証券業界研究～ブローカー業務からのビジネスモデル変革～

この記事では、証券業界について解説し、業界の分類、主要なプレイヤー、業務内容、適性、そしてキャリアパスについて詳しく説明します。

業界トレンド

近年の証券業界では、株式や債券などの売買仲介による手数料収入を得るブローカー業務から、その他の手数料収入への移行が進んでいます。ブローカー業務とは、金融商品を売買仲介し手数料を得る手法であり、ホールセール（上場企業を中心とした法人営業）では幹事競争、リテール（個人営業）では株式出来高競争がこれまでの主軸でした。

しかし、政府の「手数料の自由化」や「外資系証券の台頭」により、ブローカー業務の収益性が低下してきています。そのため、中大手証券会社を中心に、売買手数料から預かり資産拡大による手数料収入への転換が進んでいます。預かり資産の拡大を図るため、各証券会社は銀行、不動産、リースなどのグループ会社と連携し、幅広いソリューションを提供する体制を整えています。

主要プレイヤーの分類

国内主要企業と特徴

主な職種の業務内容

営業

証券業界の営業職は以下のように分類されます。

• リテール営業
  個人富裕層や中小企業に対して、資産運用や資産・事業承継などのソリューション提案を行います。若手の間は新規顧客の開拓が主な業務ですが、年次が上がるにつれて既存顧客を担当することが増えます。担当顧客数は300〜500アカウント程度です。
• ホールセール
  金融機関や上場企業など、プロの投資家を対象に資産運用の提案を行います。リテール営業とは異なり、担当顧客数は少ないものの、複数の関係者を巻き込んで業務を進める必要があります。

リサーチ（アナリスト）

マーケット情報の分析を行い、国内外の多様な投資家に有益な情報を提供します。情報収集のために担当企業を訪問することもあり、メディア出演の機会もあるため、業務は多岐にわたります。

インベストメントバンキング

資金調達、M&A、IPOなど、顧客企業の成長をサポートする業務です。一人前になるまでに時間がかかるため、継続的な学習と経験が求められます。

トレーダー

株式や債券、商品先物などの金融商品を取引所で売買し、市場の変動を利用して利益を上げることを目指します。迅速かつ正確な判断が求められる職種です。

職種別適性

営業

• リテール営業
  主に個人富裕層や中小企業のオーナー社長を対象に提案を行うため、目上の人や年齢が離れた人との関係構築が得意で、突破力のある方に向いています。目標達成意識が強く、数字に対して高い意識を持つ必要があります。
• ホールセール
  機関投資家を相手に提案を行うため、広範で深いマーケット知識を迅速に吸収できる学習意欲が求められます。また、相手企業の担当者との関係構築が重要で、特に同世代や同等の役職の方との関係構築が得意な方に向いています。

リサーチ（アナリスト）

不確実なマーケットの分析を行うため、高い分析能力が求められます。また、分析結果を文章や報告書にまとめる能力、社外の方とのコミュニケーション力も重要です。

インベストメントバンカー

企業の資本調達やM&Aなど、金融取引に関与するため、広範な金融知識や戦略的思考能力、管理能力が求められます。複数の関係者と協力しながら業務を進めるため、チームワーク能力も不可欠です。

トレーダー

市場データを分析し、迅速かつ正確な取引判断が求められます。数字に強く、決断力と行動力が高い方に向いており、大きな金額を扱うためストレス耐性や冷静さも必要です。

キャリアパス

アナリストやトレーダーなどの専門職は、培った専門性を活かしながら社内でキャリアアップするか、国内外の業界へ転職することが一般的です。インベストメントバンキングでは、社内や同業界への転職のほか、事業会社の財務戦略担当やVC（ベンチャーキャピタル）に転職するケースもあります。

リテール営業では、若手のうちは突破力やセールスポテンシャルを評価されて異業界への転職が多いですが、一定の年齢を重ねると金融業界や同業他社への転職が一般的です。ホールセールは、社内や同業界でのキャリアアップに加えて、機関投資家サイドに転身し、運用担当者になるケースもあります。