未経験からのコンサルティングファームへの挑戦と入社後のキャリアパスについて
労働市場において一社で長く勤めるというこれまでの概念は覆り、高いスキルを身につけた優秀な人材ほど、転職を通して計画的なキャリアを構築している。
このような背景から、業界未経験でコンサルティングファームへ転職するハードルは年々高まっているのだ。
本記事では、コンサル業界における転職市場の動向や、コンサルティングファームが求める未経験人材の要件を整理していきたい。
コンサル業界における転職市場の動向
コンサル業界は相対的に人気のある業界である。
人気の理由は以下の通りだ。
- スキルアップが目指せる
- 高い年収が得られる
- やりがいが大きい など
上記に加え、転職市場では「未経験者でも挑戦できる土壌がある」ことが人気の理由である。
しかし、昨今の転職市場や採用の変化により、いわゆる未経験人材の採用ハードルが上がり続けている。
採用のハードルが上がり続けている理由は、以下の通りだ。
- 人気業界であるがゆえに、転職市場で有能な人材が集中する傾向が高い
- レベルの高い論理的思考力・コミュニケーションスキル・プロジェクト管理能力な どが求められる など
上記のような理由でハードルが高くなった結果、従来コンサルティングファームに転職していた人材が人気のある事業会社に流入する動きが出てきた。
そのため、コンサルティングファームのみならず転職市場全体の採用ハードルが上がっている。
コンサルティングファームが求める未経験人材のスキル
未経験からコンサルティングファームへ転職する場合、選考で重視されるのは、コンサル職への適性の有無である。
具体的に注目されるスキルは以下の3つだ。
- ロジカルシンキング
- コミュニケーションスキル
- メンタルタフネス
ロジカルシンキング
コンサルタントとして価値を発揮していくには、論理的な視点で物事の必要性・最適か否かの問いを突き詰めていく必要があり、その際に用いられるのが「ロジカルシンキング」だ。
ロジカルシンキングで用いられる手法は以下の通りだ。
- MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略語で、「漏れなく、ダブりなく」検討するためのフレームワーク
- 仮説思考:十分な証拠、論拠がない状態で、ひとまず仮説を立てて検討する思考法
- クリティカルシンキング:ある事象に対し、多角的に検討する思考法
上記の手法を用いつつ、クライアントに対していかにわかりやすく伝えるかがロジカルシンキングから始まるコンサル手法となる。
コミュニケーション能力
業務の特性上、クライアント先へ常駐し案件を進めていくパターンが多い。
そのため、足元のコミュニケーションに加え、常駐先のなかで意思決定権者が誰なのかを見極める能力も重要である。
メンタルタフネス
コンサル業界は、プロジェクトとしての単価が高いがゆえに、クライアントから求められる水準も必然的に高くなるのが特徴だ。
そのため、アウトプットとして中途半端なものは許容されない。
質のよいアウトプットを実現するために、一定のハードワークが求められることも多い。
このハードワークがこなせるか否かを、採用面接のなかでメンタルタフネスを計る観点で見られている。
コンサルティングファームに転職後のキャリアパス
コンサルタントは、ビジネス戦略・プロセス改善・マーケティング・人事戦略などそれぞれが専門知識を有している。
そのため、キャリアパスの選択肢の幅は非常に広く、将来像から逆算をした際、適切なものを選択できる可能性は高い。
選択肢の具体例としては以下の通りだ。
- 外資系事業会社への転職
- 独立/起業
- 外資系投資銀行への転職
- 他ファームへの転職 など
ここでは、上記のキャリアパスについて具体的に解説する。
外資系事業会社
外資系事業会社は、コンサル経験者の転職先として典型的なキャリアパスだ。
外資系事業会社は、コンサルティングファームにプロジェクトを継続的に発注していることが多い。
そのため、コンサル経験者を好条件で受け入れる土壌がある。
実力主義の中途採用中心であり、例としては以下の求人がよく見られる。
- 経営企画
- マーケティング
- 社内コンサル
- 営業推進 など
また、外資系事業会社では、コンサルティングファームほどのハードワークにはならないことがほとんどだ。
それゆえに、ワークライフバランスを重視するコンサル経験者からは、人気の高いキャリアパスである。
独立/起業
独立/起業は、コンサルティングを経験した人材にとっては、以下の点から定番のキャリアパスといえる。
- コンサルタント経験を活かし、問題解決能力を武器に社会的インパクトのある事業をプロモートできる
- 自分自身で経営上の意思決定ができ、事業が成功すれば極めて高額な収入が得られる
独立/起業を選択した人材は、個人事業主として経営コンサルを行ったり、ベンチャー企業を立ち上げたりするパターンが多い。
独立/起業で成功しやすくなった背景には、以下の要因がある。
- ベンチャーキャピタルの台頭で、資金調達が容易となった
- WantedlyやLinkedInなどのWebメディアを使って、優秀なパートナーを募りやすくなった など
ただし、コンサルティングのスキルと起業家に必要なスキルは異なる部分もある。
特に、起業する領域の現場に深い知識やネットワークが必要であり、コンサルティングファームを辞めてすぐに起業するのではなく、一旦目指す領域の企業に転職する人も多い。
もしくは、小規模のベンチャー企業に参加して、小資本のビジネスを動かす経験を積むのも、将来起業する上で役立つ経験となる。
外資系投資銀行
外資系投資銀行では、コンサルティングファーム以上の給与水準が期待でき、規模の大きいM&A支援に携われる点で人気がある。
採用の傾向としては、ある程度シニアなコンサルタントより、20代若手のポテンシャル人材を好むことが特徴だ。
また、投資銀行の採用は少数であり、ポジションがオープンになってもすぐに埋まってしまう。
そのため、外資系投資銀行に転職を希望する場合は、転職エージェントと密に連絡をとりチャンスを逃さないようにするのが望ましい。
他ファーム
同じ業界内のほかのコンサルティングファームに転職するケースも定番のキャリアパスだ。
コンサルティング業界が急拡大するなかで、即戦力となるコンサル経験者にこれまで以上の好条件が提示されることが増えており、魅力がさらに増している。
ほかのファームに移る動機としては以下の通りだ。
- 年収・条件がよい
- 専門性を極めたい
- 職位を上げたい
- ワークライフバランスを充実させたい など
上記以外の動機で、特に目立つのが別のコンサルティング領域に移るケースだ。
具体例を以下に紹介する。
・財務系のコンサル案件を専門にしていた人材が、M&Aの知識や専門性を活かしてM&A関連分野に転職する ・IT系のコンサルに携わっていた人材が、ビジネスサイドに興味が出て、ビジネスコンサルティングやインダストリーラインなどに転職する |
ここまで紹介したキャリアパス以外にも、日系企業やベンチャー・スタートアップ企業への転職など、さまざまなキャリアパスがある。
最後に
未経験からコンサルティングファームへの転職は、可能ではあるが年々難易度が高くなっている。
そのため、自身の専門性を高めるだけでなく、ロジカルシンキング・メンタルタフネスなどのコンサルに求められるスキルを身につけることが大切だ。
厳しい選考をクリアし無事採用されれば、コンサルティングファームでの経験を積んだ後のキャリアパスは豊富である。
難易度が高い挑戦ではあるが、未経験からコンサル職へ転職するのはメリットが大きく魅力的な選択肢といえる。
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