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マーケター職種研究~多様なマーケティング手法~

マーケターは、扱う手法が広がったぶん、会社によって仕事の中身がまるで違う職種になりました。その違いと年収、新卒でこの職種に就く経路までを順に確かめていきます。

マーケターの仕事の中身

マーケターの仕事は、商品が売れる仕組みを作ることです。営業が目の前の相手に売るのに対し、マーケターは顧客が自分から選ぶ状態を作ります。

やることは4つに分かれます。誰に売るかを決め、何を作るかを決め、いくらでどこに置くかを決め、どう知ってもらうかを設計する。この4つをつなげた設計図が、売れる仕組みの正体です。

ここで就活生の理解とずれやすいのが、広告の位置づけです。広告は最後の一手であって、仕事の中心ではありません。

売れない原因が価格にあるなら値付けを、置き場所にあるなら流通を直します。広告を打つ前に「そもそも何が原因か」を突き止める工程こそ、マーケターが最も時間を使うところです。

だから、この職種の実力は表現のセンスでは測れません。原因を特定し、限られた予算をどこに使うかを決める判断力で測られます。

では、その判断の対象になる手法には、どんな広がりがあるのでしょうか。

手法の広がりとAIの領域

マーケターが使える手段は、この10年で大きく増えました。インターネット広告費が2025年に4兆459億円となり、広告費全体の50.2%を占めたことが、その変化を象徴しています(電通「2025年 日本の広告費」)。

ただし、手段が増えたことはマーケターにとって朗報ばかりではありません。選択肢が増えるほど、どれを選ぶかの判断が難しくなるためです。

扱う手法は、大きく4系統に分けられます。

系統中身
ブランドを作る商品の意味や世界観を設計し、長期で選ばれる状態を作る
集客を回す検索・SNS・広告を運用し、数値を見ながら日々調整する
顧客をつなぎとめる会員データや購買履歴をもとに、再購入の設計をする
商品そのものを作る調査で見つけた不満を、開発部門と組んで商品に変える

同じマーケターでも、どの系統を担うかで日々の仕事は別物になります。新卒が最初に配属されやすいのは、成果が数字で見えやすい集客と、顧客をつなぎとめる領域です。

企業研究では、職種名より担当領域を確かめたいところです。

この4系統のうち、生成AIが最も速く入ったのが制作と分析の工程でした。

サイバーエージェントが広告主100社に聞いた調査では、動画広告の58.0%、静止画広告の50.0%が「3年後にはAIが制作の主体になる」と答えています(2025年6月調査)。

博報堂DYホールディングスは生成AIの社内研修を広げ、参加者は2024年度の8,500名超から2025年度は31,000名超へ拡大しました。資生堂は店頭端末に生成AIの応対機能を入れ、接客の支援に使っています(2025年7月導入)。

作る速度が上がったぶん、人に残るのは「何を作るべきかを決める」判断です。手法が増えるほど、選ぶ力の価値が上がりました。

働く場所で変わる仕事の中身

マーケターと呼ばれる仕事は、大きく3つの場所に分かれます。

働く場所/代表例仕事の中身
事業会社
資生堂・花王・味の素
自社商品を長期で育てる。開発や営業と組む
支援会社
広告代理店・制作会社
他社の商品を担当。短期で複数案件を回す
調査・分析会社
マクロミル・インテージ
市場と生活者を調べ、判断の材料を作る

事業会社なら、1つの商品に長く関われます。ただし扱える商材は、自社が持つものに限られる点は先に知っておきたいところです。

支援会社は多様な業界に触れられますが、意思決定の最終権限は顧客の側にあります。

どちらが優れているかを競う話ではありません。商品への愛着を軸に働きたいか、手法の引き出しを増やしたいかで、選ぶ場所が変わります。

働く場所を決めたら、次は日々の進み方を見ておきましょう。

マーケターの1年の進み方

事業会社のマーケターは、年間の計画を起点に動きます。まず来期にいくら売るかを決め、そこから逆算して打ち手と予算を割り振ります。

期の途中は、調査と実行の往復です。顧客に聞き、数字を見て、施策を打ち、結果を測る繰り返しが、仕事の大半を占めます。

新卒がいきなり全体を任されることはありません。最初は調査の集計や販促物の管理、売上データの分析といった部分を持ち、担当商品の一部から広げていくのが一般的です。

支援会社の場合は、案件ごとの区切りで動きます。提案して受注し、企画を作り、実行して報告するという数か月単位のサイクルを、複数同時に走らせます。

どちらにも共通するのは、成果が数字で返ってくることです。自分の判断が売上として跳ね返る手応えは、この職種ならではです。

裏を返せば、うまくいかなかった理由も数字が突きつけてきます。そこから逃げずに原因を潰せるかどうかが、伸びる人の分かれ目になります。

年収の水準と読み方

マーケターの年収を職種として示す公的な統計はありません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には「マーケティング」という職種区分がなく、企画事務の分類に含まれてしまうためです。

つまり、職種別の相場として出回っている数字の多くは、転職サイトの登録者データに基づく推計です。参考にはなりますが、企業を選ぶ根拠にはなりません。

自分で確かめられるのは、企業ごとの平均年収です。有価証券報告書に載っているため、志望企業のものを直接読めます。

会社平均年収
味の素1,036万円(2025年3月期)
花王810万円(2024年12月期)
資生堂708万円(2025年12月期)
博報堂DYホールディングス1,092万円(2026年3月期)

ただし、これらはいずれも全社員の平均です。マーケティング職だけの数値でも、新卒の初年度の金額でもありません。決算期も会社ごとに違うため、序列として読むと判断を誤ります。

見るべきは金額の大小より、その会社が何で稼いでいるかです。決算資料でセグメント別の利益を確認すると、どの事業が処遇を支えているかが見えてきます。

社外への出口は広く、事業会社間の移動、支援会社から事業会社への転職、コンサルティングファーム、独立が挙がります。売上を動かした経験は、業界を越えて通用する資産です。

新卒でマーケターになる経路

ここが、多くの就活生が誤解している点です。「総合職で入って、配属でマーケティングに行く」という理解は、大手では必ずしも当てはまりません。

主要企業の募集要項を確認すると、応募の段階で職種やコースが分かれている会社が目立ちます。

会社募集の形
P&Gジャパン職種別採用で、9職種の1つにマーケティングを明記
ユニリーバ・ジャパン職種別採用の5職種にマーケティングを設置
花王「日用品マーケティング」「化粧品マーケティング」が独立した募集職種
キリンホールディングスマーケティングコースを応募時点で選択

一方、味の素のように営業系コースから入った社員がマーケティング業務に就く会社もあります。

サイバーエージェントは職種を3つのコースに分けており、マーケティングは独立した募集になっていません(いずれも2027年度入社の募集要項)。

募集の区分は毎年変わります。ここに挙げた会社も含め、必ず最新の募集要項で確かめてください。

つまり「マーケターになりたい」と決めているなら、志望企業がどちらの方式かを先に調べる必要があります。応募の入口を間違えると、そもそも土俵に上がれません。

調べ方は簡単で、採用サイトの募集要項を開き、職種の区分を見るだけです。エントリーの締切前に必ず確認してください。

向いている人と選考の視点

マーケター志望の面接で確かめられるのは、売れない原因を自分で切り分けられるかどうかです。

ところが志望理由は、「人の心を動かす仕事がしたい」の手前で足踏みします。その言葉は広告制作にも営業にも当てはまるため、「それは広告代理店でもできますよね」と返されると、そこで答えが止まります。

数字で語れていれば、話は確かめたいところに届くはずです。「好きな商品が売れていない理由を、価格と売り場の両面から考えてみた」と話せると、職種理解の深さが伝わります。

適性は、担う領域によって変わります。

領域向いている人
ブランドを作る長期の視点を持ち、答えの出ない問いに耐えられる人
集客を回す数値の変化に敏感で、地道な改善を続けられる人
顧客をつなぎとめるデータから人の行動を読み解くことが好きな人
商品を作る現場の不満を拾い、開発と粘り強く交渉できる人

どの領域でも共通するのが、自分の好みを判断基準にしないことです。自分が良いと思うものではなく、顧客が選ぶものを作れる人が、この職種では信頼されます。

マーケター職種研究の始め方

マーケターは広告を作る仕事だと思われがちですが、面接で聞かれるのは、その会社のマーケターがどの領域を担っているかという話です。

よく買う商品を1つ選び、それが自分に届いた経路を紙に書き出しましょう。広告なのか、店頭なのか、人からの評判なのか。

書き出したら、その経路を友人に説明してみましょう。うまく言えない箇所が、まだ売れる仕組みとして見えていない部分です。

事業会社と支援会社のどちらが自分に合うか迷ったら、ASSIGNのエージェントに相談するという方法もあります。

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