保険が人々の健康を促進させる

健康になるような行動をすると保険料が安くなったりキャッシュバックされたりする「健康増進型保険」が続々と登場しています。

テレビCMなどもされていて、見たことや聞いたことのある方も多いと思います。今回は「健康増進型保険」登場の背景と具体的な内容についてご説明します。

高まる健康志向に合わせ、保険も変革を続ける

近年、「健康志向ブーム」が加速しています。新型コロナウィルスの前からこの傾向はありましたが、新型コロナウィルスがライフスタイルを見直すきっかけになったことは間違いありません。

ステイホームによって、自炊する機会が格段に増え、食生活を見直したり、家の中でできるフィットネスや任天堂switchで健康を目的としたゲームがヒットしたりするなど、「健康」をテーマに新しく登場したサービスや商品は非常に多くなっています。

保険もこのトレンドに合わせて、健康な人には保険料を安くする、といった保険のパーソナライズや保険の力で健康を促進させるということをコンセプトとするようになってきています。

例えば、第一生命がリリースしている「健康第一」というアプリでは、忘れがちな健康診断の結果をスキャンしてアプリ内で見れるようにしたり、それをインプットに「健康年齢」という指標を算出してくれます。

もちろんアプリが保険の加入導線にもなっていますが、食事のカロリー管理や健康に関するコラム配信など健康を支える総合的なアプリとして機能しています。

このように保険と健康を紐づけることで、病気になったら保険でカバーするという考え方から、そもそも健康であることを目的としていく未病・予防の考え方が強くなってきています。

保険業界で進むデジタル化～InsurTech～

上述のように、保険会社は契約者の健康状態や病気の履歴など医療・健康ビッグデータを保持できるようになり、これを活用した新しいビジネスが展開されています。

金融×テクノロジーがFinTechと呼ばれるのは聞いたあると思いますが、保険×テクノロジーはInsurTechと呼ばれ、こちらも同時に注目度が高まっています。

テクノロジー、ビッグデータの活用でリスク分析の高度化と保険のパーソナライズができるようになっています。

ビッグデータを解析することで、これまでよりも病気になってしまう人の傾向、確率、入院にかかる日数、治療にかかる金額などのリスクを精緻に予測できるようになります。

従来の一律の引き受け基準では、保険に入りたいけれど入れない人が出てきてしまっていましたが、引き受け基準を個別化することにより、加入者のパイを広げることに繋がるのは保険会社にとって大きなビジネスチャンスです。

生活に溶け込むユーザー体験で差別化を図る

生損保どちらも商品自体の自由度はかなり増えましたが、それでも他の商材と比較すると保険のカバー範囲や特約の中身について、実際のところはあまり変わりありません。

そうなってくると生活者に対して、いかに身近な存在として保険があるか、健康と紐づくのか、など日常に溶け込む必要があります。

第一生命の健康第一もまさにその例ですが、保険というよりは食事、運動、睡眠などの日常のテーマとリンクさせることで、その延長線上に保険があるように設計されています。

日々のアクティビティをこなしていくユーザー体験や、実年齢よりも健康年齢のほうが下回ることで保険料が安くなる、といった要素はゲーム感覚で継続したくなります。小さな成功体験を積み上げることは楽しさを見出しやすいのです。

住友生命の「Vitality」というサービスは健康になるアクションをとるとポイントがもらえ、それを食品や健康グッズなどと引き換えることができます。

様々な業界と取引がある保険会社ならではの商品ラインナップですが、健康は毎日コツコツ積み上げていくことが重要になるため、このようなちょっとしたご褒美を用意することは頑張るモチベーションになりやすくなります。

このように、保険業界もデジタルを活用してビジネスモデルを少しずつ変化させています。生活者はモノではなく体験に価値を見出すというトレンドはこのまま続くと思われるため、このような観点で保険業界を見てみると面白いでしょう。