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エンジニア職種研究~AI時代の業務内容とキャリアパス~

いまエンジニアの仕事は、AIがコードを書けるようになったことで、価値の置き場所が変わり始めました。新卒の採用数が多いシステムエンジニアでも、若手に求められる力が変わっています。

システムエンジニアの仕事の工程

システムエンジニアは、企業の要望を聞いて仕組みを設計し、作って動かし続ける仕事です。銀行の振込も、コンビニの発注も、その裏側には誰かが設計したシステムがあります。

仕事は工程で分かれており、順に追うと職種の全体像がつかめます。

工程中身
要件定義顧客が何に困っているかを聞き出し、作るものを言葉にする
設計どんな構造で作るかを決め、設計書に落とす
実装設計に沿ってコードを書く
テスト想定どおり動くかを確かめ、不具合を直す
運用保守動き続ける状態を保ち、障害に対応する

表のとおり、実装は工程の1つにすぎません。仕事の大半は、その前後にある会話と判断です。

AIが変えた工程

生成AIが最も早く実用になったのは、正解を定めやすい工程でした。

GitHubが行った統制実験では、同じ課題を解く時間がAIの支援によって55%短くなりました。日立製作所も、コーディングと単体テストの領域で生産性が平均10〜20%向上したと公表しています。

使う側の広がりも速く、JetBrainsの開発者調査では85%が日常的にAIツールを使っていると答えました(2025年10月公開)。

一方、企業としての導入は追いついていません。日本情報システム・ユーザー協会の調査では、コードを書く生成AIを導入した国内企業は試験導入を含めて32.6%にとどまります(2025年度調査)。

3つの調査は対象も質問の仕方も違うため、単純には比べられません。それでも、個人の利用が先に進み、会社の仕組みが後から追いかけている構図は読み取れます。

効率化が進んでも、人手が余る気配はありません。情報処理推進機構の調査では、DXを進める人材が不足していると答えた企業が85.5%にのぼりました(2026年7月発表)。

では、エンジニアの仕事はなくなるのでしょうか。経済産業省は2024年6月に公表した資料で、次のように整理しています。

要件定義・設計・実装・テストの4工程は効率化が可能で、「決められた仕様をプログラミングする行為そのものの価値は大きく低下する可能性が高い」。そのうえで求められる力として、AIを扱う力、上流工程の力、対人の力の3つを挙げました。

情報処理推進機構の委員会も、人の役割は企画や要求定義といった上流と、AIが出したものが正しいかを見極める作業へ移ると整理しています。

若手の仕事に引き寄せると、変化はこう表れます。コードを書き上げること自体の重みが下がり、出てきたコードを読んで誤りを見つける力、テストで何を確かめるべきかを決める力の比重が上がりました。

働く場所で変わる仕事の中身

エンジニアの日常は、働く場所によって大きく変わります。

働く場所/代表例仕事の中身
SIer
NTTデータ・NRI・SCSK
顧客企業のシステムを受託。上流から関わる
Web系企業
サイバーエージェント・DeNA
自社サービスを開発。改善の周期が速い
事業会社の情報システム部門
メーカー・金融など
自社の仕組みを企画し、開発は外部と組む

SIerは大規模なシステムを扱い、社会の基盤に関われます。ただし工程の分業が進んでいるため、若手が触れる範囲は限られやすい環境です。

Web系は自分の書いたコードが数日で世に出ます。その代わり、扱う技術の移り変わりが速く、学び続ける前提が強くなります。

情報システム部門は自社の課題に長く向き合えますが、自分の手で作る機会は少なくなりがちです。

どれを選ぶかは、作りたいものの大きさと、自分の手でどこまで作りたいかで決まります。

1年目に任される仕事

新卒は、まず研修で開発の基礎を学びます。その後に配属され、先輩の下で工程の一部を担当するのが一般的な流れです。

最初に任されるのは、テストや不具合の修正、設計書の一部作成といった範囲です。ここでシステムの構造を体で覚えていきます。

数年かけて担当が広がり、設計から任されるようになります。その先にあるのが、顧客との打ち合わせに同席し、要望を仕様に翻訳する役割です。

AIが入ったことで、この最初の段階で任される仕事も変わりました。単純な実装は支援を受けられる代わりに、出てきたコードが正しいかを判断する力が、以前より早い段階で求められます。

自分で書けない人は、AIの出力が正しいかも判断できません。基礎を学ぶ必要性は、むしろ強まっています。

その基礎を測る物差しとして、多くの企業が情報処理技術者試験を使います。新卒がまず取るのは基本情報技術者です。内定後に取得を勧める会社もあります。

なお、この試験は2027年度以降に区分を整理する案が示されています(経済産業省・情報処理推進機構が2026年3月に公表)。学習を始める前に、最新の区分を確認しておいてください。

年収とキャリアの広がり

エンジニアの年収は、働く場所と担当領域で大きく変わります。

厚生労働省が公表する職業情報では、受託開発のシステムエンジニアが578万5,000円、サーバーやネットワークを扱う基盤システムのエンジニアが889万円と示されています(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)。

2つは集計の対象が違うため、そのまま優劣として読むことはできません。それでも、扱う技術によって市場の評価が変わることは押さえておいてください。

新卒の初任給も上がりました。NTTデータグループは学士卒で月額30万円と公表しています(2026年4月入社)。

給与の決め方そのものを変えた会社もあります。富士通は2026年度の新卒から学歴による一律の初任給をやめ、担う職務に応じて月額29万4,000円または31万5,000円としました。

Web系はさらに動きが速く、LINEヤフーは2027年度の新卒エンジニアの標準年収を650万円以上へ引き上げました。従来の約1.3倍にあたる水準です。

DeNAも2027年度からコースを分け、AIを扱う職種の標準年収を600万円からとしました。サイバーエージェントは能力別の給与体系を採り、最低年俸504万円から個別に決めています。

企業の平均年収を見るときは注意が必要です。有価証券報告書に載る平均年間給与は管理職を含む全社員の平均であり、新卒の年収ではありません。

キャリアの選択肢は、大きく3つに分かれます。

選択肢中身
技術を深める特定領域の専門家として、設計や技術選定を担う
まとめ役へ進むプロジェクト全体の進行と品質に責任を持つ
上流へ移るITコンサルタントや事業会社の企画側へ移る

社外に移る場合は、事業会社の情報システム部門、コンサルティングファーム、Web系企業が主な進路です。そこで評価されるのは、どの工程でどんな判断をしたかです。

向いている人と選考の視点

「ものづくりが好き」という志望動機は、メーカーにも当てはまります。面接では「なぜソフトウェアなのですか」と重ねて聞かれることがあります。

選考で見られるのは、AIの時代に自分がどこで価値を出すかです。「実装が速くなるからこそ、顧客の要望を仕様に翻訳する工程に関わりたい」のように関わりたい工程まで話せれば、ソフトウェアを選ぶ理由になります。

適性としては、次のような特徴が挙げられます。

  • 分からないことを調べ、手を動かして確かめられる人
  • 相手の言葉を、あいまいさのない仕様に置き換えられる人
  • 動かない原因を、順を追って切り分けられる人
  • 完成まで数年かかる仕事に、根気よく付き合える人

多くのSIerは文系出身者も採用しています。問われるのは、学び続ける姿勢と、人の話を正確に受け止める力です。

エンジニア職種研究の始め方

エンジニアの職種研究は、AIが入った後に自分がどの工程を担いたいかを決めるところから始めます。

生成AIに簡単なプログラムを書かせ、出てきたコードが正しいかを自分で確かめてみてください。どこを確かめればよいかで手が止まったら、そこが基礎として学ぶ範囲です。

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