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自動車業界研究~EVシフトで変わる業界構造~

EVへの一本道を進むという前提が崩れ、自動車各社の戦略は大きく分かれ始めました。その変化を入り口に、6社の違い・仕事の中身・キャリアの実像までを整理しました。

自動車メーカーのビジネスモデル

自動車メーカーの稼ぎ方は、単純に見えて奥が深い構造をしています。

基本は、部品を仕入れて完成車を組み立て、販売店を通じて売る製造業です。1台あたりの利益は数万円から数十万円で、これを年間数百万台という規模で積み上げます。

利益を左右するのは、販売台数だけではありません。どの車種が売れたか(車種構成)、為替がどう動いたか、原材料をいくらで調達できたか。この3つが業績を大きく揺らします。

もう1つの柱が、部品の交換や点検整備、金融(自動車ローンやリース)といった販売した後の商売です。トヨタをはじめ各社は、この領域を安定収益源として育ててきました。

「車を作って売る会社」という理解だけでは足りません。数万点の部品を束ねるサプライチェーンの司令塔であり、同時に巨大な金融事業者でもあります。

では、その業界でいま何が変わっているのでしょうか。

EV一本道の前提が崩れた

数年前まで、業界の共通認識は「いずれ全部EVになる」でした。この前提が2025年に大きく揺らぎます。

象徴的なのがホンダです。2026年3月期に上場来はじめての最終赤字4,239億円を計上しました。EV関連の巨額損失が主因で、掲げていた脱エンジン路線は事実上の修正に追い込まれています。

SUBARUもBEVの自社開発を延期し、開発資産の減損に踏み切りました。マツダはBEVの比率を抑え、エンジン車と併走する方針を掲げています。

一方で追い風を受けたのがハイブリッドでした。トヨタは電動車の販売が初めて500万台を超え、その大半をハイブリッドが占めます。米国では税優遇の廃止でEV販売が急減し、ハイブリッドの伸びが際立ちました。

業界再編の動きも激しさを増しており、押さえておきたいのは次の3つです。

動き中身
統合の破談日産とホンダは2024年12月に経営統合の基本合意を結びましたが、2025年2月に協議終了を発表。ただし電動化やソフトウェア分野の協業は続いています
日産の構造改革2025年5月に再建計画を発表し、複数の工場閉鎖と大規模な人員削減を進めています
外資の参入中国BYDが日本の乗用車市場に参入し、軽自動車サイズのEV投入も予定。ただし市場シェアはまだ限定的です

EVか、ハイブリッドか、それとも両方か。答えが割れているからこそ、就活生にとっては「どの会社がどの賭けをしているか」を読む面白さがあります。

主要プレイヤー6社の比較

社名/営業利益特徴・戦略
トヨタ自動車
3兆7,662億円
世界販売959万台。全方位戦略で電動車が伸長
スズキ
6,229億円
インドで圧倒的シェア。小型車に特化
マツダ
516億円
走りと燃費の独自路線。BEV比率は抑制方針
日産自動車
580億円
再建の途上。7工場閉鎖と人員削減を進行中
SUBARU
401億円
米国市場が主戦場。BEV自社開発を延期
ホンダ
営業損失4,143億円
二輪は世界首位。EV損失で上場来初の最終赤字

(2026年3月期の連結実績・各社決算短信)

同じ「自動車メーカー」でも、置かれた状況はまったく違います。スズキはインドという成長市場を押さえ、SUBARUは米国に集中し、ホンダと日産は戦略の立て直しの最中。それぞれが別の勝負をしている状態です。

志望動機では、この差を踏まえて「なぜその会社か」を語れると強くなります。「自動車が好き」だけでは、どのメーカーにも当てはまってしまうためです。

各社の違いが見えたところで、次に見るのは業界の構造です。

業界構造とサプライヤーの世界

自動車産業は、完成車メーカーを頂点にした階層構造でできています。

メーカーに直接部品を納めるのがTier1と呼ばれる大手サプライヤーで、デンソーやアイシンがここに当たります。その下にさらに下請けが続き、ねじ1本まで裾野が広がる構造です。

規模の大きさは国レベルの数字に表れています。自動車関連の就業人口は559万人にのぼり、全就業人口の8%を超えます(日本自動車工業会)。

EVシフトはこの階層にも影響します。エンジンや変速機の部品は将来の需要が読みにくくなる一方、電池やモーター、半導体を扱う企業には追い風が吹く。同じ「自動車部品メーカー」でも明暗が分かれ始めています。

完成車メーカーだけを見て業界研究を終えると、この構造が見えません。志望先の選択肢としても、Tier1は有力な候補になります。技術そのものに関わりたいなら、むしろ近い場所かもしれません。

主な職種と仕事内容

完成車メーカーの採用は、技術系と事務系に分かれます。採用人数は会社によって幅がありますが、技術系が事務系を大きく上回るのが共通した傾向です。

開発・設計

車両の性能や機能を作り込む中核部門です。エンジン、車体、電子制御、ソフトウェアと領域は細かく分かれ、1つの車種の開発に数年単位で関わります。

近年はソフトウェアの比重が急速に高まりました。トヨタはソフトウェア人材の育成拠点を設立し、ホンダも外部企業と組んで増員を進めています。

生産技術・製造

工場のラインを設計し、品質とコストを作り込む仕事です。国内工場だけでなく、海外拠点の立ち上げに関わる機会もあります。

購買・調達

数万点の部品を、どのサプライヤーからいくらで買うかを決める部門です。原材料価格が業績を左右する業界だけに、交渉の巧拙が利益に直結します。

営業・企画

国内外の販売店を支援し、販売計画を立てる仕事です。事務系の主戦場であり、商品企画やマーケティングもここに含まれます。

どの職種でも最終的にはモノとして形が残り、数年前に自分が関わった車が街を走ります。この手応えが、この業界で働く人の共通の喜びです。

キャリアパスと働き方

初任給は各社25万〜29万円台です(2026年度・各社採用サイト)。平均年収はトヨタの982万円が6社で最も高い水準にあります(2025年3月期有価証券報告書)。

海外との縁も深い業界です。北米や東南アジアを中心に多くの社員が駐在しており、会社によっては若手のうちから赴任の機会も回ってきます。

転職市場で評価が高いのは、車載ソフトウェアや自動運転の知見を持つ人材です。国もソフトウェア中心の車づくりを後押しする戦略を打ち出し、日系メーカーの世界シェア確保を目標に掲げました。

とはいえ、機械や電気の専門性が要らなくなるわけではありません。車は物理的に走る機械であり、これからはその上でソフトウェアが動きます。自分の軸を1つ持ちつつ、隣の領域まで話が通じる人材が強くなります。

高い技術力と広い裾野を持つぶん、変化への適応も問われる業界です。

向いている人と選考の視点

強い志望動機は、「EVとハイブリッドの二本立てで走り切る体力を持つ会社で、電動化の実装に関わりたい」という形です。

この短い言葉に、各社の戦略の違いと、自分がどこに関わるかの両方が入っています。だから「では、なぜうちなのですか」と返されても、そこから話が続きました。

一方、「車が好きだから」から先へ進めない志望動機は多いところです。子どもの頃から憧れていた、運転そのものが好きだった。そこまでは出てくるのですが、なぜその会社なのかという話につながりません。

聞いていくと、各社の違いを調べる前に業界だけを決めていた、という人がほとんどでした。好きという気持ちから始めるのは自然ですが、そこで止まると全社に当てはまる志望動機になります。

職種ごとの向き不向きは次の通りです。

職種向いている人
開発・設計一つの技術を数年かけて磨き込める人。ソフトウェアを学び続ける意欲がある人
生産技術現場に足を運び、数字とモノの両方で改善を語れる人
購買・調達相手の事情を理解したうえで、粘り強く条件を詰められる人
営業・企画市場の変化を読み、販売店という社外の組織を動かせる人

どの職種でも、1台の車には数千人が関わります。自分の担当範囲を超えて全体を見ようとする姿勢が、長く活躍できるかどうかを決めます。

自動車業界研究の始め方

その会社がEVとハイブリッドにどう賭けているかを一言で言えるようになれば、志望動機は自然と自分の言葉になるはずです。

今日のうちに、気になる1社を選び、決算説明資料で電動車の販売計画を見てみてください。「何年に、どの技術で、どれだけ売るつもりか」を3行でメモするだけで、志望動機に自分の言葉が入ってきます。

書き出した3行は、ASSIGNのエージェントに見てもらうのも手です。

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