけ結果に寄与したかを説明できるようにする |
| 施策を回す | 小さく試して結果を測り、次の一手を自分で決める経験を積む |
| 予算を預かる | 限られた金額の配分を決め、その結果に責任を持つ |
順番を守るのは、数字を読めないまま予算を預かると、うまくいかない理由を説明できなくなるためです。
予算を預かる段階に届くのが、だいたい入社5年目から8年目です。ここまで来ると、深める道とまとめる道のどちらへ進むかを自分で選べるようになります。
学生のうちにできる準備は、数字を読む練習だけです。よく買う商品の売れている理由を、価格と売り場の両面から説明する練習をしてみてください。
各段階でどこにつまずいたかは、社員に会えば聞き出せます。座談会の機会があれば、施策を回す段階でうまくいかなかった経験を尋ねてみてください。
答えからは、その会社が失敗をどう扱うかが見えます。試せる会社かどうかは、若手の話し方に表れます。
AIが分岐を左右する場所
生成AIが入ったことで、作る工程の速さが上がりました。サイバーエージェントが広告主100社に聞いた調査では、動画広告の58.0%、静止画広告の50.0%が「3年後にはAIが制作の主体になる」と予想しています(2025年6月調査)。
この変化は、深める道の中身を変えます。手を動かす速さで差をつけてきた領域ほど、価値の置きどころが移るためです。
一方で、何を作るべきかを決める工程は残ります。誰に何を届けるかの判断は、数字を見るだけでは決まりません。
だから20代の使い方も変わってきました。道具の操作を覚えるより、判断の材料を集めた経験のほうが10年後に活きます。手を動かす速さは、入社後に伸ばせるものです。
30代で問われるもの
30代に入ると、いくら動かしたかを聞かれるようになります。
具体的には、担当した予算の規模と、売上をどれだけ伸ばしたかです。金額で語れないと、転職でも社内の登用でも説明が弱くなります。
処遇も役職で決まる部分が大きくなります。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、係長級39万9,200円、課長級52万9,200円、部長級63万5,800円でした。役職に就かない層は31万500円です。
会社の規模でも差が出ます。同じ調査の企業規模別では、大企業41万4,100円、中企業34万4,400円、小企業31万5,000円でした。
なお、この調査にマーケティング職だけを取り出した区分はありません。ここに挙げた金額は全職種を含む数字です。
どの道を選んでも、30代で預かる金額が処遇に反映されます。20代は、その準備の期間だと考えてください。
志望企業を見るときは、若手が予算を持てるかどうかも確かめておきましょう。
向いている人と選考の視点
面接官が5年後の姿を聞くのは、この職種の分岐を知ったうえで選んでいるかを確かめたいからでしょう。
5年後の姿を聞かれて役職名だけを答えると、どの領域で力をつけたいのかが伝わりません。「マーケティング部長になりたい」は、どの会社にも当てはまる答えです。
分岐を知ったうえで選べていれば、この質問に答えられます。「まず集客の運用で数字を読む力をつけ、その後で商品側に移りたい」のように、進む順番まで話せるためです。
道ごとに、向いている人は変わります。
| 道 | 向いている人 |
|---|---|
| 深める道 | 1つのことを掘り続けられる人。細かい違いに気づける人 |
| まとめる道 | 人に任せられる人。全体の優先順位を決められる人 |
| 事業会社 | 長い時間軸に耐えられる人。社内の調整を面倒がらない人 |
| 支援会社 | 切り替えの早い人。短い期間で相手の事業を理解できる人 |
どの道でも共通の前提は、選んだ理由を自分の言葉で言えることです。
マーケターのキャリア設計の始め方
入社後の分岐を知ったうえで最初の一歩を選べるようになれば、5年後の話も自分の言葉で語れます。志望企業の社員紹介を3人分読み、入社から5年目までに何を担当したかを書き出します。
書き出した3人の経路は、横に並べて、共通している担当と分かれている時期を見比べてください。3人分の例に限られますが、その会社で担当が分かれやすい時期を知る手がかりになります。
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