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人事職種研究~多岐にわたる業務領域~

人事を志望する学生がまず思い浮かべるのは、採用の仕事でしょう。ところが採用は人事の仕事の一部で、扱う相手も必要な力も領域ごとに異なります。

人事の業務範囲

人事の仕事は、大きく採用・育成・労務・制度の4つに分かれます。学生が想像する「学生や社員と会う仕事」は、このうち採用と育成の一部です。

もう一方にあるのが、書類と数字とルールを扱う仕事です。勤怠の管理、給与の計算、社会保険の手続き、評価制度の設計。人と話す時間より、制度を作って運用する時間のほうが長い部署も珍しくありません。

加えて人事は、経営の判断に関わる部署でもあります。初任給をいくらにするか、どの部署に何人配るか、評価の基準をどう変えるか。どれも会社の費用と成果に直結します。

例えば初任給です。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、大学卒の初任給は26万2,300円で前年比5.6%増でした。この水準を追うかどうかは、人事が数字を積んで経営に提案します。

学歴ごとの差も、人事が経営とともに決める対象です。同じ調査では高校卒20万7,300円、専門学校卒23万700円、高専・短大卒23万5,500円、大学院卒29万9,000円と幅がありました。

人手不足を背景に、管理部門の求人そのものも増えています。転職サービスのdodaが公表する求人倍率は2025年度に2.28倍から2.96倍の間で推移し、人事が属する企画・管理系はこれを上回りました。

ただしこの区分には、経理や広報など人事以外の職種も入ります。人事だけの需給を示す数字ではない点は、押さえておきましょう。

求人が増えている背景には、採用の難しさに加えて、賃上げや働き方の見直しに対応する必要が出てきたことがあります。制度を作り替える仕事の比重が、以前より重くなりました。

4つの領域の比較

領域/主な仕事相手と求められる力
採用
計画づくり、母集団形成、選考、内定者フォロー
学生・転職者・現場の部門長。惹きつける力と、見極めの目の両方が必要
育成
研修の企画と運営、配置と異動の設計
新人から管理職まで。効果が見えにくい施策を、続けて改善できる粘りが求められる
労務
勤怠・給与・社会保険、就業規則、健康管理
全社員と行政。法令の知識と、細部を落とさない正確さが欠かせない
制度
評価・報酬の設計、等級の見直し、要員計画
経営層。数字で説明し、反発のある変更を通す力が問われる

(会社によって呼び方と分け方は異なり、中小企業では1人が全部を担う場合もあります)

規模によって働き方は変わります。大手は領域ごとに担当が分かれ、新卒はまず採用か労務に配属される形が一般的です。

一方、社員数の少ない会社では4領域を1人か2人で回します。担当の幅は広がりますが、専門性は自分で意識して深める必要があります。

労務の領域では、仕組み化も進みました。給与計算や勤怠の集計は外部のサービスに任せる会社が増え、担当者は例外の判断と法令への対応に時間を使う形へ移っています。

採用の中でも新卒採用は、学生と直接会える点で人気の高い担当です。会社によっては1人の担当が年間300名以上の学生と面談します。

ただし配属は会社の事情で決まるため、希望が通るとは限りません。

新卒で人事に就く経路

人事は、新卒で最初から配属される例の多くない部署です。総合職で採用し、現場を経験させてから異動させる会社が大半を占めます。

理由は単純で、現場を知らないと採用も育成もできないためです。どんな人材が活躍するかを語れなければ、面接で候補者を見極められません。

人事に就く経路は3つに整理できます。

  • 総合職で入り、営業などの現場を数年経験してから異動する(最も多い)
  • 人事職として職種別に採用される。募集する会社は限られ、採用人数も少数
  • 人材サービス会社で経験を積み、事業会社の人事へ移る

人材サービス会社から移る道は、採用の経験を早く積める経路です。人材紹介や採用支援の会社では、初年度から採用の現場に立てるためです。

職種別採用は、外資系企業や成長中のIT企業に見られます。募集人数は数名にとどまることが多く、選考の倍率は高くなります。

いずれの経路でも、人事に必要な力は現場で鍛えられるものです。相手の話を引き出す、事実を整理して人に説明する、締め切りから逆算して動く。どれも学生時代の経験で語れる要素になります。

新卒で人事を志望するなら、募集要項で職種別採用の有無を確かめてください。総合職しかない会社では、入社後の異動を待つ前提になります。

その場合は、配属の希望を出せる仕組みがあるかも見ておきましょう。年に1回の申告制度を持つ会社なら、現場で成果を出したうえで手を挙げる道が開けます。

キャリアパスと働き方

社内のキャリアは、専門を深める道と、幅を広げて管理職を目指す道の2つです。採用一筋で専門家になる人もいれば、4領域を回って人事部長を目指す人もいます。

処遇は、他の管理部門と同じ水準に置かれる会社が一般的です。営業のような成果連動の報酬は少なく、役職が上がるにつれて伸びる形になります。

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査で役職別の賃金を見ると、係長級は月39万9,200円、課長級は52万9,200円、部長級は63万5,800円でした。役職に就かない層は31万500円で、昇格の有無で差が開きます。

会社の規模による差も見ておいてください。同じ調査では大企業41万4,100円、中企業34万4,400円、小企業31万5,000円と、規模が下がるほど水準も下がる形でした。なお全体の平均は34万600円です。

人事職だけを取り出した区分はこの調査にないため、どの金額も全職種を含む水準です。

働き方には季節の波があります。採用担当は選考の時期に、労務担当は年末調整や社会保険の更新時期に忙しさが集中します。

転職する場合は、他社の人事へ移るのが中心です。制度設計の経験を持つ人は人事コンサルティングへ、採用の経験者は人材サービス会社へ移る例も見られます。

一方で、事業の数字を直接動かした実績は残りにくい職種です。経営企画などへ移るときは、説明の工夫が欠かせません。

対策は、担当した施策の効果を数字で残しておくことです。採用単価をいくら下げたか、離職率が何ポイント動いたか。そこまで言えると、社内外での評価が変わります。

向いている人と選考の視点

「人の成長を支えたい」という志望理由は、教育にも人材サービスにも当てはまる言葉です。面接では「それなら現場で後輩を育てるのでもいいですよね」と返されやすいため、4つの領域のどこに関わりたいかを理由とセットで話せるようにします。

「制度で人の行動は変えられると思うので、評価の設計に関わりたい」という形なら、同じ問いを受けても話が続きます。

どの領域が向くかは、次の通りです。

領域向いている人
採用初対面の相手と関係を作れる人。見極めの場面で情に流されない人
育成成果が出るまで待てる人。現場の声を拾い続けられる人
労務細部を落とさない人。法令を調べて確かめる習慣がある人
制度数字で語れる人。反発を受けても筋を通せる人

どの領域でも社員の個人情報を扱うので、口の堅さは前提条件だと考えてください。

人事職種研究の始め方

人事を調べるときに決めておきたいのは、4つの領域のどこに就きたいかです。ここが決まると、志望動機が具体的な仕事の話になります。

気になる1社の採用ページで、人事の職種別採用があるかを確認してみてください。なければ、総合職で入り、異動で人事に就く道が中心になると考えておきましょう。

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