旅行業界研究~アフターコロナでの業界動向~

旅行業界の話は「コロナから回復したかどうか」で語られがちですが、論点はすでにその先へ移りました。この記事では、その後に何が入れ替わったのかと、職種ごとの仕事の中身、入社後のキャリアを整理しました。
回復の先で稼ぎ方が変わった
数字から確認します。日本政府観光局によれば、2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人で、前年比15.8%増と過去最高を更新しました。
消費額はさらに伸びています。観光庁の確報値では、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で、前年比16.4%増でした。
国内の旅行も戻っています。日本人の国内旅行消費額はおよそ26.8兆円と、こちらも過去最高の水準に達しました。
つまり訪日と国内の需要は、すでに戻り切っています。就活で「コロナからの回復」を語ると、いま起きている変化を見ていないと受け取られかねません。
変わったことの1つは、店舗で個人にツアーを売る形が細ったことです。個人の予約はインターネットへ移り、各社は店舗の数を絞りました。
代わりに厚みを増したのが、法人向けと訪日客向けの仕事です。企業の出張や研修旅行、海外から日本へ来る旅行者の受け入れが、収益の柱になりました。
日本人が海外へ行く数は、まだ回復の途中にあります。円安と航空運賃の上昇が重なり、海外旅行の販売はコロナ前の水準に届いていません。
観光地の混雑という新しい課題も生まれました。人が集まりすぎる場所では住民の生活に支障が出るため、時期や人数を分散させる工夫が求められています。
旅行会社にとっては、混雑を避ける行程を作れるかどうかが力の見せどころです。知られていない地域へ人を送る商品づくりが、そのまま地域の課題解決にもつながります。
主要プレイヤーの比較
| 企業/稼ぎ方の軸 | 直近の業績と特徴 |
|---|---|
| JTB 法人と訪日で稼ぐ最大手 | 2026年3月期の売上高は1兆1,332億円で3年連続の1兆円超。純利益121億円。訪日と第三国間の旅行が2桁成長 |
| エイチ・アイ・エス 海外旅行と非旅行事業の両輪 | 2025年10月期の売上高は3,731億円(前期比8.7%増)。旅行事業に加え、テーマパークやバス事業を持つ |
| KNT-CTホールディングス 団体・教育旅行に強い | 2026年3月期の売上高は2,970億円(前年比8.2%増)で過去最高。修学旅行や地域の受託事業が柱 |
(各社の決算発表による数値で、決算期は会社ごとに異なります)
3社に共通するのは、個人向けの店舗販売に頼らない形へ移したことです。法人、教育機関、自治体といった相手を軸に組み直しました。
KNT-CTのように、自治体から事業を請け負う形を伸ばした会社もあります。旅行の手配で培った調整力を、催事やワクチン接種の運営などに転用する動きです。
同じ旅行会社でも、どこから収益を得ているかで日々の仕事は別物になります。志望動機では、その違いを踏まえられるかどうかが差になります。
競合として並ぶのは、同業の旅行会社だけではありません。旅行予約サイトを運営する会社も相手です。個人の予約が画面上で完結する以上、旅行会社は人が入る意味を示さなければ選ばれません。
主な職種の業務内容
新卒で入る先は、大きく次の職種に分かれます。
| 職種 | 仕事の中身 |
|---|---|
| 法人営業 | 企業や官公庁に、出張・研修・視察・国際会議などを提案する。受注から企画、当日の運営まで関わる |
| 教育旅行の営業 | 学校に修学旅行や遠征を提案する。長い関係づくりが前提になる |
| 個人向けの販売 | 店舗やオンラインで、旅行商品や航空券を販売する |
| 商品企画 | 市場を調べ、ツアーの中身と価格を設計する |
| 手配・オペレーション | 交通と宿の手配、現地との調整を担う |
法人営業の面白さは、自分で商品を作れる点にあります。既製品を売るのではなく、相手の目的に合わせて行程を組み立てる仕事です。
たとえば海外での研修なら、訪問先の企業や大学との調整まで含まれます。旅行の手配というより、目的を達成する場を設計する役割に近い形です。
国際会議や展示会の運営を受け持つ部署もあります。数百人規模の人の動きと宿泊、会場の設営までを一括で引き受ける仕事です。
教育旅行は、決まった時期に大きな案件が動きます。学校ごとに数年単位の付き合いになるため、担当が代わっても関係が続く形が一般的です。
商品企画は、旅行の中身と採算の両方を見ます。行きたくなる行程を考えるだけでなく、航空券や宿の仕入れ値から価格を組み立てる必要があります。
訪日客の受け入れを担う部署も広がりました。海外の旅行会社と組み、日本国内の行程を手配する仕事で、英語をはじめとする語学を使う場面が多くなります。
受け入れの現場では、人手の不足も課題になっています。通訳や案内ができる人材が足りず、単価の高い旅行者に対応しきれない場面が出ているためです。
宿や交通の仕入れも仕事の一部です。繁忙期の部屋や座席を早めに押さえられるかどうかが、商品の売れ行きを左右します。
キャリアパスと働き方
給与の水準は、他業界と比べて高いほうではありません。旅行が好きという気持ちだけで選ぶと、入社後にそこで迷いが生じやすくなります。
働く時間には季節の波があるものです。修学旅行や連休の前は繁忙となり、担当した団体の出発に合わせて動く場面も出てきます。
添乗に出る場合は、旅程のあいだ現地で過ごすことになります。担当者が同行するか、派遣の添乗員に任せるかは会社ごとの方針です。
社内のキャリアは2つに分かれます。営業で成果を出して支店長へ進む道と、本社の企画や手配の部署で専門性を深める道です。
社外への出口は、以前より広がりました。訪日客向けの事業を担う会社、宿泊業、自治体の観光部門など、旅行の周辺に仕事が増えているためです。
宿泊業では、外資系のホテルが日本での開業を続けています。旅行会社で身につけた手配や接客の経験は、そこでも通用する土台になります。
企業の出張手配を専門に請け負う会社も増えました。法人営業で覚えた出張管理の知識は、そのまま持ち出せる強みになります。
どの職種でも、担当した顧客・任された企画の範囲・出した成果を自分の言葉で説明できるかが、社外へ動くときの分かれ目になります。20代のうちに法人や企画の経験を取りにいく人が目立つのも、そこが理由です。
社内で希望を出す仕組みは各社にあります。異動の希望が通るかは時期と部署の事情によるため、説明会で実際の運用まで聞いておいてください。
働き方の面では、オンラインでの商談が定着しました。全国の学校や企業を担当しながら、移動を抑えて動ける環境が整いつつあります。
向いている人と選考の視点
「旅行が好き」と話す学生は多いのですが、面接官が知りたいのはその先です。
好きという気持ちは前提であって、選ぶ理由にはなりません。面接で「お客さまとして旅行を楽しむのと、売る仕事は別ですよ」と返されて答えに詰まった、という相談をこれまで何度も耳にしました。
収益の変化まで踏まえて語れていれば、話の通り方が変わります。「個人向けの販売が細る一方で法人と訪日が伸びている。だから法人営業を志望する」まで言えると、面接官の受け止め方も変わります。
職種ごとの向き不向きを並べます。
| 職種 | 向いている人 |
|---|---|
| 法人営業 | 相手の目的を聞き出し、行程という形にできる人。関係を長く保てる人 |
| 教育旅行 | 安全を第一に、細部まで確認を重ねられる人 |
| 商品企画 | 市場を調べ、採算を計算しながら形にできる人 |
| 手配・オペレーション | 想定外の変更に落ち着いて対応できる人 |
どの職種でも、扱うのは他人の限られた時間です。当日に起きるやり直しの利かない仕事だと分かったうえで、準備を重ねられる人が信頼されています。
旅行業界研究の始め方
旅行への思い入れと、その会社が誰からお金をもらっているかという話。面接で見られるのは後者です。
気になる1社の決算資料を開き、売上が個人・法人・訪日のどこから来ているかを見る。それを3行でメモしたら、今日の作業はそこで区切って構いません。
それだけで、他社との違いが見えてきます。
整理した3行は、ASSIGNのエージェントに見てもらうと決めやすくなります。
ASSIGN
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