マーケティングを「預ける時代」を終わらせる
Hagakureがインハウスまで踏み込む理由

デジタルマーケティング市場が拡大を続ける一方で、広告代理店と事業会社の間に横たわる「情報の非対称性」に課題を感じる企業は少なくない。
「預けた予算が正しく使われているのか」
「提案された施策は、本当に自社のためのものなのか」
そうした疑問を抱えながらも、意思決定の中身が見えないまま、マーケティングが「ブラックボックス化」してしまっている企業も多いのが実情だ。本来、事業成長のためにあるはずのマーケティングが、経営や現場から切り離されたまま、外部に丸投げされているケースも少なくない。
この構造に真正面から向き合い、「教える」ことを起点にマーケティングのあり方を変えようとしてきたのが、株式会社Hagakureだ。
同社は、累計受講者数No.1*を誇る実践型Webマーケティングスクール「デジプロ」を軸に、広告運用の実務支援、さらには企業のマーケティング組織のインハウス化支援まで幅広く手がけている。
今回は、代表取締役の奥雄太氏に、創業の原点にある問題意識から、デジプロが生まれた背景、そしてアジアから始まるグローバル展開と、AI時代におけるHagakureの未来像までを聞いた。
なぜHagakureは「教えること」から始めたのか
「過去、私が広告代理店で働いていた時、一番強く感じたのは『情報の非対称性』でした。発注者側である事業会社の知識が不足していることで、知らないうちに不利益を被ってしまう。そこに課題感を感じました。」
穏やかながら力強くそう語り始めたのは、メーカーでマーケティングに携わったのち、広告代理店を経て、7年前に26歳という若さで株式会社Hagakureを創業した奥だ。
彼が目にしたのは、クライアントが預けた予算や運用の意思決定がブラックボックス化しやすく、本来の意図と実行内容にズレが生じやすい業界構造だった。
広告代理店のビジネスモデルは、成果そのものよりも「どれだけの予算を預かれるか」が優先され、個人評価も、「どれだけ大きな予算を取れたか」「予算を増やせたか」に紐づくことが多い。その結果、運用の中身が見えにくいまま、予算が拡大していく構造が生まれやすくなる。
こうした構造に強い違和感を抱いた奥が選んだ道は、「代理店」として独立することではなく、「教育」によって業界全体のリテラシーを底上げすることだった。
「代理店として一社ずつ支援していくやり方も選択肢としてはありました。ただ、それだと僕たちが関われる範囲や支援ができる範囲がどうしても限られてしまいます。教育から入ることで、広告の話だけではなく、マーケティング全体の課題や、事業そのもの、組織の話まで踏み込めます。まずは発注者側のリテラシーを底上げすることで、代理店と事業会社が対等に議論できる状態をつくることが大事だと考えました。」

現役マーケターが伴走する「デジプロ」
こうして生まれたのが、実践型Webマーケティングスクール「デジプロ」だ。数あるマーケティング研修の中で、Hagakureが提供するデジプロの最大の強みは、「現役のWebマーケターが講師を務める」という点にある。
「一般的な研修会社の場合、研修を専門にしている講師の方が多く、日常的にデジタルマーケティングの運用現場に入っているかというと、そうではないケースが目立ちます。デジタルマーケティングは変化が激しく、最新のアルゴリズムや新機能への対応は、現場で運用していないと正しく伝えられません。
例えば、最近の教科書的なセオリーの1つに、『対象範囲を広めにして、AIに任せる』という配信設定があります。たしかにその設定をするとWeb上のコンバージョンは増えます。しかし、『転職サイトなのに副業目的の人が集まる』というような売上に繋がらない結果になることも少なくありません。そのため、AIに任せきるよりも、配信先をある程度予め絞っておいた方が良いケースも多くあります。
こうした判断を日々行っている現役のマーケターが講師であることがデジプロの大きな特徴です。」
また、決まりきったパッケージを提供するのではなく、企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズする点も大きな特徴だ。
「デジプロでは、講師と受講生という関係ではなく、社内のマーケティング担当者と同じ立ち位置で伴走します。クライアントのメンバーに基礎的な知識をインプットしながらも、実務のどこで詰まっているのか、何が課題なのかを一緒に整理して、『じゃあ次はこうしましょう』と壁打ちしながら進めていくイメージです。決まった研修をやるというより、状況に合わせて内容をカスタマイズします。」
例えば、複数ブランドを展開するアパレル企業を支援した際には、SNSやPR、デザイナー、商品企画を担うマーチャンダイザー(MD)など、多くの専門職が関わる中で、それぞれの施策が事業全体にどう影響しているのかを、組織として捉えられていないという状態が浮かび上がった。
そこで研修では、GA4やInstagramなどの具体的な活用施策に加えて、関わるメンバーそれぞれが「自分たちの取り組みは、事業にどれくらいインパクトを与えているのか」を数字で捉え、同じ視点で共有するところから進めた。
マーケティングという共通言語を持つことで、SNSやPR、デザイン、商品企画といった個々の仕事と事業成果とのつながりが可視化され、個人と組織の双方でPDCAの質が高まっていった。
結果として、クライアントは売上昨対比1.3倍を達成した。
<クライアントごとにカスタマイズし提供する学習資料>
実務支援、そしてインハウス化まで
Hagakureは、研修にとどまらず、広告運用の代行、そしてマーケティングのインハウス化支援も手がける。
このような支援領域の広がりについて、奥はクライアントの課題に応えていった結果だと語る。
「デジプロの研修をしていく中で、『やるべきことは分かったけど、手が足りない』、『任せられる代理店がいない』という声を多くいただくようになりました。
研修でリテラシーが高まっても、実行できなければ結局また止まってしまうので、運用代行という形での実務の支援や、人材紹介や派遣も含めたインハウス化の支援まで広がっていった、という背景があります。」

インハウス化の支援は、マーケティング支援の中でも特に難易度が高い領域だ。単にノウハウを教えたり、運用を引き継いだりするだけでは、組織は回り始めない。人の採用・育成、役割分担、実務の設計まで含めて初めて、内製化は達成できる。
このように難易度の高いインハウス化支援にHagakureが踏み込めているのは、人と組織がどう成長していくのかを、教育と実務の両面から見続けてきたからだ。
「ゼロからマーケティングを学ぶ人がどこでつまずくか、チームを社内でつくるときにどこで壁にぶつかりそうか。これまでの企業支援や、何百人、何千人と教えてきた中で僕たち自身が向き合ってきたからこそ、課題を解像度高く捉え、何のピースが足りないのかを状況に応じて見極めることができます。
そして、足りないピースを僕らが埋められるところも強みです。一時的にリソースが足りない場合は代理店として実務支援もできますし、人材が必要なら採用支援やマーケターの派遣もできます。インハウス化は、状況が途中で変わることも多いですし、同じやり方が通用しないケースも多い。だからこそ、その時々の状況に合わせて支援の形を切り替えられる選択肢を持っていることが、難易度の高い領域でも支援できている理由だと思っています。」
インハウス化を進める中で、多くの企業が直面するのが人材の課題だ。その点についても、Hagakureは「独自のマーケター人材プール」という明確な答えを持っている。
その答えの土台は、デジプロを個人向けにも展開してきたことにある。例えば、飲食店でアルバイトをしていた未経験者が、デジプロの2カ月の研修を経てマーケターとして就職。その後、Meta社から表彰されるまでに成長したケースもある。
こうした人材を一過性の成功例ではなく、一定の再現性をもって輩出していることも、Hagakureがインハウス化支援に踏み込める強みの一つだ。
研修を起点に、実務支援、そしてインハウス化までを一気通貫で支援する。
Hagakureは、企業の成長フェーズに応じて関わり方を変えながら、マーケティングの自走を後押ししてきた。
依存させない支援こそが企業を強くする
ところで、この支援の在り方を見たとき、2つの疑問が浮かぶ。
1つはビジネス構造上の疑問だ。
外部の支援者として実務を担いながら、同時に「自社で回せる体制づくり」を促すことは、結果的に自らの仕事を減らすことにはならないのか。
この問いに対して、奥はこう答える。
「確かにそういったこともありえますが、僕たちが目指すのは、あくまでもクライアントの事業を成長させることです。まずはマーケティングに対するリテラシーを高める。その上で、外部に任せた方が良いフェーズもあれば、社内で回せるようになった方が良いフェーズもある。どちらが正しいかではなくて、その時の状況次第だと思っています。無理にどちらかに寄せるのではなくて、事業が前に進む形を一緒に作っていく、というのが僕らの考えです。」
さらにもう一つ、クライアントとの関係性への疑問がある。
研修やインハウス化によって発注者側のマーケティングへの知見が深まれば、Hagakureの支援に向けられる目は当然厳しくなる。それは、「やりづらさ」につながる変化ではないのだろうか。
しかし奥は、そうした変化をむしろ歓迎すべきものだと捉えている。
「発注者側の目が厳しくなることは、むしろ健全な状態だと思っています。目線が上がることで、僕らも『期待をどう超えていくか』を考えないといけなくなりますし、その方が良いディスカッションができます。
発注する側が偉いから高圧的になるとか、代理店側が詳しいから偉そうにする、みたいな関係はあまり良くないと思っていて、同じ知識レベルに立った上で、フラットにパートナーとして議論できる状態が一番健全だと思っています。」
このように、Hagakureが一貫して向き合っているのは、「どの形であれば、その企業の事業が前に進むのか」という一点だ。
そのために、まずは研修でリテラシーを高め、必要であれば実務で支え、条件が整えば内製化を後押しする。
クライアントの理解が深まり、自身に向けられる目が厳しくなることも、Hagakureにとっては事業の目的に近づいている証だ。
Hagakureの支援は、企業を「依存させる」ためのものではなく、いずれ自立していくことを前提に設計されている。だからこそ、研修・実務・インハウス化という支援の幅は、矛盾ではなく一つの線としてつながっている。
海外への進出と国内への還元
Hagakureの視線は国内にとどまらない。すでに台湾と韓国に進出し、デジプロ研修やマーケティング支援を展開している。
しかし、Hagakureが海外展開を進めた理由は、「市場が大きいから」といったものではない。日本で感じてきたマーケティングの課題が、そのまま海外にも存在していたからだ。
「大学時代にバックパッカーとして多くの国を訪れた経験もあり、事業の立ち上げのときからグローバル展開は意識していました。社会に価値を届ける上で日本に閉じる必要はないと考えていましたし、困っている企業や個人の方がいるなら地域や国に関係なく貢献したいと思っていました。まずは物理的にアクセスしやすいアジア。その中でも台湾と韓国は特に課題感が強いと感じて進出を決めました。」
メディア環境については、台湾ではLINE、韓国ではNaverが主流といった違いはあるが、本質的な課題は日本と同じ「情報の非対称性」であり、日本で培ってきたノウハウが活きる場面が多い。
反対に、海外で培ったノウハウを日本のクライアントに還元するケースも増えてきている。
「一つ分かりやすいのは、日本企業が海外に進出するときの支援です。台湾は日本の飲食やアパレルの進出が多いですし、韓国も同じように飲食やコスメなどで日本から出ていく企業が増えています。現地でどのメディアを使うべきか、どういう考え方で集客を設計すると良いのかは、実際に現場で向き合ってきたからこそ、具体的に伝えられるようになりました。
また、韓国や台湾では、インフルエンサーの影響力が日本よりも大きく、一人の発信で消費行動が一気に動くことがあります。だからこそ、誰に頼むのか、どんな文脈で発信するのか、事業にどうつながるのか。そうした点を、より丁寧に設計し、数字で検証する必要があります。そういったノウハウは、日本国内でのマーケティングにも活用できるものです。」

目指すのは、AI時代の「マーケティング・インフラ」
最後に、Hagakureが目指す未来について聞いた。
「グローバルという文脈では、ベトナムなど、アジアを中心に広げていきつつ、アフリカやヨーロッパに進出したいと思っています。特にアフリカは大学時代に訪れたときにも感じましたが、成長がジャンプするような環境です。インフラや仕組みが整っていない分、新しいテクノロジーが一気に普及しやすく、研修やマーケティング支援なども入りやすく、需要も大きいと考えています。」
海外展開を進める一方で、奥が見据えているのは、マーケティングのあり方そのものの変化だ。
「AIの進化によって確実にマーケターは減っていきます。作業部分は完全に自動化されていき、施策そのものもAIがつくるようになるはずです。そうすると、他社との均質化が進みます。では、どこで差ができるかというと、自社のデータをどう設計して、どう使うかという戦略と意思決定、そして顧客のニーズを深く捉え、それを商品や言葉に落とし込むといった上流工程です。そこはこれからも人が考えないといけない部分として残ります。僕たちは、その世界をいち早く実現したいと考えていますし、人とAIが共存できる形でマーケティングを支援していきたいと思っています。」
AIによって作業が自動化されるほど、企業が本当に悩むのは「何を判断すべきか」「どこに集中すべきか」という部分になる。その変化を前提にすると、Hagakureが担うべき役割も自然と定まってくるという。
「集客だけを支援する会社ではなくて、マーケティング全体で困ったときに、まず相談される『インフラ』のような存在をめざしています。人の手から作業を『剥がす』ためのプロダクトや仕組みを作り出し、AIなどのテクノロジーも使いながら、企業が抱えているマーケティングの悩みや、リソースの課題をまとめて解決できる『マーケティングインフラ』です。」
奥が言う「インフラ」とは、特定の施策や手法を提供する存在ではない。マーケティングで何につまずいているのか分からないとき、あるいは人手や体制に課題を抱えたときに、最初に相談できる存在であることを指している。
マーケティングは、もはや「施策を回す技術」ではない。事業のどこに課題があり、何にリソースを割くべきかを判断し続けるための、経営に近い営みへと変わりつつある。
外注か内製か、AIか人か。
そうした二項対立のどちらかに答えを寄せるのではなく、「その企業が前に進むために、今どこに立つべきか」を共に考え続けること。
マーケティングで迷ったとき、立ち止まったとき、最初に想起される存在であること。
Hagakureが目指すのは、時代が変わっても揺るがない、企業の意思決定を支えるマーケティングのインフラだ。
デジプロ公式サイト:https://degipro.com/
株式会社Hagakure公式サイト:https://hagakure-inc.com/
*日本マーケティングリサーチ機構調べ 2021年9月期_Webマーケティングスクール指定領域における競合調査にて累計受講者数・校舎数No.1を獲得


